求人詐欺を撲滅せよ!若者雇用促進法の活用のポイント【平成28年3月施行】


求人詐欺

若者雇用促進法が平成28年3月1日から施行されました。

「求人詐欺」という言葉が流行している通り、本来の求人情報よりも良い条件で募集をして、実際に入社してみたら聞いていた条件よりと全く違うというケースが目立ちます。若者雇用促進法は、求人詐欺を行うブラック企業を撲滅するために昨年改正され、平成28年3月から施行される法律です。

求人詐欺を避け、ブラック企業に間違って入社してしまわないためにどのような情報開示を求めればよいのでしょうか?若者雇用促進法を活用して就職活動を有利に進めましょう。

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求人詐欺とは?

少子高齢化が進行して労働人口が減少するにしたがって、良質な人材を獲得することはますます困難となっています。その中で、少しでも安価な賃金で良質な人材を働かせようとして生み出されたのが、求人詐欺問題です。

たとえば、次のケースは求人詐欺を疑うべきです。

☞ ハローワークの求人票に記載されていた給与と異なる給与を提示された
☞ 労働条件が最初の提示と違うことに不服を伝えたら問題社員といわれた
☞ 正社員での応募のはずが業務委託の扱いとされていた
☞ 会社情報に記載されていた社員数、賞与実績と実態が全く異なっていた
☞ 週休2日と記載されていたが、会社の風潮から土日に出社せざるをえない

今後、若者雇用促進法の施行によって、ハローワークを始めとして政府も求人詐欺問題の改善に真剣に取り組むことが明らかにされました。

求人詐欺の被害にあった場合の対策

証拠収集がポイント!

求人詐欺をする会社は、できるだけ安く良質な労働力を買い叩こうと考えるブラック企業ですから、まず入社はお勧めできません。求人詐欺が明らかになった時点で、求職活動の中止、転職をすべきでしょう。

その上で、「内定をもらったことで他の企業の内定を断ってしまった」「内定をもらったことで前職を退職した」といった実損害が生じている場合には、損害賠償請求を検討しましょう。

損害賠償請求をする際に重要となるポイントは、証拠の収集、保全です。次のようなものが証拠として考えられます。

☞ 求人票の写し
☞ 求人情報のコピー、ホームページ画面のキャプチャー
☞ 面接時のやり取りの録音
☞ 面接前後のメールによるやり取り
☞ 会社説明会の資料
☞ 内定通知書、労働契約書

また、「労働条件が実際と異なる」という求人詐欺の証拠を確実に得るために、求人票で明確になっていない労働条件については、面接で必ず確かめておきましょう。求人詐欺を行うようなブラック企業は、トラブルとなれば虚偽の説明をすることも考えられます。

よくある求人詐欺のケース

求人詐欺の相談は、ハローワーク、労働基準監督署にも数多く寄せられていますが、最も多く相談されている内容は「賃金関係」、その次が「終業時間」「職種や仕事の内容」です。

固定残業代制度を導入することによって実際の給与額よりも高給なように見せかける行為も求人詐欺と同様ですので、次の記事も参考にしてください。

(参考)固定残業代(定額残業代)の落とし穴!ブラック企業に注意

若者雇用促進法とは?

ブラック企業の求人を拒否できる

ブラック企業が社会問題化したことを理由として、平成27年9月に成立し、平成28年3月より施行されます。

これまでハローワークは、企業の出す求人情報をすべて受け付ける必要がありましたが、この若者雇用促進法によって、労働基準法違反を1年間に2回以上労働基準監督署から指導を受けた企業、求人詐欺を行った企業などの求人情報を受理しない扱いとすることとなりました。

企業に対し職場情報提供を義務付け

若者雇用促進法によって、次の情報を企業は求職者に対して開示しなければならない義務を負うこととなりました。

まず、次の3類型のそれぞれについて、1つ以上の情報を提供しなければなりません。


1.募集・採用に関する状況
2.就業能力の開発・向上に関する状況
3.企業における雇用管理に関する状況

そしてこのそれぞれに含まれるべき開示情報を次のように定めています。

1.募集・採用に関する状況
☞ 過去3年間の新卒採用者数・離職者数
☞ 過去3年間の新卒採用者数の男女別人数
☞ 平均勤続年数

2.就業能力の開発・向上に関する状況
☞ 研修の有無及び内容
☞ 自己啓発支援の有無及び内容
☞ メンター制度の有無
☞ キャリアコンサルティングの有無及び内容
☞ 社内検定等の制度の有無及び内容

3.企業における雇用管理に関する状況
☞ 前年度の月平均所定外労働時間の実績
☞ 前年度の有給休暇の平均取得日数
☞ 前年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別)
☞ 役員に占める女性の割合及び管理的地位にある者に占める女性の割合

したがって、気になる労働条件の情報すべてがカバーされるわけではありませんが、重要な情報は事前に入手することが可能です。自身で入手する方法の他、大学のキャリアセンターなどを経由する方法があります。

若者雇用促進法で求人詐欺を撲滅できるのか?

情報提供を求めると採用されない?

若者雇用促進法に基づく情報提供を求めると、不利益な取扱がされるケースも出てくるでしょうが、厚生労働省は、情報提供を求めたことを理由として不利益な取扱をしないよう企業に周知を行っています。

とはいえ、企業には採用の自由があり、採用・不採用の理由を開示する必要はありませんので、いざ不採用となったときにその理由が情報提供を求めたことにあるのかどうか、判断することは困難です。

若者雇用促進法違反に罰則がない

若者雇用促進法に違反して情報提供を行わなかったり、虚偽の情報を提供したりしたとしても、今のところ企業に対して罰則を科すことはできません。

したがって今後も、求人詐欺の撲滅のためには、求人詐欺の被害にあってしまった一人一人が、民事事件でその権利実現を訴えていくことが必要でしょう。

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