覚せい剤の抜き打ちチェックは合法?企業の身体検査の是非を問う。


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「爆笑問題」が所属する芸能事務所タイタンの太田光代社長が、元マネージャーが覚せい剤で逮捕されたことを受けて、「覚せい剤検査を全社員に実施する」と発表したことが注目を浴びています。

会社内で、社員に対して検査を実施することには、どんな問題があるのでしょうか?

このような問題は、覚せい剤検査に限らず、身体検査、アルコール検査、持ち物検査、携帯チェック、私物チェックなど、企業の社員管理、社員教育のさまざまな側面で問題になることが多いといえます。

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社内薬物検査に対する厚生労働省の見解

厚生労働省は、「労働者の個人情報保護に関する行動指針」において次のような見解をのべています。

使用者は、労働者に対するアルコール検査及び薬物検査については、原則として、特別な職業上の必要性があって、本人の明確な同意を得て行う場合を除き、行ってはならない。

「特別な職業上の必要性」があるかどうかというところがポイントです。

運送業、警備業、危険物取扱業など、お客様の安全確保が非常に重要な責務となっている業種や、官公庁・地方自治体・大学などの社会に与える影響が大きい団体などであれば、本人の明確な同意を得れば薬物検査はできるケースが多いといえます。

薬物検査以外の検査は?

薬物検査以外の検査であっても、社員のプライバシーを侵害する程度と、検査を実行しなければならない業務上の必要性とのバランスで決めるべきであると考えられます。

厚生労働省の上記の見解の中で次のように述べられているとおり、「HIV患者であるかどうか」といった事情は、プライバシーの程度の非常に高い情報といえますから、安易な理由ではなかなか認められ難いでしょう。これらの情報は、会社内での違法な差別につながる可能性もあります。

(1)使用者は、原則として、労働者に対し次に掲げる検査を行ってはならない。
(イ)うそ発見器その他類似の真偽判定機器を用いた検査
(ロ)HIV検査
(ハ)遺伝子診断

企業、団体の薬物検査の事例

2006年 自衛隊

2005年度に自衛官による薬物事案発生件数が17件に激増したことをうけ、全隊員対象の薬物検査を導入。

2008年 日本相撲協会

力士会の定例会の冒頭で抜き打ちで簡易検査による尿検査を行い、露鵬と白露山の2名の尿のサンプルから陽性反応。

2009年 大阪市交通局

地下鉄運転士が覚せい剤使用での有罪判決をうけ、地下鉄・バスの運行業務にかかわる全職員3830人を対象に薬物検査。9人が検査を拒否。

2013年 JR北海道

運転士が覚せい剤取締法違反容疑の逮捕をうけ、国土交通省北海道運輸局がJR北海道に対し「全運転士(1100人)に対する薬物検査実施を提案し、JR北海道が拒否。

2015年 東京メトロ

車掌が覚醒剤所持で起訴されたことをうけ、再発防止策として運転士や車掌に対し、抜き打ちでの尿検査などを実施すると発表。

社員に対する身体検査、持ち物検査をしてもよいのか?

原則としては、身体検査をはじめとした各種の検査は、労働者のプライバシーを侵害する程度が強いと考えられていますから、社員の明確な同意を得なければ行ってはいけません。

また、どうしても業務上必要であって、社員の同意を得て行う場合であっても、就業規則やその他の規程に、その際の手続きを明確に定めて説明をし、その通りに行うべきです。

正当な理由なく身体検査や持ち物検査を実施した場合に、プライバシー侵害、精神的苦痛を与えたなどの理由で訴訟問題に発展する可能性もありますので、業務上の強い必要性を感じた場合には、人事労務に明るい弁護士や社労士に相談しましょう。

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