詐欺罪とは、人をだましてお金などをとる行為(「詐取」といいます)を処罰する犯罪です。
「人をだまして財物をとる」という要件にあてはまれば、その手口はいろいろなだまし方があります。騙し方は、詐欺師によって様々なものが編み出されており、事件化することの困難な犯罪でもありますが、他方で、「このような行為でなければ詐欺には該当しない。」という一般論もあてはまりにくいので、自身の行為が詐欺にならないか十分な注意が必要です。
自分では、取引行為の一環として行っていた場合であっても、受け取り手に勘違いが生じたために、詐欺罪として逮捕されてしまうこともあり、その場合には、詐欺によって相手を騙して財物を得るという認識があったかどうかがポイントとなります。
どのような行為をすると詐欺となるのか、詐欺で逮捕された場合にどの程度の刑になるのかを解説していきます。
刑事事件はスピーディな対応が重要です!
もし、あなたの家族、友人、親族が、刑事事件で逮捕、勾留などの身柄拘束を受けた場合には、刑事事件の得意な弁護士にすぐ相談をしましょう。刑事弁護を開始するタイミングが早ければ早いほど、身柄拘束が短期で終了し、示談成立、起訴猶予などの、有利な結果を獲得できる確率が上がります。
日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。
詐欺罪とは?
詐欺罪とは、大まかにいって以下の2つの要件にあてはまる場合に成立します。
1.人をだます行為
2.財物をとる行為
したがって、この2つの要件に該当する行為を行えば、そのだまし方は様々で、軽い嘘であっても、それを信じた人が財産的な価値のあるものをあなたに渡せば、詐欺となる可能性があります。
例えば、以下のようにいろいろな行為が詐欺罪にあたる可能性があります。
☛ 振り込め詐欺
☛ 保険金詐欺
☛ 投資詐欺
☛ 未公開株詐欺
☛ 無銭飲食・無賃乗車
☛ クレジットカードの不正使用
☛ クレジットカードの現金化
中でも、オレオレ詐欺(母さん助けて詐欺)、振り込め詐欺などは、件数・被害額が非常に多くなり、「特殊詐欺」として社会的にも問題になりました。ほかの人が真似して犯罪を行うことを防ぐため、このように社会的に問題になった犯罪は、厳しく処罰される傾向にあります。
警視庁でも特殊詐欺専用のページが開設され、特殊詐欺の手口や予防策についての情報をまとめています。警視庁の統計によれば、振り込め詐欺の被害額は平成27年だけでも約70憶円にも及びます。
(引用元)警視庁「特殊詐欺被害認知状況」
当事務所の相談ケースでも、次のような相談内容が非常に増加しています。
☛ 「100万円を預けてくれたら、海外で行っている金の採掘事業に投資をし、1年間で倍にして返すことができる。」と言われて100万円を預けたが、数か月の配当があっただけで、その後連絡がとれなくなった。
詐欺罪にあたらない場合とは?
以下の場合は、詐欺罪にあたらない、つまり、無罪となるといえます。
☛ だます行為をする時点では、後でお金をきちんと支払う予定であった
☛ 無銭飲食といわれているが、食事をする時点ではお金を持っていると思っていた
☛ 投資詐欺といわれているが、実際に運用し、単に失敗しただけである
ただし、未遂になる場合もあるので、未遂罪として処罰される可能性がある場合には、弁護活動が必要となります。
また、詐欺の意思(故意)があったかどうかについては厳しく判断されますから、単に「人に命令されてやっただけで、内容は知らなかった」というだけでは、「怪しいと思わなかったのか?」という疑問がわいてしまうことから、主張が認められないことがあり得ますので、しっかりとした準備が必要です。
特に、オレオレ詐欺(母さん助けて詐欺)の場合、以下のような事情があれば、「その時点で怪しいと思わなかったのか?」「何らかの犯罪行為であるとわかって協力したのだろう」と判断されやすく、詐欺の意思(故意)がなかった、「知らなかった」という主張は難しくなってきます。
この場合、「知らなかった」と主張することは、反省の色がないということで逆に不利にはたらくおそれもあります。
☛ 被疑者が、受け取り行為を行ったことに対して報酬を約束されていること
☛ その報酬が、バイト代などよりある程度高額であること
☛ 被害者とのやりとりの中で、明らかに事実に反するやり取りがなされていること
☛ 被害者と共犯者とのやりとり(電話など)を聞いていたこと
☛ 被害者とのやりとりの録音
したがって、特に悪質性が高いと社会的にも問題となっている犯罪については、手口が有名であるがゆえに、「詐欺罪に該当するとは知らなかった。」という反論が認められづらくなります。
