経歴詐称は犯罪!?経歴詐称を理由とする懲戒解雇は有効か


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経歴詐称について、経営コンサルタントのショーンK氏が謝罪したことによってにわかに話題となっておりますが、会社にとって社員の経歴詐称は重要な問題で、致命的な事態を招きかねません。

今回は、経歴詐称を行った社員に対し、入社前に発覚した場合、入社後に発覚した場合に分けて、会社側の適切な対応を解説します。

入社前に事前に経歴詐称をする人材を発覚・回避するための対策は、こちらの記事を参考にしてください。

(参考)経歴詐称を事前に防ぐために会社が準備すべきことが5分でわかる!

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経歴詐称を申告させることができるか?

会社は、採用段階で、求職者に対して経歴などの重要な情報について真実を申告するよう請求することが可能です。企業には「採用の自由」があり、採用の有無を決定するにあたって重要と考える事項について、申告を求めることができるのが原則です。

ただし、申告を強要してはならない情報もあるため注意が必要です。

(参考)採用の際、絶対に聞いてはいけない3つのポイント

申告を要求できる情報には、能力・知識・経験といったその労働者の評価に関係する重大な情報のほか、性格・傾向といった入社後の企業秩序維持に関係する重大な情報についても申告を求めることが可能であり、必ず面接等で申告を求めておくべきでしょう。

なお、企業の申告の要求に対してこれを拒否する場合には、さらに強く要求を行うのではなく、回答を拒否した事実を確実に記録化しておくようにしてください。

入社前に経歴詐称が発覚した場合の対策

採用選考の初期段階で重要な経歴詐称が発覚した場合には、その段階で採用選考をストップし、直ちに不合格の判断を下すべきでしょう。

しかしながら、採用選考が最終段階に近づくにつれて、求職者側にも「入社できるであろう」「入社を確約された」といった期待が生まれ、トラブルが拡大するおそれがあります。

特に、入社する前であっても「内定」と評価される段階に至った場合には雇用契約が成立したのと同様の効果が生じることとなり、入社後の懲戒解雇が無効とされるケースがあるのと同様、直ちに入社を取りやめることが困難となることもあります。

労働条件を正式に提示したり、入社に必要な書類を交付したり、雇用契約書案を提示したり、面接時に入社を確約したりといった行為は、「内定」と評価される可能性を高めることとなりますので、経歴詐称がないか事前に十分チェックしてから行うようにしましょう。

入社後に経歴詐称が発覚した場合の対策

経歴詐称が発覚したのが入社後であった場合には、「解雇」によって対応することとなります。

「解雇」の選択肢には、懲戒解雇と普通解雇があり、経歴詐称のような非違行為に対しては、処罰としての意味を持つ懲戒解雇が妥当ですが、すべての場合に懲戒解雇が可能なわけではなく、対応が困難となるケースもあります。

経歴詐称を理由とした懲戒解雇の有効性

懲戒解雇とは非常に重い処分であって、懲戒解雇という記録が残ると次の求職が困難になるという意味では労働者にとって「死刑」に等しい処分であるといわれています。

したがって、非違行為があればすべて懲戒解雇が許されるわけではなく、一定の重大な非違行為に限定して懲戒解雇が有効となるものです。

経歴詐称のケースにおいても、一定の重大な経歴詐称についてのみ懲戒解雇が有効となります。すなわち、経歴詐称がなく真実の告知を受けていれば採用しなかったであろう重大な事実の詐称があった場合のみ、経歴詐称を理由とした懲戒解雇が有効となるのです。

経歴詐称への対応を考える際の注意ポイント

経歴詐称に関する適切な対応は以上ですが、次に、経歴詐称への対応を考える際の注意すべきポイントを解説します。

経歴詐称が採用・企業秩序に影響しない場合

経歴詐称があったけれども、経歴詐称がなく真実が告知されたとしても採用された可能性が非常に高い場合や、実際に全くその企業の業務に影響しない経歴の詐称であった場合には、懲戒解雇などの重要な処分が無効とされた裁判事例があります。

どの個人情報が採用の際に重要であるかは企業によって異なりますので、経歴詐称を回避したい項目については、採用を決めるにあたって重要な個人情報である旨を労働者に伝え、厳しく確認をすべきでしょう。

犯罪歴とは裁判で罪と認められたものをいう

「賞罰」欄に、犯罪歴、前科について記載をしなければならないとされていますが、この際の「罰」とは、裁判で罪と認められた事実をいうとされています。

したがって、次のものは、「罰」に該当せず、犯罪歴・前科として申告する必要がないこととなります。

☞ 逮捕されたが、処分保留で不起訴となった事実
☞ 少年時代に補導された事実

これらの「罰」に該当しない事実についても重要な個人情報であると考える場合には、面接時に申告を求め、回答を記録に残しておくべきでしょう。

まとめ

経歴詐称が発覚した場合の対策について、入社前に発覚した場合、入社後に発覚した場合に区別して解説しました。特に、経歴詐称を理由とした懲戒解雇を検討する場合には、懲戒解雇が無効とならないか、詐称された経歴ごとに検討が必要です。

入社前に事前に経歴詐称をする人材を発覚・回避するための対策は、こちらの記事を参考にしてください。

(参考)経歴詐称を事前に防ぐために会社が準備すべきことが5分でわかる!

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