確定申告が平成28年2月16日から開始されました。
確定申告には青色申告と白色申告があり、青色申告のほうが手続きが複雑な分節税メリットが大きいとよくいわれますが、どういう意味でしょうか。
青色申告で利用できる節税メリットについて、白色申告との比較で検証してみましょう。個人事業主で確定申告をしなければならない方は必見です。
このページの目次
青色申告・白色申告とは
青色申告とは
所得を税務署に申告する方法のうち、複式簿記の方法によって取引を帳簿に記録し、これによって税務署に所得を申告する方法です。
青色申告を行うためには、決められた期限までに税務署に対して申請書類を提出して、税務署の承認を受けておく必要があります。
白色申告とは
青色申告の申請を行っていない個人事業主は、原則として白色申告の方法によって税務の申告を行わなければなりません。
ただ、平成26年1月から、白色申告でも記帳が義務付けられることとなったため、白色申告のほうが青色申告よりも適当でよい制度とは必ずしもいえず、白色申告のメリットは薄れたといってもよいでしょう。
所得税の申告とは
所得税の申告は、以下の計算式で求められる課税所得に対して、その所得の額に応じた税率をかけることによって得られた税額を納付することとなります。
青色申告の4つのメリット
特別控除(65万円)
帳簿を複式簿記の形式で行っている場合には65万円、簡易簿記の形式で行っている場合には10万円を、課税所得から控除することができます。通称「青色申告特別控除」といいます。
無条件に65万円を所得から控除できるわけですから、これほどありがたいことはないでしょう。
これは、通年通して同額の控除ですので、確定申告間際に開業したとしても65万円の控除を受けることが可能です。ただ、売り上げが65万円に達していない場合にはマイナスにはならず、その売り上げ分しか控除ができないため、売り上げが上がらないのであれば開業時期は調整したほうがよいでしょう。
白色申告にはこのような特別の税額控除は存在しません。
65万円の青色申告特別控除を受ける要件は、以下の通りです。
☞ 複式簿記の形式による記帳
☞ 確定申告期限内の、確定申告書の提出
☞ 貸借対照表、損益計算書の作成
☞ 提出書類に青色申告特別控除額の記載
赤字の繰越が可能(3年間)
赤字が出た年に、その赤字分を確定申告で損失申告をすると、その後の3年以内に黒字化した場合には、その黒字部分から損失を差し引くことができます。
また、前年にも青色申告をしていて、今年に赤字が出た場合には、来年以降も黒字化の予定がないのであれば、前年の黒字と通算して、前年に納付した税金の還付を受けることも可能です。
そもそも、年の区切りは税務申告上のものであって、たまたま区切った年に売り上げが上がっていたからといって多額の税金を支払わなくてはいけないのでは、年単位で収入の増減が激しい個人事業主としては不条理だと考える人も多いことでしょう。
白色申告にはこのような通算の制度はありません。
家族への専従者給与が必要経費に
個人事業主が、その家族を従業員として雇用した場合、青色申告をしている場合には、その給与のすべてを必要経費として所得から控除を受けることができます。通称「専従者給与」といいます。
この専従者は、同居、または、生計を一にしている、15歳以上の配偶者や両親、祖父母、子供などに適用され、1日6時間以上、月15日以上、ないし、年間6ヶ月以上の期間を個人事業主の事業のために働いている人が対象となります。
白色申告の場合には、配偶者は86万円、その他の親族は1人50万円までを上限としての控除となり、上限がない分だけ青色申告のほうが有利となります。白色の場合、しっかりと記帳していなければ家計の費用と給与とは分けがたいことを理由に、このように税額控除に上限が課されているのです。
ただし、専従者となった人の所得税えは、扶養控除、配偶者控除の対象となれないという点に注意が必要です。
30万円未満の減価償却資産を一括経費に
パソコン、大型機械といった高額の物を購入した場合、これは「経費」ではなく「資産」と考えられ、減価償却を行わなければならないこととされています。減価償却とは、その物に決められた耐用年数に応じて、数年間に割り付けて経費にするという仕組みです。
青色申告をしている個人事業主の場合には、この資産について、30まねん未満であれば、取得した事業年度に全額を経費として、所得から控除することができます。
白色申告の場合には、10万円以上のものについては減価償却をしなければならないとされています。
青色申告の要件
申請書の提出
青色申告をする場合には、申請書を税務署に提出し、税務署の承認を得なければなりません。「所得税の青色申告承認申請書」という書類を記入して、税務署に申請するようにしましょう。
なお、申請の期限は次のように決まっています。
→ 開業から2ヶ月以内
☞ 白色申告から青色申告への変更の場合
→ 青色申告をしたい年の3月15日
複式簿記
青色申告をする個人事業主は、複式簿記の方法による記帳をしなければなりません。つまり、損益計算書、貸借対照表を作成しなければなりません。
ただ、白色申告であっても平成26年1月以降は、単式簿記の方法による記帳が義務付けられることになり、白色申告でも一定の面倒な作業が必要となることになります。
白色申告に切り替えてもかまわない!
青色申告の申請をしている個人事業主は、白色申告で行うこともできます。逆に、青色申告の申請をしていない個人事業主は、白色申告しか行うことができません。
青色申告の申請をしたのだけれども、どうしても時間がなくて複式簿記による記帳ができないという場合でも、その場合には白色申告をしておけばよいのです。たとえば、青色申告の申請をしたけれども結局所得はあまりなく、自分の集めた領収書で経費として十分だったという場合もあります。
したがって、青色申告の申請書は、とりあえず提出しておくという対応がよいのではないでしょうか。
青色申告と白色申告、どれくらい税額が違う?
青色申告が有利なことは解説しましたが、それでは、青色申告と白色申告では、どの程度税額が違うのでしょうか。
たとえば、経費、基礎控除をすでに控除した所得が400万円の個人事業主について、青色申告と白色申告とを比較してみましょう。
青色申告特別控除がないため、400万円がそのまま課税所得になります
→この場合の税額は37万2500円
400万円から、青色申告特別控除65万円をまず控除します。
すると、335万円が課税所得になります。
→この場合の税額は24万2500円
したがって、差額13万円も税金がお得になるのです。
当然ながら、所得がもっと高い場合には、所得が高いほど税率が高くなることから、より大きな節税効果を得ることができます。
まとめ
このように、個人事業主は、青色申告をすることによって白色申告よりも数十万単位の節税をすることが可能となります。
複式簿記による記帳など、一定の手間はかかるものの、白色申告にも記帳義務が必要となった以上、青色申告と白色申告でそこまで手間は変わりません。