エステティックTBCに労基署が出した是正勧告とは?長時間労働と残業代のリスク


是正勧告

エステ業界大手のエステティックTBCに対して、労働基準監督署から是正勧告が出されたことが報道されました。エステティックTBCでは、従業員に長時間労働をさせた上、休憩時間をとらせず、残業代の未払いもあったとのことでした。

従業員に対して長時間労働をさせることは、このように労働基準監督署からの指導、是正勧告を受けるなど大きなリスクとなりますから注意が必要です。

労働基準監督署からの「是正勧告」とはどのようなものか、万が一是正勧告を受けてしまった場合どのように対応すべきなのかについて解説します。

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労働基準監督署の是正勧告とは?

是正勧告とは、労働基準監督署に所属する労働基準監督官が、事業所に対する調査や隣県をした際に、労働基準法などの労働法に違反する事実を発見したときに行われる行政指導のことです。

行政指導は、行政手続法で次のように定められていることからもわかる通り、一方的に強制できる性質のものではありません。

行政手続法2条6号
行政指導 
行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

したがって、是正勧告に対してその内容に従う義務はなく、また、是正勧告の内容に不服があったとしても、不服申立はできないこととなります。

ただし、労働法違反があるから是正勧告を行うのであり、是正勧告を放置しておけば、「是正勧告の放置を理由に」ではなく「労働法違反を理由に」、刑事処罰などの不利益を受けるおそれがあるため、誠実な対応が必要です。

是正勧告に対する対応

是正勧告書には、違反が確認された労働法の条文が記載され、是正を求める締切日が記載されています。

労働基準監督官は警察と同様の捜査権限を持っており、是正勧告書を放置しておいては最悪の場合刑事罰を受ける可能性があります。

早急に適切な対処をした上、是正状況を速やかに報告する必要があります。

エステティックTBCはなぜ是正勧告を受けたの?

エステティックTBCが是正勧告を受けた理由は、各報道に基づけば、その長時間労働と時間管理の怠慢さに理由があります。また、エステティックTBCは全国に約200の店舗を有していますから、一律に同じ扱いであれば、同種の違反行為を全国的に行っているということとなり、違法性が大きいと見られた点も関係しているでしょう。

☞ 是正勧告を受けたのはTBCの福岡市の店舗
☞ 労使間の36協定を締結せずに違法な残業
☞ 勤務時間よりも早く出勤することが常態化
☞ 電話対応を強制されたことから休憩時間が取れず

36協定を締結せずに残業を行わせること、適切な残業代を支払わないこと、休憩時間を全く与えないことは、いずれも真実であれば労働基準法に明らかに違反する行為です。

なぜ長時間労働を行わせてしまうのか?

労基法違反で是正勧告などを受けるリスクがあることが明らかであるにもかかわらず、なぜ長時間労働をさせた上残業代の未払があるのかといえば、その理由は次の点にあるでしょう。

人手不足

少子高齢化が進行し、労働力人口はますます減少しております。このような中、限られた人数で仕事をしなければならず、閑散期に合わせた人員配置であるため、繁忙期となると各従業員の長時間労働によって調整せざるを得なくなります。

不当な利益の追求

従業員に長時間労働をさせながら残業代を支払わなければ、タダ働きをさせられるわけですから、会社には大きな利益が残ることとなります。ただし、これは労基法違反であり、支払うべきものを支払わないことによって利益を得ることが許されるわけがありません。

社長の労働法に関する知識不足

「管理監督者」「みなし残業代」「裁量労働制」など、労働法上、残業代を支払わなくても良い場合についての定めがされており、これに正しく該当する場合には残業代を支払う必要がなくなります。このような知識を少しだけ知った社長が、これを拡大解釈して誤解し、残業代を不当に支払っていないケースが多いといえます。

長時間労働を行う会社のリスク

行政的なリスク

今回のように、行政上の制裁として労働基準監督署から助言、指導、是正勧告を受けるおそれがあります。

労働基準監督署の是正勧告は、報道や発表を通じて社会的に知られることとなりますので、会社のイメージダウンにつながります。ブラック企業が社会的に問題視される中、ひとたびブラック企業とのレッテルを貼られると、売上低下、株価下落、採用人数の減少など、ダメージの大きさは計り知れません。

「すき屋」がブラック企業というレッテルを貼られて求人難となったことから休業・撤退する店舗が相次いだことが記憶に新しいでしょう。

民事上のリスク

残業代を支払わないことで一時的に利益を上げたとしても、民事訴訟で従業員から残業代を請求された場合、会社に非が認められれば支払を行わなければなりません。

この場合には、遅延損害金の負担が嵩んされるほか、未払いの態様が悪質である場合には、未払い額と同額を上限とした付加金の支払を命じられるおそれがあります。

更に、長時間労働によって従業員が精神疾患、脳・心臓疾患などにり患した場合には、慰謝料などの損害賠償を請求されるリスクもあります。

刑事上のリスク

残業代の未払など一定の悪質な労基法違反には、刑事罰による処罰が定められています。

刑事罰が科される場合には、会社だけでなく、店長、部長などの従業員の管理を業務とする役職者個人にも刑事罰が科されます。もちろん、法人に対しては事業主として罰金刑が課されます(「両罰規定」といわれます)。

まとめ

労働法違反が発見された場合、労基署から是正勧告がなされるケースがありますが、適切に対応する必要があります。是正勧告に対応せず放置すると、最悪刑事罰を受ける可能性があります。

エステティックTBCの是正勧告のケースでも、是正勧告を受けた会社の対応が注目されます。

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