経歴詐称について、活動を自粛した経営コンサルタントのショーンK氏が事実を認めて謝罪したことが話題となっています。
会社に入社時に伝えた経歴が異なっていた場合や、重要な個人情報を隠して入社したという場合に、犯罪になるのでしょうか?また、この経歴詐称を理由として行った懲戒解雇は有効なのでしょうか。短期間の転職歴があったり職務経歴が少なかったりすると、つい経歴詐称をしてしまう求職者がいるため注意が必要です。
今回は、経歴詐称が行われやすいケースを特定し、経歴詐称を未然に防ぐための事前予防対策について解説します。
実際に経歴詐称が発覚した場合の適切な対応についてはこちらの記事を参考にしてください。
(参考)経歴詐称は犯罪!?経歴詐称を理由とする懲戒解雇は有効か
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このページの目次
経歴詐称がよく行われる5つのケース
以下の個人情報は、企業側が採用の際に特に重要視する情報であるため、特に経歴詐称が多い個人情報となりますから、これらの情報に詐称がないか、提出書類や関係者の聴取、調査活動等によって明らかにしておくべきです。
特に経歴詐称が多く、会社で採用時に重要な選考要素として考慮している事実については入念な裏取り調査が必要となる場合もあるでしょう。
学歴
採用を決定するに際して学歴を重要視する企業が多いため、最も詐称の多い情報となります。
☞ 高卒を大卒と詐称するケース
☞ 入学・卒業年月日を詐称するケース
「高卒限定」などの求人に対し、大卒を高卒と詐称する逆の経歴詐称のケースも見受けられます。また、留年・浪人を隠すために、入学・卒業年月日を詐称するケースもあります。
職歴・職務経歴書
応募されている業種への適正があることを詐称するため、職歴、経験した業務、職位などを詐称するケースがあります。部下の労務管理、業務管理、マネジメントの経験を詐称し、職位を高く詐称するケースもあります。
また、早期退職を繰り返す問題ある人材であるとレッテルを貼られないよう、短期間在籍した職歴を隠したり、退社理由、転職回数、在籍期間を詐称したりするケースがあります。
資格
獲得していない資格を取得しているという詐称や、TOEICなどの資格試験の点数をサバ読みする詐称ケースがあります。
年収
中途入社の場合、前職の年収を参考にして年収を決定されることが多いため、前職の年収を高めに詐称するケースがあります。
賞罰(前科・犯罪歴)
前科・犯罪歴がある場合、その内容や職種によってはそれだけで採用が見送られることもあるでしょう。したがって、前科・犯罪歴は最も隠したい個人情報となります。
経歴詐称を避けるための対策
経歴詐称をする求職者を誤って採用してしまわないための事前対策を企業側が適切に行うことによって、大部分の経歴詐称は事前に回避することが可能となるケースも多いものです。
経歴詐称を発覚させることができるケースの例を参考にして、適切な事前対策を検討しましょう。
各種提出書類で発覚させる4つのケース
経歴詐称を避けるため、内定者に提出させる各種提出書類を適切に指示し、履歴書、職務経歴書との相違を検討することによって、履歴書、職務経歴書の裏取りを正確に行いましょう。
したがって次の書類を必須の提出書類として指示することによって、相当程度経歴詐称を回避することが可能です。
退職証明書
労働基準法に基づいて、退職者が退職元の会社に対して入退社日、退職の事実、退職の理由、解雇の場合にはその理由などを証明する書類を出してもらうことができるというものです。
証明内容は労働者の指定によって決まるため、経歴詐称を避けるためのすべての情報が記載されているとは限らないものの、退職理由が記載されていないという場合には「解雇」であることが高確率で予想されます。
したがって、証明内容としてすべての事項を記載した前職の退職証明書を必須の提出書類として指示し、証明事項に不足がある場合にはその理由を確認し、回答を記録に残しておくようにしましょう。
年金手帳・雇用保険被保険者証
社会保険・雇用保険加入の手続の際に必要ですので、提出書類として指示することとなります。年金手帳・雇用保険被保険者証には、社会保険・雇用保険加入歴に関する情報や入退社日が記載されていることがありますので、これによって職歴の詐称を見破ることができるケースがあります。
なお、年金手帳は会社で預かるべきではなく、必要性がなくなれば本人に返還する運用がおすすめです。
源泉徴収票
年末調整に必要であるため、前職で発行してもらった源泉徴収票を提出書類として指示することとなります。
これによって、前職の年収の詐称や、前職の会社名の詐称などを見破ることが可能となります。求職者が自分で確定申告をする旨伝えた場合には、経歴詐称が疑われる可能性がある旨を伝えて、提出を促すようにしましょう。
資格証明書、卒業証明書
資格証明書、卒業証明書を提出書類として指示することによって、資格詐称、学歴詐称を確実に回避することが可能です。
更には、これらの書類を提出書類として指示することによって、会社が資格の有無、学歴を採用選考の際の重要情報として考慮対象としていることを明示する効果もあります。
関係者の聴取で経歴詐称が発覚する対策
採用の際に重要視している情報については、関係者への聴取を適切に行うことによってある程度経歴詐称を避けることが可能です。
経歴詐称の発覚したケースを参考に、関係者への聴取の適切な進め方を検討しましょう。関係者への聴取は、個人情報保護の観点から、行き過ぎに注意して進めなければ逆にプライバシー侵害などの反撃を受ける可能性があるため注意が必要です。
前職への照会
職歴、職務経歴書の業種、職位、経験職種などの経歴詐称を避けるために最も効果的なのは、前職への照会を行うことでしょう。
前職への照会について法律上禁止されているわけではないですが、個人情報保護の観点から、求職者本人の承諾書を取得して行うのが適切でしょう。求職者が前職への照会に同意しない場合には、拒否することが経歴詐称を疑わせることとなってしまう旨伝え、説得するようにしてください。
業界内の情報収集
同業界内での転職活動を行っている求職者の場合には、同業界の経営者ネットワークを使うことにより、また、同業界の人事担当者に聞くことによって、その人物の問題点を聞くことができる場合があります。
身元保証書、推薦状の取得
身元保証書とは、親族・上司・恩師などの近しい人間関係の者から、在職中に問題を起こした場合の金銭的責任を連帯して負う旨の保証をしてもらうための書類です。
最終選考段階まで来た求職者に対して、身元保証書や推薦状を取得することによって、経歴詐称を未然に防ぐことが可能となります。
面接・試験による詳細な検討
面接で能力、経験、業務適正、性格をすべて把握するのは困難であることについて本記事の前半で解説しましたが、とはいえ最も重要な情報が多く表れる場が面接の場であることは間違いありませんから、詳細な検討を行うようにしましょう。
特に、業務経験、知識、資格などの業務適正を詐称する経歴詐称のケースでは、面接で、同業界経験者の社員による詳細な質問をして回答を検討したり、場合によっては試験を課したりすることによってある程度洗い出しを行うことが可能です。
まとめ
経歴詐称を会社が未然に防ぐための対策について、どの情報に経歴詐称が多いのか、どういう場合に経歴詐称を発覚・回避することが可能なのかという点を参考に解説しました。ショーンK氏の謝罪で「経歴詐称」が話題ですが、採用を検討中の企業は参考にしてください。
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