拡充されたキャリアアップ助成金を解説!事例で見る助成金申請。


キャリアアップ助成金

厚生労働省が行っているキャリアアップ助成金が、このほど拡充されました。これは、優秀な人材を社内に取り込むチャンスです。ぜひ積極的に活用しましょう。

とはいえ、どのような場合が助成金申請に該当するのか、また助成金申請の準備や、どんな書類を用意したらいいのかということなど、ちょっとよくわからない、ということもあるでしょう。

今回は、簡単な例を挙げて、キャリアアップ助成金について解説します。また、今厚生労働省が注力している「多様な正社員」についても解説します。

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キャリアアップ助成金検討例

ご相談のケース

ご相談者(A社)
わが社は資本金1000万円、従業員20人の中小企業です。

従業員の構成は,①正社員10名②契約社員4名③アルバイト6名となっています。

今後の事業展開を見据え、契約社員4名を正社員に、アルバイトのうち4名を短時間正社員に登用することにしました。

わが社はどんな助成金を申請できるでしょうか?また、どのような準備が必要でしょうか?

キャリアアップ助成金のコース

キャリアアップ助成金には次のコースが用意されています。

1 正規雇用等転換コース 
有期契約労働者等を正規雇用等に転換または直接雇用した場合

2 多様な正社員コース
① 勤務地限定正社員または職務限定正社員制度を新たに規定し適用した場合
② 有期契約労働者等を勤務地限定正社員、職務限定正社員または短時間正社員に転換または直接雇用した場合
③ 正規雇用労働者を短時間正社員に転換または短時間正社員を新たに雇い入れた場合

3 人材育成コース
有期契約労働者等に次の訓練を実施した場合に助成
① 一般職業訓練(Off-JT)
② 有期実習型訓練(「ジョブ・カード」を活用したOff-JTとOJTを組み合わせた3~6か月の職業訓練)
③ 中長期的キャリア形成訓練(厚生労働大臣が専門的・実践的な教育訓練として指定した講座)(Off-JT)
④ 育児休業中訓練(Off-JT)

4 処遇改善コース
すべてまたは一部の有期契約労働者等の基本給の賃金テーブル等を2%以上増額改定し、昇給させた場合

5 健康管理コース
有期契約労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施した場合

6 短時間労働者の週所定労働時間延長コース
労働者の週所定労働時間を、25時間未満から30時間以上に延長し、社会保険を適用
した場合

(引用元)厚生労働省

 
今回の例では、「契約社員を正社員にした」ので1、「アルバイトと短時間正社員とした」ので2の③、がそれぞれ当てはまります。

次に、申請の準備について見ていきましょう。

キャリアアップ助成金申請

キャリアアップ助成金を申請するためには、予め「キャリアアップ計画書」を提出し、管轄労働局長の認定を受けておく必要があります。

以前、「実はこんなにある!助成金・補助金を活用しよう!」という記事でも解説しましたが、助成金は、原則として、「事前に提出した計画を実行した後に」申請→受給するものです。後から、「これは今見てみたら助成金の要件に該当しているじゃないか」と思っても、計画書を出していないので申請できない、ということになってしまいます。

この記事をお読みの方は、助成金・補助金は「事前に」計画書を提出することが原則と覚えておいてください。

キャリアアップ助成金申請に当たっては、もう1つ大きな注意点があります。

それは、従業員の契約の変更等について、就業規則等に記載があることが必要である点です。もし、御社の就業規則に当該規程がなければ、就業規則の変更と届出が必要になります(社内規定や人事課通知等で足りる場合もあります)。就業規則の変更等につきましては、社会保険労務士へのご相談をお勧めします。

重要、支給申請期間

キャリアアップ計画書を提出し、管轄労働局長の認定をもらったら、計画を実行します。

今回の例では「契約社員から正社員への転換」「アルバイトから短時間正社員への登用」です。平成28年2月23日に無事契約書を交わし、労働条件通知書を交付しました。

しかし、ここですぐに申請できるわけではありません。転換後、6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内が支給申請期間です。A社の場合、給与は毎月20日締め25日払いなので、申請期間は平成28年8月26日から2か月以内となります。

助成金は、要件や申請期間を満たすことが前提となっています。期限を間違えないように注意しましょう。

ところで、今回A社は、助成金をいくら受給できるのでしょうか?

A社は、「①契約社員4名を正社員」に、「②アルバイト4名を短時間正社員」にしました。また、①については、転換日は平成28年2月23日なので、拡充版の助成金の対象です。
したがって、以下のような計算になります

① 60万円 × 4人分 = 240万円
② 20万円 × 4人分 = 80万円

合計320万円が受給できることになります。
なお、支給対象人数には上限がありますので、申請時には要綱をよくお確かめください。

ここまでが、助成金申請の大まかな流れです。

申請の際には、キャリアアップ計画書、就業規則等、労働条件通知書等、賃金台帳、出勤簿、タイムカード、中小企業であることを証する書類(登記事項証明書等)等々、さまざまな書類を提出する必要があります。

こちらのページを参考にしてください。
(参考)キャリアアップ助成金について(厚生労働省)

なお、キャリアアップ助成金は雇用保険関連事業ですから、雇用保険に加入していることは大前提です。ご注意ください。

多様な正社員

政府も勧める多様な正社員とは?

「多様な正社員」とは、これまでの「正社員か非正規雇用労働者か」という二極化を是正し、さまざまな働き方を実現することで、労働者のワークライフバランスを充実させ、企業には優秀な人材の確保を進めてもらおうと、厚生労働省が認知・定着の拡散を図っている新たな雇用形態の1つです。

これまでの正社員に比べ、勤務地・職務内容・勤務時間が限定されている正社員をいいます。期間の定めがないこと、直接雇用されていることは、従来の正社員と同じです。

「多様な正社員」には、企業側・労働者側双方にメリットがあるといわれています。

企業側のメリット

従業員のライフイベントによる離職を防ぐので、人材の流出抑制の効果がある。技能・ノウハウの蓄積が図れるだけでなく、人材育成にかかる費用を抑えることもできる。地域密着のサービスを描きやすくなることも利点。

労働者側のメリット

出産・育児・介護等で離職せずに、就業を継続できるため、ワークライフバランスの両立が可能となる。非正規雇用からのキャリアアップが期待でき、モチベーション高く仕事をするようになることで、ハイパフォーマンスが発揮できる。中長期的なスキルアップを計画することができる。

「多様な正社員」を実効性あるものとするためには、「正社員」←→「多様な正社員」のステータス変更を弾力的にする運用が重要です。

まとめ

助成金は、条件を満たせば受給できます。申請や準備はちょっと面倒ですが、ぜひ有効に活用してください。

なお、厚生労働省系の助成金についての詳細は社会保険労務士へご相談ください。

片野 真理子(かたの・まりこ) 行政書士
知的資産経営報告書作成、融資・補助金申請、会社設立支援を主な業務としています。
東京都行政書士会所属。

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