「業務上横領罪」、と聞くと、会社の経理担当者が会社のお金を着服する、という典型的な事例を最初に思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、お店を任されていた店長が商品を横流しすることも、本来お客さんに付けるべき買い物ポイントを勝手に自己のポイントカードに付けることも、実は業務上横領罪にあたるのです。
このように広く考えていくと、業務を遂行するにあたって、横領行為を行うことのできる仕事をしている人は非常に多く、業務上横領罪も、身近に犯かしかねない重大な犯罪であることを理解していただけるのではないでしょうか。
今回は、業務上横領罪の時効について、解説します。
業務上横領罪は、重大な犯罪行為であると考えられていることから時効期間が長く、他の犯罪に比べても、より長く責任を問われ続けることとなります。
また、被害者が、刑事上の責任だけでなく、民事上の責任を問う可能性がある場合には、業務上横領罪の民事上の責任についても注意しておかなければなりません。
刑事事件はスピーディな対応が重要です!
もし、あなたの家族、友人、親族が、刑事事件で逮捕、勾留などの身柄拘束を受けた場合には、刑事事件の得意な弁護士にすぐ相談をしましょう。刑事弁護を開始するタイミングが早ければ早いほど、身柄拘束が短期で終了し、示談成立、起訴猶予などの、有利な結果を獲得できる確率が上がります。
日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。
最近よく聞く業務上横領って?
「業務上横領で逮捕!」というニュースを最近立て続けに耳にする、という方も多いのではないでしょうか。
実際、銀行員や公務員だけでなく、弁護士(後見人の立場で)でさえも業務上横領を犯し、逮捕されています。被害額は数千万円から数十億円、という事件も少なくなく、その額の大きさに圧倒されることもしばしばあります。
そもそも業務上横領罪とは、業務上の理由で自分が占有することになった他人の所有物を不法に領得することによって成立する、という犯罪です。業務上横領には以下のように罰金刑はありません。懲役刑だけです。
したがって、たとえ初犯であっても、裁判の行方によっては刑務所に行かなければならない、ということも十分あり得る、重大な犯罪なのです。
業務上横領の時効って何年?
業務上横領の時効は「7年」(刑事訴訟法250条2項4号)です。長いと感じるか短いと感じるかは人それぞれでしょう。
ちなみに、単純横領の時効は5年です。
なぜ、単純横領の時効期間が5年であるのに対し、業務上横領は7年、と時効期間が長いのか、その理由をご存じですか。
お金を取り扱う銀行員や会社の経理を担当する従業員のお仕事を思い浮かべていただくと分かりやすいでしょう。業務上、銀行や会社のお金を占有している人は、横領しようと思えばすぐにできてしまう状況にいます。そこで、他人のお金に手を付けてしまう誘惑に負け、業務上横領という罪を犯させないようにするために、時効が長く設定されているのです。
いわゆる犯罪を未然に防止するための抑止力ですね。業務上横領を行ってしまった人は、7年という長い期間、「事件の犯人が自分だとバレて捕まるのではないか。」「警察はもう自分が犯人だと目星を付けて、秘密裏に捜査しているのではないか。」と、ビクビクしながら日常生活を送らなければならないのです。
時効はもう成立している。責任を問われることはない?
犯行から7年以上経っているからといって、業務上横領を犯した責任を問われないとは言い切れません。
と言いますのも、時効はひとつではないからです。時効には刑事上の時効と民事上の時効の2つがあり、それぞれ期間が異なります。
業務上横領罪の場合には、「とったお金を返してほしい。」という点については民事上の責任を追及することができます。したがって、犯行から7年経って、刑事事件の時効が完成したからといって、それで責任追及が一切ないというわけではないのです。
業務上横領罪の民事上の責任
犯行から7年が経過し、時効が過ぎたために、刑事上は責任を問われない場合でも、民事上の損害賠償責任を追及される可能性は十分残っています。
仮にあなたが業務上横領行為をした場合、民事上は「不法行為」となります(民法709条)。
不法行為の時効期間は「3年」です。この3年というのをいつから数えるのか、と言いますと、法律の専門用語では「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」からです。つまり、被害者が「あの従業員が会社のお金を横領した。」と気付いた時から、ということになります。
裏を返せば、それまで時効のカウントは開始しない、ということです。
ただし、「不法行為時」から20年経てば民事上も責任を追及されることはなくなります。例えば、9年前に犯した横領行為が1か月前に発覚した、というような場合を具体例として挙げてみましょう。7年以上経っているので、刑事上の時効は完成、刑事責任を追及されることはありません。
しかし、犯行時から20年経っていませんし、事件・犯人発覚から3年経っていませんね。つまり、民事上の時効は完成していない、ということになります。被害者に責任追及の意思があれば民事上の損害賠償責任を問われる可能性があります。
まとめ
今回、解説してきましたように、業務上横領の時効は、他の犯罪と比較しても比較的長く定められています。
それだけ重い罪だ、ということです。
たしかに、業務上横領罪には懲役刑しかないので、刑務所に行くのが嫌だから、と自首をためらう気持ちも理解できます
。しかし、いつ自分に捜査の手が及ぶのか、今日かもしれないし、明日かもしれない、と怯えながら過ごす7年は、決して短い、とはいえません。事件が発覚する前でしたら、「自首」という扱いになります。弁護士に出頭に立ち会ってもらう、というのもひとつの手です。刑事弁護は何よりスピードがモノを言いますので一度ご相談されるのがいいでしょう。
刑事事件はスピーディな対応が重要です!
もし、あなたの家族、友人、親族が、刑事事件で逮捕、勾留などの身柄拘束を受けた場合には、刑事事件の得意な弁護士にすぐ相談をしましょう。刑事弁護を開始するタイミングが早ければ早いほど、身柄拘束が短期で終了し、示談成立、起訴猶予などの、有利な結果を獲得できる確率が上がります。
日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。