そして、警察の内偵、張り込み等が行われ、犯行状況の録音が存在する場合には、録音という客観的証拠と矛盾する供述を行うことは、その供述だけでなく、被疑者、被告人の供述全体の信用性を下げることにもなりかねません。
詐欺罪の刑罰の相場
詐欺罪は、刑法において、「10年以下の懲役」という刑罰が定められています。3年以下の懲役という刑罰の場合には、執行猶予がつく可能性があります。
罰金刑はありません。
有罪判決が下ると刑の相場は、一般的には1~3年程度が多く、
執行猶予のつく可能性は初犯であれば比較的高いといえます。
詐欺の刑罰を決める際に考慮される要素は、次のとおりです。
☛ 示談が成立しているかどうか
☛ 詐欺の手口が悪質かどうか
☛ たとえば、計画的犯行か、計画の緻密さ
☛ 組織犯罪かどうか、反社会的勢力とのつながりがあるかどうか
☛ 共犯がいる場合には、詐欺行為において果たした役割
☛ 犯行動機が利己的なものかどうか
☛ 詐欺によって利益を得たかどうか、その額
☛ 反省をしているかどうか
☛ 謝罪をしたかどうか
☛ 被害額を弁償したかどうか
☛ 身元引受人・監督者がいるかどうか
☛ 初犯か、前科があるか(特に詐欺の前科)
また、詐欺で得た利益をなくすために「没収」「追徴」という刑罰が追加されます。そのため、「詐欺でしこたま儲けて、発覚したら服役したとしても利益は確保する」ということは困難となります。
なお、組織的な詐欺行為の場合には、組織犯罪処罰法によって懲役1年以上となります。
詐欺罪で逮捕された場合のその後のながれ
逮捕された場合の一般的な流れについては、以下のように進みます。
1.逮捕(警察) ・・・逮捕から48時間
2.逮捕(検察) ・・・逮捕から24時間
3.勾留 ・・・10日間
4.勾留延長 ・・・最大10日間
5.起訴~判決
詳しくは、こちらの記事で刑事手続きのながれについて詳細に解説していますので、参考にしてみてください。
(参考)刑事事件の流れが5分でわかる!弁護士相談から逮捕、判決まで
詐欺罪で逮捕された場合、ほとんどの場合に勾留の段階に進むこととなり、逮捕の段階で釈放されることはほとんどありません。100%に近い逮捕された詐欺罪が、勾留されているという結果が出ています。
これは、勾留の要件である「逃亡」「罪証隠滅(証拠の隠滅のことです)」という可能性が、非常に高いと考えられる犯罪だからです。人をだました、ということは、捜査機関からは「嘘をつく人間だ」というように判断されてしまいますし、必ず被害者がいることとなりますから、被害者に接触することによる証拠隠滅の可能性が非常に高いと判断されます。
加えて、オレオレ詐欺(母さん助けて詐欺)などの特殊詐欺の場合には、電話をかける人、お金を受け取る人といった役割分担のされた組織犯罪であることが非常に多いと考えられていることから、接見禁止(身柄拘束の期間中に弁護士以外の一般人が接見できないという制限)が行われる可能性も高いです。
その後、身柄拘束の期間中に起訴がされるわけですが、詐欺の起訴率は50%程度ですから、身柄拘束をされた場合には半分程度が起訴されてしまうという、起訴率の高い犯罪となります。これは、社会的に問題視されており、ほかの人が真似する可能性の高い犯罪だから厳しく処罰するという傾向にあるためです。
ご存じのとおり、起訴された場合の有罪率は非常に高く、99.9%とも言われていますから、起訴をされる前に、不起訴を狙った示談などの弁護活動を早急に進める必要があります。
詐欺罪の刑事弁護は?
このように、詐欺罪は、身柄拘束をされる可能性が高く、そして、身柄拘束をされると、有罪となる可能性の非常に高い犯罪です。
したがって、万が一詐欺罪で逮捕されてしまった場合には、まずは不起訴を狙った弁護活動を行うのがスタンダードでしょう。
詐欺罪には必ず被害者がいますから、被害者との示談が弁護活動の中心となります。被害者が示談に応じて、厳しく処罰することを望まないという内容の書面を書いてくれれば、不起訴となる可能性が非常に高いです。
ただし、詐欺罪の前科があったり、被害額が大きいなど詐欺行為が悪質であったりする場合には、示談が成立したとしても起訴される可能性があります。
このような場合、次の方法としては執行猶予を狙っていくということになります。初犯で示談が成立していれば、執行猶予の可能性は高くなります。
刑事事件はスピーディな対応が重要です!
刑事弁護は、できる限り早期に依頼することによって、有利な解決を獲得する可能性が高まります。
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