会社を退職する方法には、大きく分けて、次の3種類があります。どれに該当するか曖昧なケース(はっきり解雇と言われていないが会社に行くことができない場合など)も、このいずれに該当するかをまず検討し、対応を考えるとよいでしょう。
1.自主退職
2.合意退職
3.解雇
今回のケースはまさに、相談者の方は、このいずれに該当するのかが、会社の対応が曖昧であるがために理解できず、弁護士への依頼に至ったケースであるといえます。
労働者と会社には、業務指示を受ける主従関係にあり、情報量にも格差があることから、今後の労働者としての地位を明確にせずに一方的な処分を行う会社の行為は、違法とされる可能性が高いといえます。
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退職意思表示をしたら一方的に解雇通告を受けた?
相談者のAさんは、今勤めている会社のことが嫌いであったわけではないですが、いつかはキャリアアップのために退職をしようと考えており、その目途が立ったため、退職の意思を社長に対して示しました。
すると、突然の退職の意思表示に対して立腹した社長が、「では、退職日は明日にしよう」と一方的に伝え、退職届も明日付けで記載され、会社のカードキー、貸与携帯、貸与PCをその場で取り上げられ、明日から会社に入れない状態とされました。
確かに、近いうちには退職する旨を伝えてはいたものの、まだ退職日など詳細については一切決まっておらず、むしろAさんとしては有給休暇の日数が残っていたことから、残日数の有給休暇を消化してから退職をしたいと考えていたところでした。また、ボーナスの支給日も迫っていましたが、この会社では、ボーナスの支給は「支給日在籍要件」があり、支給日に在籍していない限りボーナスはもらえません。
会社からの一方的な契約解除は「解雇」
Aさんは、少なくとも、「明日辞める」という意思はなかったわけですから、明日付けでの退職は、「自主退職」とも「合意退職」とも評価できません。
「まだ働きたい」と主張するAさんに対して、「明日で来なくてよい」と伝えることは、会社側から一方的に労働契約を解約することを意味しており、これは「解雇」となります。
会社が、明示的に「解雇である。」と言わなかったとしても、実質的には解雇と評価されます。
この点、会社は「Aさんは辞める意思があったのだから、それに対して会社も合意して辞めることとした。」と主張し、「合意退職」である、と主張してくることが考えられます。しかしながら、合意退職の場合には、退職日は会社と従業員の合意で決めるものです。
したがって、一方的に退職日を通知し、その日以降の出社を拒否する会社の行為は、解雇と評価されるのです。
会社の措置が「解雇」にあたるとすると、解決策は?
実質的に解雇と評価される場合には、解雇権濫用法理が適用され、解雇に合理的な理由と、社会通念上の相当性が要求されます。
相談者のAさんのケースでは、会社側に特に解雇とする理由はないわけですから、不当解雇として無効となる可能性の非常に高いケースであるといえます。
解雇の場合には、労働者が求める場合にはその理由を書面で通知しなければなりませんから、Aさんはまず、解雇の理由を書面で通知するよう会社に求めるべきでしょう。
この点、会社は「Aさんは辞める意思を示したのであり、そのことが理由である。」と主張することが考えられます。しかしながら、「将来的に辞めるつもりがある」ということは、解雇の合理的な理由とはなりません。
したがって、Aさんの解雇は、不当解雇として無効となります。
解決方法は?
以上の説明の通り、今回のAさんのケースは、会社が一方的にAさんに対して解雇を通告し、その解雇に特に理由がないことから、不当解雇として無効となり、Aさんは今でも従業員の地位を有し続けることを主張することができます。そうなると、賃金を得ることができますし、有給休暇を消化することも可能となりますし、「支給日在籍要件」を満たすことから賞与を得ることができます。
とはいえ、Aさんも近いうちに辞める気持ちはあったことから、1年以上もかかる労働訴訟を提起して、従業員の地位を確認するという争いは、Aさんも求めるものではないと思います。
したがって、退職を前提として、金銭解決の可能性を検討し、会社ともう一度話し合いをしてみるべきでしょう。
この場合の金銭解決の際には、Aさんがあとどの程度会社に残っているつもりであったのか、という点が、増額、減額に大きく影響してくるように思います。
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