長年連れ添った夫婦でも、不倫関係が発覚したことによって一瞬で冷めてしまいます。

ただ夫婦関係が冷めるだけでなく、不倫を犯されてしまったという「悲しみ」の感情が、「怒り」の感情へ変わる方もいます。

特に、女性の不倫被害者の場合、夫を恨むよりもまして強く、相手の女性に怒りの矛先を向ける相談ケースが多い傾向にあります。

このように、不倫の怒りを爆発される場合、ともすれば、すぐに相手の自宅を突き止め、不倫相手の自宅に乗り込み、押しかけて、慰謝料請求をしてやろう、と考える方も多いようです。

もちろん、突然の押しかけが功を奏し、謝罪と多額の慰謝料を獲得して解決するケースもあります。

しかし、このような解決ケースはまれで、自宅押しかけによって解決し、何らの問題も起こらなかったとすれば、「運が良かった。」と言わざるを得ません。

不倫相手の自宅への乗り込み、押しかけが、不利になるケース、そのリスクについて解説していきます。

いつ夫に対して追及をするのか

まずは、不倫相手の自宅に押し掛ける前に、不倫が発覚した直後、夫に対して不倫の有無を問い詰める方がいます。

しかし、何の戦略もなく不倫を問い詰めることはお勧めできません。

特に、不倫が発覚した直後で、まだ十分な証拠を収集する前に夫を問い詰めてしまえば、いざ裁判となったとしても、証拠不十分で責任追及が中断してしまうおそれがあります。

すぐに追及を行う前に、まずは離婚問題に強い弁護士へ相談し、戦略を練ることにしましょう。

不倫相手の自宅へ押しかける

夫に追及した結果、不倫相手が良く知る人物であった場合や、夫の携帯電話の登録内容から不倫相手の自宅が発覚した場合、すぐに行ってみたくなる気持ちは痛いほどわかります。

不倫の被害にあったわけですから、すぐにでも自分で何とかしたいという思いが強く、いてもたってもいられないでしょう。

しかし、個別の事案によってケースバイケースですが、即座に不倫相手の自宅に押しかけて、成功したという話はあまり聞きません。

むしろ、逆に、不倫相手の自宅への乗り込みは、あなた自身が違法行為を犯してしまうというリスクもあります。

それだけ、自宅への押しかけによって自分だけで解決しようという手法は「ハイリスクハイリターン」なのです。

自宅への押しかけが違法となるケース

ここでは、不倫相手の自宅への押しかけ行為について、その法律違反のリスクを具体的に解説していきます。

恐喝に該当する場合

まず、自宅への押しかけ行為が、違法行為と評価されるケースがあります。不倫の被害者とはいえ、違法な方法で慰謝料を請求してはいけませんから、違法な手段を使えば、不倫の被害者であったとしても、後々の訴訟において不利な事情の一つとして考慮されてしまいかねません。

「不倫相手が悪いことをしたのになぜ自分が責められなければいけないのか。」「被害者なのに我慢しなければいけないのはおかしい。」と思うかもしれません。

しかし、例えば、お金を貸していて、返してもらえない、という場合であっても、その解決は裁判などの法的手続に委ねるべきであって、相手を殴って回収したり、相手の財布を盗んだりすれば、これが犯罪になることは理解してもらえるでしょう。

具体的には、不倫相手に対する恐喝と評価されるおそれがあります。

特に、不倫相手が家庭を持っていた場合には、「家庭に不倫が発覚する。」ということは、不倫相手にとって絶対に避けたいことであって、その分、これを交渉のカードとして引換えに慰謝料を請求する行為は、より恐喝と評価されるリスクが高まります。

名誉棄損に該当する場合

不倫を行った人にもプライバシーがあります。

「自宅」というのはプライバシーの塊ですから、不倫の被害者だからといって、相手のプライバシーをやたらと侵害してよいわけではありません。

特に、不倫相手以外の第三者に対しても、不倫の事実が公になるとすれば、逆にあなたが、名誉棄損罪などの犯罪行為を行ったと評価される危険があります。

自宅への解決は違法でなくても、自宅押しかけのリスクは大きい

冷静な解決が困難となり、証拠を失う危険あり

不倫問題を、法的に解決していくとなると、まずは証拠収集、その後話し合いをし、話し合いがうまくいかなかった場合には訴訟を行う、という流れで進みます。

証拠収集中は、できる限り多くの証拠を適切に収集するためにも、できれば話し合いを開始しないことはもちろんのこと、夫や不倫相手に、不倫に気付いていることすら伝えたくないものです。

その上、やっと証拠収集が終わって話し合いが開始したとしても、相手が不倫を否定するなどの不誠実な交渉態度に憤りを感じ、また、訴訟になれば1年以上の期間が必要なこともあります。

このように不倫問題の解決が遅々として進まず、ストレスがたまると、「不倫相手の自宅へ乗り込んで話し合えば、すぐに解決するのではないか。」という考えを抱きがちです。

しかしながら、このような解決方法を思いついてしまうときというのは、冷静な姿勢を欠いていることが多いものです。冷静に交渉できない状態で、不倫の当事者と言い争いをしたとしても、ほとんどの場合、あなたに有利な解決に至ることはありません。

そして、自宅に押し掛けたからといって、不倫相手が素直に不倫の事実を認めるとも限りません。証拠収集が不十分な状態で不倫の事実を否定されてしまえば、訴訟になったとしても、不倫の事実を証明できず、結果、慰謝料請求が否定されてしまうという最悪のケースも想定されます。

相手の配偶者から慰謝料請求をされるおそれあり

不倫相手にも配偶者がいる場合があります。

このような場合、あなたの夫と不倫相手との不倫関係の被害者は、あなただけではありません。不倫相手の配偶者もまた、あなたと同じ、不倫の被害者となります。

この場合、不倫相手の配偶者は、あなたの夫に対して、あなたと同様に、慰謝料請求をすることができます。

あなたが、今回の不倫によって、もはや既に夫と離婚をする気があり、離婚の際に取得できる財産にもあまり執着がない、という場合であれば、不倫相手の配偶者から夫に対する慰謝料請求があるかどうかはあまり問題ではありません。

これに対して、あなたが、夫との間でヨリを戻すことを考えている場合や、離婚した場合の財産が不倫相手の配偶者に渡ってしまうことを気にする場合には、安易に不倫相手の配偶者に不倫関係が発覚してしまう手段は考えものです。

まとめ

以上の通り、不倫相手の自宅に押し掛ける行為は、ハイリスクハイリターンであり、犯罪などの違法行為に該当する危険性もあるため、お勧めできません。

違法行為とならなかったとしても、解決につながるわけではなく、むしろ、後々の法的な手続において、あなたに不利な結果につながる可能性すらあります。

そのため、まずは、離婚問題に強い弁護士に相談し、戦略を練ってから行動を起こすべきでしょう。すなわち、具体的な行動を起こす前には、離婚の法律、裁判例にしたがった十分な検討が必要であるといえます。