営業秘密を持ち出すとどうなるか?日本ペイント役員逮捕に学ぶ


営業秘密

日本ペイントホールディングスに勤務していた役員が、主力商品の営業秘密を社外に持ち出したとして、不正競争防止法違反の疑いで、平成28年2月16日、逮捕されました。

企業の情報流出は、他社との競争に敗れる可能性もあり、非常に重要な問題です。その損失の大きさを十分に理解して、リスク対応に積極的に取り組む必要があります。

今回は、不正競争防止法が平成28年1月に改正されたことも受け、営業秘密の持ち出しについて解説していきます。

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不正競争防止法による営業秘密の保護

不正競争防止法とは?

不正競争防止法は、企業間の公正な競争を確保するために、営業秘密を守ることを目的として作られた法律で、営業秘密に対する侵害行為を、刑事罰によって禁止しています。

不正競争防止法は、平成28年1月に改正され、罰則規定をさらに強化され、これに合わせて各都道府県の警察では、営業秘密の漏えい防止を専門に取り扱う「営業秘密保護対策官」を新設するなどの対策強化をはかっています。

不正競争防止法による営業秘密の保護について、法律にしたがって更に会社の規程などを整備していく必要がありますので、詳しくはこちらを参考にしてください。

(参考)営業秘密を守り活用する(経済産業省)

不正競争防止法で保護される「営業秘密」

営業上の秘密の中には、企業秘密、機密情報など、さまざまな名称で呼ばれる情報がありますが、この中で、不正競争防止法で保護されているのが「営業秘密」です。

その内容としては、ノウハウ、経営情報、顧客情報などさまざまなものがありますが、不正競争防止法は、その中でも一定の要件を満たす情報について「営業秘密」として保護しています

「営業秘密」の3要件

不正競争防止法で保護される「営業秘密とは、次のように定められています。

不正競争防止法2条6項
営業秘密とは、秘密として管理されている生産方法・販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの

この秘密管理性、有用性、非公知性、「営業秘密」の3要件といいます。

秘密管理性

営業秘密が秘密として管理されていることが要件とされています。

秘密として管理されているためには、情報にアクセスできる者が制限されていたり(アクセス制限)、情報にアクセスした者にそれが秘密であると認識できたり(客観的認識可能性)する必要があります。

有用性

営業秘密が、有用な営業上または技術上の情報であることが要件とされています。

その情報自体が、客観的に見て、事業活動に活用されているなど、役に立つものであることが必要であるとされ、現実には利用されている必要はないとされています。

非公知性

営業秘密が、甲前途は知られていないことが要件とされています。

情報の保有者の管理下以外では一般に入手できないことが必要であるとされています。

営業秘密侵害罪の内容

刑事罰は?

このように不正競争防止法で定められた営業秘密について、不正な行為を行った場合には、個人については10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、法人については3億円以下の罰金とされています。これらをすべて同時に科すこともできます。

禁止される行為

営業秘密侵害罪は、営業秘密について、一定の不正な行為を行った場合に処罰できる規定となっています。その行為については、行為の類型、目的によって要件が定められており、次の7つに分けられます。

不正競争防止法21条1項
① 図利か外目的で、詐欺等行為又は管理侵害行為によって営業秘密を不正に取得する行為

② 不正に取得した営業秘密を、図利か外目的で、使用又は開示する行為

③ 営業秘密を保有者から示された者が、図利加害目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、(イ)媒体等の横領、(ロ)複製の作成、(ハ)消去義務違反+仮装のいずれかの方法により営業秘密を領得する行為

④ 営業秘密を保有者から示された者が、第3号の方法によって領得した営業秘密を、図利加害目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用又は開示する行為

⑤ 営業秘密を保有者から示された原職の役員又は従業員が、図利加害目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、営業秘密を使用又は開示する行為

⑥ 営業秘密を保有者から示された退職者が、図利加害目的で、在職中に、その営業秘密の管理に係る任務に背いて営業秘密の開示の申し込みをし、又はその営業秘密の使用若しくは開示について請託を受け、退職後に使用又は開示する行為

⑦ 図利加害目的で②、④~⑥に当たる開示によって取得した営業秘密を、使用又は開示する行為

たとえば、会社を退職後に、営業秘密を利用して会社のライバル会社に就職し、その営業秘密を洩らした場合などには、その労働者が刑事罰を科される可能性があることはもちろん、そのライバル会社もまた、労働者が営業秘密を利用していることを知っていた場合には、刑事罰を科される可能性があります。

したがって、転職者を受け入れる際には、非常に慎重にならなければなりません。

営業秘密が問題となるケース

以上の通り、営業秘密の扱いは非常に難しく、弁護士の下にも、労使どちらの側からも、以下のような相談が寄せられています。

労働者側からの相談
☞ 退職したいのだが、営業秘密を握っているといわれて退職を止められている
☞ 営業秘密を漏洩したと言われ、懲戒解雇になった
☞ 営業秘密を漏洩したと言われ、逮捕された
☞ 独立して同種の事業を行いたいが、営業秘密を利用したと言われないか心配

会社側からの相談
☞ 従業員が営業秘密をライバル会社に漏らした
☞ 営業秘密を管理するための規程などの会社制度を充実させたい
☞ 従業員が営業秘密を漏洩することを防止したい

今一度、営業秘密について、じっくり考えてみてください。

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