ベローチェの「鮮度」発言に学ぶ雇い止め。ホントの論点はパワハラだった?


german-shepherd-232393_960_720

喫茶店チェーン「カフェ・ベローチェ」のアルバイト店員が雇い止めされたのが不当だとして訴えていた裁判が和解で解決しました。

一審ではベローチェによる「雇い止め」は有効であるとしてベローチェ側の請求を認めていましたが、今回、和解にいたったのは「鮮度」発言が原因だったとされています。これは、「雇い止め」の事案ではありますが、一種のパワハラ発言が労働者有利の和解を進めるのに切り札となった事案であるといえるでしょう。

今回のベローチェの件のように、不当に会社を辞めさせられた労働者がどのように争ったらよいかについて、解説していきます。

労働問題(解雇・残業代・労災)に強い弁護士へ相談!

ブラック企業での労働問題にお悩みの労働者の方は、すぐに弁護士へご相談ください。残業代、不当解雇、労災など、労働問題の解決実績の豊富な弁護士が、親身に対応します。

未払い残業代を請求し、不当解雇の撤回を求めることは、労働者に当然与えられた正当な権利です。弁護士が、あなたの正当な権利の回復のため、フルサポートします。

今回の争点は不適切発言

ベローチェの事例では、女性社員は雇止めになる前に人事部長から、「従業員は定期的に入れ替わって若返ったほうがいい」、「うちの会社ではそれを鮮度と呼んでいる」と言われ、人格を傷つけられたとして提訴しています。

これは、不当解雇の問題というよりは、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメントの問題でもあると考えるべきなのではないかと思います。

アルバイト店員の場合、ある程度会社の都合によって、期間満了によって雇止めをすることは許されていると考えられており、このような失礼な発言をせずに雇止めをしていたのであれば、会社が勝訴するという一審の結論も支持できたのではないでしょうか。

最近、奈良の女子大学でも「授業中に不適切な発言があった」として男性准教授が懲戒解雇されたように、発言行為そのもので大きな代償を払わされる事例が少なからず出てきています。

失言によるデメリットとは?

今回の「鮮度」発言を行ったベローチェの人事部長が、他のアルバイトにも不適切な発言を繰り返していたとしたら、問題はさらに拡大していたでしょう。ベローチェが和解に応じたのも、そんな背景があるのかもと想像することは邪推でしょうか。

一審の東京地裁ではこの「鮮度」発言について、「人格を傷つける発言とはいえない」と判断しているようですが、


1.発言を行った人物が人事部長という、企業内でも管理職的なポジションの役職者であること
2.被害者が女性であること

という事実を考え合わせると、配慮の足りない発言であったといわざるを得ません。

不当解雇とは

労働契約法第16条では「不当解雇」について以下のように定められております。

労働契約法第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

また、労働基準法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法にも、会社の一方的な都合による解雇が禁止される場合が規定されています。

解雇が禁止または制限されるのは、以下の場合です。

1.労働者が業務上の負傷をし、または疾病にかかり療養のために休業する期間、及び、その後の30日間(労働基準法第19条)
  ただし、「打切補償」が支払われた場合など一定の例外があります。
2.労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)
3.行政官庁または労働基準監督官に申告をしたことを理由とする解雇(労働基準法第104条第2項)
4.年次有給休暇を取得したことを理由とする解雇(労働基準法附則第136条)
5.労働者が女性であることを理由とする解雇
6.男女の均等な機会および待遇の確保に係る紛争に関する援助・調停を都道府県労働局長に求めたことを理由とする解雇(均等法第6条)
7.女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産し、産前産後の休業をしたことを理由とする解雇(均等法第9条)
8.産前産後の女性が労働基準法第65条の規定によって休業する期間、及び、その後の30日間(労働基準法第19条)
9.育児休業の申出をし、または育児休業をしたことを理由とする解雇(育児介護休業法第10条)
10.介護休業の申出をし、または介護休業をしたことを理由とする解雇(育児介護休業法第16条)
11.不当労働行為となる解雇(労働組合法第7条)
12.従業員が労働基準監督機関に申告したことを理由とする解雇(労働基準法104条、労働安全衛生法97条)

どのような場合に不当解雇になるのか?

整理解雇

会社が経営上必要とされる人員削減のために行う解雇のことをいいますが、以下の観点から無効であるかどうかを判断します(これを、「整理解雇の4要件」といいます)。

整理解雇の4要件
1.企業の経営危機など、経済状態から解雇による人員削減の必要性が高いこと
2.解雇を回避するための十分な努力がなされていること
3.解雇をする際の人選と、その基準の適用が合理的であること
4.人員整理の必要性と内容について、労働者に対して誠実に説明を行っていること

懲戒解雇

企業秩序を破った労働者に対して制裁として行われる解雇を懲戒解雇といいます。

懲戒解雇を行うには、就業規則で懲戒の種別と理由が明記されていること、そして、懲戒解雇が相当であることが必要であるとされています。したがって、次のような場合の「懲戒解雇」は不当解雇の疑いがあります。

☞ 懲戒解雇の理由とされている事実が、真実ではない
☞ 懲戒解雇の理由は真実ではあるが、就業規則上の懲戒理由に当たらない
☞ 懲戒解雇の理由とされている事実が、解雇に相当するほどの重大なものではない

普通解雇

労働者の能力、就労態度などを問題として行われる解雇です。

解雇の理由と、その相当性が必要となります。したがって、次のような「普通解雇」は不当解雇の疑いがあります。

☞ 普通解雇の理由としてあげられた事実に合理的な理由がなく、社会的にみても解雇に相当しない
☞ 能力不足を理由とされているが、全く指導・教育がなされていない

ベローチェの事例は不当解雇にあたるのか?

ベローチェの事例では、アルバイト店員が対象になっていたとのことですから、期間の定めのある従業員を、期間終了によって更新をしなかったという、いわゆる「雇止め」の事例でしょう。

雇止めの場合でも、更新回数が多く、契約期間が長い場合には、解雇と同様に、合理的な理由と相当性が必要であるとされていますから、不当な理由で解雇されたのであれば争うことが可能です。

まとめ

アルバイト従業員という短期間の雇用を前提とした従業員の場合、期間満了による雇止めが問題となることはあまり多くはありません。

ただ、会社の一方的な都合で契約を終わらせるという場合、従業員がどのような気持ちとなるかを考え、しっかりとした配慮が必要です。

気持ちを逆なでするような発言をすることは百害あって一利なしです。

労働問題(解雇・残業代・労災)に強い弁護士へ相談!

ブラック企業での労働問題にお悩みの労働者の方は、すぐに弁護士へご相談ください。残業代、不当解雇、労災など、労働問題の解決実績の豊富な弁護士が、親身に対応します。

未払い残業代を請求し、不当解雇の撤回を求めることは、労働者に当然与えられた正当な権利です。弁護士が、あなたの正当な権利の回復のため、フルサポートします。


関連記事を見る