部活顧問はブラック労働?教師の長時間労働が労災寸前でひどい!


部活顧問

部活顧問による長時間労働問題が、教師の間で注目の的となっています。

特に、公立学校の教師は、「給特法」という法律によって、長時間労働をしても残業代がもらえないため、定額の賃金で部活動の顧問を強要されると、夜遅くまでの練習、朝練、土日の試合などと、私生活を大きく圧迫します。

現在、「部活問題対策プロジェクト」による署名活動は、平成28年2月19日の時点で2万2000人を超えているそうです。

なぜ教師の部活動顧問が問題なのか、その実態について、法的な観点から解説しました。

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部活動顧問による長時間労働のデメリット

部活動の顧問を引き受けてしまった場合、特に公立学校の教師の場合には、無給の長時間労働を強制されることによって、以下のような様々なデメリットがあります。

部活動顧問のデメリット
☛ 無給の長時間労働の強制
☛ 健康被害、精神疾患
☛ 過労死、過労自殺
☛ プライベート時間の減少
☛ 家庭崩壊
☛ 本来の仕事への支障(授業準備をする時間の不足など)

特に若手の教員は、本来の仕事である授業準備やテストの採点などでも多くの持ち帰り仕事を抱えながら、試合や朝練などの多い体育会系の部活の顧問を担当することを強要され、重い負担に悩む先生が多いようです。

自分がその部活の経験者であったり、OBであったり、部活の指導が趣味であったりする場合には問題とはならないですが、全く興味がなく、経験もない部活の指導担当とされてしまうと、公私両面で大きな負担となります。

部活の顧問問題を法的に解説します

部活顧問に関する教師の長時間労働の問題について、よくある質問に対して、法律的な回答をまとめます。

のちほど説明する通り、「給特法」という法律がある公立学校の教師の場合、労働環境はさらに悪化する傾向にありますので、私立学校と公立学校とでは、この問題の考え方は多少違ってくるでしょう。とはいえ、「残業代が法的に請求できるかどうか」の違いに過ぎず、いずれにしても重大問題であることには変わりません。

部活の顧問をすることが職務の範囲内か?

部活は、国語・算数などの教科とは違い、正規のカリキュラムには位置付けられない、あくまでも児童・生徒の自発的な活動とされています。

しかしながらこれはあくまでも児童・生徒に関しての場合であって、教員・教師に対してまで「自発的な活動」となるとは一概にはいえません。現在、ほとんどの学校で部活の顧問をすることが事実上当然とされている状況からして、教員・教師になれば部活動を担当することが採用以前から事前に予想できた場合には、部活顧問業務も教員・教師の職務の範囲内といえるでしょう(学校側としては、採用段階で、どの程度の部活顧問業務があるのかを事前に説明しておくべきでしょう)。

もちろん、どうしても部活の顧問をやりたくない人が、採用面接の際にその旨を学校側に伝え、学校側から部活の顧問を行わない教員として採用されていた場合には、部活の顧問はその教員の職務の範囲外となります。

部活の顧問を教師に強制できるか?

部活の顧問が職務の範囲外である教員・教師については、部活の顧問を、学校が業務命令として強要することはできませんから、あくまでも自発的に趣味の一環として行う場合でなければ、部活の顧問を行わせることはできません。

これに対して、部活の顧問が職務の範囲内である教員・教師については、使用者である学校は、業務命令としてその担当する業務を指示することができますから、部活の顧問を担当することを命令することができることとなります。

したがって、担当する業務の指示という点からの問題はなくなり、あとは、「長時間の残業」という問題点だけが残ることとなります。

残業命令はどこまで許されるのか?

確かに、労働者は、始業時間から終業時間までの所定労働時間の勤務を義務付けられているだけであって、終業時間が終わった後はプライベートの時間として自由であるのが原則です。しかしながら一定程度の残業は、使用者がこれを命じることができますから、残業を命じられた場合には、これに従う必要があります。特に、日本の長期雇用社会では、解雇が制限されているかわりに、繁忙期には残業をしてその人員不足を補うことを原則としていますから、残業命令は、使用者に認められたかなり強い権限であると考えられています。

ただ、今回問題となっている部活動の問題のように、あまりに労働時間が長時間となりすぎている場合や、長時間の残業が恒常的に生じている場合には、労働者の健康を守るという観点から非常に問題があります。この点からは、残業命令が無制限に許されるわけではありません。

公立学校の教員の、無制限な長時間労働

残業命令の制限について、一般的な民間企業であれば、36協定によって残業時間の上限が決まっているほか、行政の運用上、1か月の残業時間が80~100時間ともなれば、過労死してもおかしくない基準とされている労働時間を超えていくことになるので、これ以上の長時間労働を命令し続けることは、いざ労働者の健康が害されたときに会社が責任追及されるため許されません。

今回の問題で注目されている公立学校の教員の場合、「給特法」という公立学校の教員に適用される特別な法律で、残業が禁止されているにもかかわらず「臨時または緊急」の場合には残業がOKとなるせいで、事実上残業が無制限に行われ、残業代も支払われていないという過酷な労働環境が問題となりました。その結果、1か月無休勤務など、明らかに過労死基準を上回る長時間労働を強要されていた教員・教師も少なからず存在するようです。

部活顧問をしたくない教師はどうすればよいか

では、教員・教師の側に立ったとして、自衛手段はあるのでしょうか。

まず、教員・教師になる前から部活動の顧問をしたくないという考えが固まっている場合には、自分の職務の内容に部活動の顧問が入っていないことを、証拠化しておくべきでしょう。具体的には、採用面接の段階から、自分は部活動の顧問をやりたくないと伝え、そのことを録音、書面といった客観的な証拠に残しておくべきです。

もし、教員・教師になってしまってから、部活動の顧問をやりたくなくなった場合には、健康状態を害する程の長時間労働を強要されたのであれば、その健康被害を訴え、状況が変わらなければ、過重労働であるとして裁判に訴えることも検討するべきでしょう。

「給特法」とは?

正式名称を「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」といいます。

その内容を簡単にまとめると、次の通りです。

1.残業禁止が原則
2.したがって、残業代は発生しない
3.残業代のかわりに、教職調整額(4%)が支払われる

しかしながら、「臨時または緊急の必要」の場合には、残業禁止の原則の例外とされており、その結果、長時間労働が無制限に行われ、これに対する残業代も支払われないという事態となっていました。

この結果、残業代よりも明らかに低額な「教職調整額」の支給によって、以下のような残業が恒常化することとなりました。そのもっとも過酷な例が、今回問題となった部活動顧問の問題なのです。

☛ 部活動の顧問
☛ 朝の通学指導
☛ 生活指導パトロール
☛ PTA集会への出席
☛ 家庭訪問

これらの業務は皆、本来の職務の範囲内かが不明確にされていたり、本来の職務の範囲であることが明らかであっても、その労働時間が適切に把握されず、長時間労働が無制限に行われているのが現状なのです。

まとめ

今回は、最近話題となっている部活動顧問の長時間労働の問題について、労働法的な観点から解説してみました。

本来、労働者の労働時間を適切に把握し、健康を害する程の長時間労働をさせないように監視することは、使用者である学校の役目です。これは、給特法があることでも何ら変わるわけではありません。

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残業代請求の時効は2年です。残業代は労働した分の適正な賃金ですから、1日8時間、週40時間以上働いている場合には、あきらめず請求しましょう。


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