必見!中小企業にしってほしい知的資産経営報告書とは!?


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「企業」というと、トヨタやキリンといった大企業を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、日本の経済・産業を支えているのは、中小企業なのです。

2015年版中小企業白書によれば、中小企業数の全企業数に占める割合は99.7%です。さらに言えば、うち86.5%が小規模事業者となっています。
中小企業が元気であることが、日本が元気であるために必要なことだと言えるでしょう。

10年ほど前から、経済産業省が「知的資産経営」を主に中小企業を対象にすすめていることをご存知でしょうか?
これは、中小企業の目に見えない強みを「見える化」して、企業の収益・成長に役立てる経営のことです。

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知的資産、知的資産経営とは

知的財産、という言葉を知っている方が多いのではないでしょうか。近年、知的財産は、各企業における非常に重要な財産として、法律的にいろいろな保護が図られるようになっていますし、著作権等個人のレベルでも関わりを持ちやすいものです。

知的資産は、知的財産を包摂する概念です。
下図を見て頂くとわかりやすいでしょう(引用元:経済産業省ウェブサイト

図

このように、「知的資産」とは、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の目に見えない資産のことです。企業の競争力の源泉といえるでしょう。
このような、企業に固有の知的資産を認識し、有効に組み合わせて活用していくことを通じて収益につなげる経営を「知的資産経営」と呼びます。

実はみんなやってる知的資産経営

こんなふうに図式化したり、定義づけたりすると、とてもたいそうなものに見えてしまうかもしれませんが、実はどんな企業であっても、多かれ少なかれ知的資産経営と呼べる経営を行っています。
わかりやすい例を挙げてみましょう。

近所で評判の定食屋さんの例その定食屋さんは、60代のご夫婦2人で切り盛りしています。
開業して40年ほど経ちます。
場所は企業が多く並ぶ市街地から徒歩13分ほどのところにあり、お昼の休憩時間が限られている会社員の方にとっては、やや選択肢から外れがちな立地といえます。
それなのに、その定食屋さんはいつもお昼時は満席です。
なぜなのでしょうか?

その理由を解き明かして、目に見えるようにします。そして、見えた知的資産を意識し、活用しながら経営をすれば、この定食屋さんの経営はより盤石になります。それが知的資産経営です。

定食屋さんの知的資産経営を確認してみましょう。
話を聞いてみると、こんな特長がありました。

☞ お店が大変清潔
☞ 40年の経験から下準備が完璧になされており、食事を提供するまでの時間が短い
☞ 食事の品質が良く、日によるばらつきがない
☞ メニューを増やしすぎずに食材の回転率を上げ、経費に無駄がない
☞ 長い付き合いの鮮魚店があり、金目鯛を格安で都合してもらえる
☞ 奥さんの接客が抜群に良く、会社員同士を繋ぐこともあるコミュニケーション力を持つ
☞ 口コミで評判が広がるため宣伝費がかからない
☞ ご夫婦ともに非常に健康

たったこれだけ文字化するだけでも、それぞれのファクターが相乗効果を生んでお店を繁盛させていることがわかります。

知的資産経営報告書とは

知的資産経営報告書とは、知的資産を活用して経営を行っていることを企業の内外に示すために作成する報告書です。主に中小企業を対象とし、中小企業の倒産を防ぎ、地域経済の安定維持、さらには発展及び活性化を目的としています。

今後は、財務資料とともに提示されることで、投資家の判断基準の1つとしての地位を得ることが期待されています。

知的資産経営を開示しよう

知的資産経営を開示・評価する意義

企業が持続的な利益を目指す「知的資産経営」を続けていくためには,その企業の取り組みをステークホルダー(取引先,顧客,株主・投資家,従業員,地域社会など)に認知・評価してもらうことが重要です。
そのためには,企業が,財務諸表だけでは十分に表現することができない「知的資産」や知的資産を活用した経営手法について,ステークホルダーに対して情報開示を行う必要があります。
これが「知的資産経営に関する情報開示」です。

経済産業省のページより

なお,情報開示だからといって,大切な営業秘密を洗いざらい開示してしまっては元も子もありません。情報開示の際にはどこまで開示するのか十分検討しましょう。

知的資産経営を開示するメリット

企業価値の増大

財務諸表だけでは表れてこない知的資産を見える化することで,ステークホルダーからの適切な評価を得ることできます。
知的資産経営報告書を作成・開示しているという事実そのものがステークホルダーに一定の信用を与えることになり,開示企業のブランド構築に有効です。
また,強みを見える化しているため,顧客へ強い訴求力を持つことにもなります。既存の顧客には安心感と継続的取引へのモチベーションとなり,見込み顧客には有力な営業ツールとなるでしょう。

経営資源の最適な配分

情報開示のプロセスは,自社の知的資産を再認識する過程です。作業を通じて,人材・資金等の経営資源のより適切な配分が見つかることでしょう。

資金調達の容易化

企業の将来は財務諸表だけで図り取ることは困難です(一見業績好調な企業でも,見えない問題を抱えている場合もあります)が,知的資産を見える化することにより,将来価値に対する確度や企業の信頼が高まります。それにより,金融機関等からの資金調達が有利になります。

実際,金融機関によっては,知的資産経営報告書を申請書類に添付することを推奨しているところもあります。

知的資産経営報告書を作成・開示することは,どの企業にも可能です。まだあまり認知が進んでいない創業間もない企業にとっても,自らのポテンシャルを金融機関やファンドに示す絶好の機会と言えるでしょう。

従業員のやる気・士気の向上

従業員が,経営者の理念や自社の強みを正確に理解することによって,従業員の士気の向上が期待できます。また,自身が自社内でどのような意義を持っているか,役割を担っているかを確認してもらうことで,業務について積極的になることが考えられるため,離職を防ぐ効果もあると言えます。

従業員が活き活きとしている企業は,優秀な人材を引き寄せるものです。それも,知的資産を見える化していることで,求職者に対し,「なんとなく活気がある」以上のしっかりとした情報を与えることができます。

厚みのある知的資産へ

企業価値の増大や資金調達の容易化は,企業にとって次なるステップを考えるこの上ない手段となります。知的資産経営報告書では,将来価値を見える化するために,数年後の具体的な目標を立てます。この実測の際に,新たな価値創造のための知的資産への再投資が可能となります。

事業承継対策

自社の内部事情をつぶさに確認し,客観視する作業を通じて,事業承継の準備をすることができます。社内のキーマンを様々なファクターから確認できることも特長です。

まとめ

知的資産経営報告書は,企業のライフステージや目的によってさまざまな作成方法があります。お近くの専門家にぜひご相談ください。

片野 真理子(かたの・まりこ) 行政書士
知的資産経営報告書作成、融資・補助金申請、会社設立支援を主な業務としています。
東京都行政書士会所属。

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