賃貸人の大家から、突然立退きを迫られ退去通告!出ていかなければならない?


家賃滞納

都内のマンションに賃貸で住んでいましたが、ある日突然、賃貸人である大家さんから、今月末で立退きしてほしいと、退去通告を受けました。

賃貸ではありましたが、10年来住みつづけた愛着のあるマンションであり、突然追い出されるのは納得がいきません。

また、現実的にも、今のマンションの家賃が相場よりも安いため、近隣に引越しをすれば、賃料は増額されることが予想され、経済的にも引越は困難です。

単なる賃貸人に過ぎないわけですから、大家さんの所有権の方が優先する気がしますが、とはいえ、現在では、「借地借家法」という法律によって、賃貸借契約を締結している賃借人の権利はかなり強く保護されています。

賃貸契約をしている大家さんから突然、即座の退去を通告された場合に、従わなければならないのか、賃借人として交渉の余地があるのか、解決方法について解説していきます。

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突然の退去通告の方法と、その直後の対処法

まず、突然の退去通告ということですが、その方法、伝えられ方には、いくつかのパターンがあります。たとえば、次の通りです。

☛ 大家さんから、対面で直接伝えられる
☛ 管理会社(不動産会社)から電話で伝えられる
☛ ポストに、退去通告の書面が投函されている
☛ 同じ賃貸住宅に居住している別の賃借人から噂で聞く

まず、他の賃借人から噂で聞いた場合には、確かな情報であるかが不明確なので、まずは大家さんか管理会社(不動産会社)へ電話して確認するとよいでしょう。どちらに連絡するかは、日頃の賃貸住宅の管理業務を誰がどの程度担当しているかによって、日頃よく連絡をする方に連絡して確認すればよいでしょう。

もしかしたら、他の賃借人の噂が不正確であり、すぐに退去する必要は全くない状態であるかもしれません。特に「このあたりの土地は開発の対象となるので、そろそろ退去しなければならないらしい。」といった噂は、勘違いやデマであったり、真実であっても開発が頓挫したりといった事情により、最終的には住み続けることができるケースもあります。

しかし、大家さん、管理会社(不動産会社)から正式に退去の通告を受けた場合には、連絡をしてきた方との慎重な話し合いが必要となります。

契約時や、話し合いの際に、連絡窓口が指定されている場合には、それにしたがった方がうまくいくでしょう。たとえば、退去通告の際に、「今後の連絡は管理会社にするように、大家との直接の話し合いはしないように。」との注意があれば、これに従う方が無難です。管理会社と交渉をしたとしても、大家に伝わることとなるでしょうし、直接の直談判をすることが悪い印象を抱かせるおそれがあります。

退去通告の理由は?賃借人に責任はないか

大家さん、管理会社(不動産会社)から退去通告を具体的に受けた場合には、退去通告の理由を具体的に質問するようにしてください。

ここで、退去通告の理由が、賃借人に責任のある理由によるものであった場合には、賃貸借契約が長期間の継続を前提としていることから、その理由が、賃借人と賃貸人との間の信頼関係を破壊するのに十分な程度の理由であるかどうかが、裁判では問題となってきます。

たとえば、賃借人の側に原因のある退去通告の理由としては、次のようなものが考えられます。

☛ 家賃の支払いを複数回怠っている
☛ 契約で定められた内容と、異なった用途に利用している(住宅用に借りたのに、会社の事務所にしているなど)
☛ 賃貸建物の規約に違反した使用をしている(騒音で他の賃借人に迷惑をかけているなど)
☛ 契約で定めた賃借人以外の人に貸している(無断転貸など)

このような理由が賃借人側にある場合には、退去通告にしたがわなければ裁判で負ける場合があります。

したがって、退去通告の際に伝えられた理由に心当たりがないか、心当たりがあるとしたら、それは信頼関係を破壊する程度のものであるか、を検討する必要があります。

退去通告の理由が、大家側の事情であるとき

退去通告の理由が大家側の事情による場合には、借地借家法が適用されるのであれば、大家さんに従って退去する必要はかならずしもありません。

借地借家法は、今回のケースのように、自分の住宅の用途に賃貸借契約を締結している場合には、その適用があります。

通常、賃貸借契約には、「大家さん側からの賃貸借契約の解除を申し入れる場合には、半年前(6か月前)に通知すること」というルールが記載されていることが多いですが、6か月前に通知をしたからといって、問答無用で追い出せるわけではありません。

賃借人としても、引っ越し費用もかかりますし、新たな住居の契約費用も必要となりますから「はい、そうですか。」とすぐに納得できる状況ではないことが多いでしょう。これら引っ越し費用や、新賃借物件の初期費用は、賃借人側からすれば、本来であれば不必要であった費用です。

この点、借地借家法は、賃借人の居住権を強く保護するため、解約の申し入れ、更新拒絶には「正当な理由が必要」としているのです。

立ち退くか?立ち退かないか?その結論は

このように、借地借家法によって賃借人が保護される結果、大家側の一方的な事情によって解約を申し入れることは、認められないケースが多いといえます。

したがって、大家から強く退去を要請されたとしても、即座に従わなければならないわけではありません。

一方で、法律で保護されているとはいえ、大家と喧嘩をしながら住み続けるというのも、ストレスとなる場合が多いでしょう。

もちろん、地域密着型の店舗を運営している場合など、どうしてもこの場所でなければ、少しでも引っ越しをしてしまうと売り上げに大きく影響するといった、徹底抗戦をしなければならない理由がある場合もあります。

単なる住居用として賃貸しているのみで、他に利害関係がないのであれば、次の場所が見つかり、金銭的に良い条件が提示されるのであれば、最終的には立ち退きに合意することも合理的な選択肢の一つなのではないでしょうか。

大家さん側にも、正当な理由が認められるケースもあります。例えば、次のような場合です。

☛ 大家さんの家族が利用しなければならない深刻な事情がある
☛ 老朽化が進んでおり、ただちに建て替え工事を行わなければ危険である
☛ 事情は大したことはないが、立退き料の支払いも含めて考えると、立退きが正当である

したがって、まずは大家さん側の事情、交渉と、立退きの際の条件について、提案を求めるべきでしょう。

「大家さんが強く要請してきたからといって、ただちに従うしか選択肢がない」という考え方をする必要がないという点は肝に銘じて、冷静に交渉を行いましょう。

まとめ

大家さんや管理会社から突然の退去通告をされたけれども、賃借人側に全く非がないというケースの場合の対応について、「仕方がない。」「退去するしかない。」と考える必要はありません。

注意すべきは、次の2点です。

・ 賃貸人側の言いなりになってすべて従う必要はない。
・ とはいえ、喧嘩するべきではなく、こちらの必要性を伝えた上で、退去する場合にはその条件について交渉する。

この2点を肝に銘じ、冷静に交渉にあたってください。

ご自身の住居は、生活にかかわる重要なことですから、専門家である弁護士に一度相談して、交渉の方針についてアドバイスをもらうのがよいでしょう。

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