【追記:平成28年6月1日民法改正】再婚禁止期間問題。民法が憲法違反って?今後どうなる


再婚禁止期間違憲判決

再婚禁止期間についてのニュースが多くなっています。というのも、再婚禁止期間を定める民法が、最高裁判所で「憲法違反」であると判断され、民法の改正が議論されているからです。

現行の民法では「女性は、離婚してから6ヶ月間は再婚できない」ということになっておりますが、2015年12月16日の最高裁判決で、「この規定のうち100日を超える部分は憲法違反」だと初めて認められました。

これをうけ、民法の改正となりますので、歴史に残る判決といえるでしょう。

【追記】

平成28年6月1日、この判例に従って、女性の再婚禁止期間を100日に短縮する民法改正案が成立しました。

ただ、今後は、3年を目途に、再婚禁止期間の存在自体を見直していくことが付則に示されました。

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なぜ民法は再婚禁止期間をもうけているのか?

再婚禁止期間とは

再婚禁止期間とは、再婚が禁止されている期間をいい、女性についてのみ、離婚、士別、婚姻取消しの日から6か月の間、再婚をしてはならないと定める民法の規定です。

再婚禁止期間がある理由

なぜ女性にだけ再婚禁止期間があるかというと、それは、生まれた子どもの父親が誰なのかという問題で争いを起こさないためとされています。妊娠をしてから出産まで、「十月十日」ありますから、離婚直後に再婚してしまうと、この直前直後に妊娠した子が、どちらの父親の子どもかがわからなくなってしまうためです。

また民法では出産時期による「どちらの子」かの判断も下記のように規定されています。

☞ 離婚後300日以内は前の夫の子
☞ 結婚から200日経過したら現夫の子

このようにして、重複期間が生じないように、女性は6ヶ月以内の再婚が禁じられているということになります。

これに対して、生まれてきた子どもの母親が誰かは、出産時に明らかなので男性には再婚禁止期間はありません。これを男女差別だととらえる方は多いようです。

再婚禁止期間は色々と問題があった

民法は明治31年から施行されており、以降も再婚禁止期間については改正されずにいます。

人間の妊娠期間は280日くらいと言われており、世界の最長妊娠期間は375日間という記録も残っているようですが、当時の人たちは「300日おけば重なることはないだろう」という解釈で、このような民法の定め方になったと言われています。

このルールにより、前の夫の子になることを拒んで出生届を出さないなどというケースも問題となりました。

現代では、明治時代と違って、DNA鑑定によってかなり正確に誰の子どもかわかりますし、医療技術の発展によって、出産をしたからといってその母親の子どもかどうかも「明らかだ」とはいえなくなるでしょうから、民法が現代の技術の進歩に会わなくなってきているのです。

今回の違憲判断の経緯

今回の判決の事案はこういうものでした。

☞ 岡山県の30代女性が再婚禁止期間のために再婚が遅れた
☞ これにより精神的苦痛をうけたとして国に損害賠償請求を提訴
☞ 前夫と離婚後に現夫との子供を妊娠
☞ 離婚後6ヶ月間、再婚を待たざるをえなかった
☞ 離婚成立から221日に少女を出産
☞ 現夫の子として出生届を出したが受理されなかった
☞ 長女が無国籍状態に置かれた

今回の争点は、再婚禁止期間が女性だけに設けられているのが「男女平等」を定めた憲法14条に違反するのではないかということでした。一審と二審では請求が退けられ上告。最高裁での最終判断に委ねられたのです。

原告側は「禁止期間は100日で十分」と訴えており、これが最高裁に認められた形となり、再婚禁止期間を定める民法733条1項について、100日間を超える部分は違憲であると判断されたのです。

なぜ損害賠償は認められなかったのか

原告の女性は、違憲の主張と共に、国に対して約165万円の国家賠償(精神的損害に対する慰謝料)を請求していましたが、これは最高裁でも認められませんでした。

最高裁の判断は、次のように説明できます。
再婚禁止期間違憲判決

再婚期間が短くなります(民法改正の流れ)

女性の再婚禁止期間の違憲判決を受けて、法務省は民法の改正案をまとめました。菅義偉官房長官は「厳粛に受け止めたい。早期に民法を改正する」と述べ、政府はこの改正案を3月に国会に提出し、今国会での成立を目指す予定です。この法律が成立すれば、女性の再婚禁止期間は100日と、大幅に短くなります。

なお、これをうけ、違憲判決が出た当日から、法務省は離婚後100日経った女性については婚姻届を受理するよう全国の自治体に通知しました。法律の改正を待たずに「再婚禁止期間」の実務上の運用は100日に変更されたのです。

再婚禁止期間の例外

妊娠していなかったら即再婚容認へ

法務省は、再婚禁止期間を100日にすると共に、離婚時に妊娠していなかったら直ちに再婚を認めるという民法改正案を明らかにしました。

そのため、今回の民法改正案が成立すれば、離婚時に妊娠していない女性は離婚後すぐに再婚できるようになります。

その他の再婚禁止の例外

現行の民法でも、再婚禁止期間の趣旨が「父親が誰かわからない」という状態を防ぐためであることから、父親が誰かがはっきりと区別できる場合として、以下の場合には再婚ができることとされていました。

☞ 前婚の解消または取消しの前から妊娠していた場合で、出産した後の再婚の場合
☞ 前の夫と同じ人ともう一度行う再婚の場合
☞ 出産できないほどの高齢者の再婚の場合
☞ 前の夫の生死が3年以上不明との理由での離婚判決があった後の再婚の場合
☞ 夫の失踪宣告による離婚の後の再婚の場合
☞ 離婚後優生保護法に基づく優生手術をした旨の意思の証明書を添えての再婚の場合

まとめ:本年は民法改正ラッシュ

2016年は「再婚禁止期間」以外にも、「短期消滅時効の廃止」、「法定利率の引き下げ」、「保証人の制限・保護」、「敷金の原則返還」、「定型約款」などの民法の大改正が120年ぶりに行なわれる模様です。
弁護士や司法試験を受ける方はもちろん、この改正に関係のある仕事につかれている方はチェックしてみてください。

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