刑事事件の被害者になったとき、加害者に刑事罰を与えたい、処罰したいと思うことがあるでしょう。
東京電力が、福島原発問題をめぐって、検察審査会から起訴議決を受けました。旧経営陣3名(勝俣恒久元会長、武黒一郎副社長、武藤栄副社長)が業務上過失致死傷罪で強制起訴されることとなりました。
今回は、刑事事件の被害者になったとき、加害者に強制起訴する方法、流れについて解説します。
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このページの目次
強制起訴とは?
告訴と被害届
日本の刑事事件では、被疑者を起訴できるのは検察官(検事)だけです。ですので、加害者を処罰してほしい場合には、被害者は、検察庁または警察に対して、被害届を提出するとともに、告訴することとなります。
被害届は、単に被害の報告をするものに過ぎないので、軽い犯罪の場合には、警察の捜査すらされず、最終的な処分の報告もされないことがあります。
これに対して、告訴とは「処罰してほしい」という意思表示であり、書面ではなく口頭でも可能です。告訴があった場合には、最終的な処分の報告を、告訴者に対してしなければなりません。
告訴と強制起訴
しかしながら、告訴したからといって検察が必ず起訴してくれるとは限りません。軽い犯罪だと評価されてしまえば、不起訴という判断も十分ありえますので、まずは厳罰を求める上申書を検察宛てに出しましょう。
検察官が不起訴処分としてしまった場合に、検察審査会による2度の審査で「基礎議決」がなされると、裁判所が指定した弁護士が、検察官に代わって被疑者を起訴します。これが「強制起訴」です。
強制起訴は民意の反映
強制起訴を決める検察審査会は、11人の一般人で構成されます。したがって、検察が不起訴とした事件について、一般的な市民の感覚から、起訴すべきなのではないか、という意見を重要視する制度です。
2009年5月より、検察審査会法によって、強制起訴という法的拘束力が、検察審査会の議決に生じることとなりました。「起訴すべき」との議決が2度にわたって行われると、強制起訴となります。
東電の旧経営陣が強制起訴
福島第一原発事件において、必要な津波対策を講じなかったことによって、被害者を死傷させたとして、業務上過失致死傷で強制起訴されることとなりました。
今後、強制起訴によって刑事手続き(公判)が始まるわけですが、争点は、東電の旧経営陣が、津波による被害を予見することができたか(つまり、「過失」があったかどうか)が争点となることが予想されます。
東電旧経営陣側は、「巨大な津波は予測できなかった」として無罪を主張する方針のようです。これによって、東北大震災の原発問題について、はじめて司法のメスが入ることとなります。
その他の強制起訴事件
明石歩道橋花火事故
明石海岸で行われた花火の際に、見物人が歩道橋に押し寄せたために折り重なって圧死した事件です。
被疑者は、当時交通整理を担当していた明石警察署の副署長です。
JR福知山線脱線事故
JR福知山線が脱線し、乗客と運転士あわせて107名が死亡した事故で、業務上過失致死傷容疑で強制起訴されました。
被疑者はJR西日本の歴代3人の社長です。
尖閣諸島中国漁船衝突事件
尖閣諸島付近で操業中であった中国漁船と、これを取り締まっていた海上保安庁の間で起きた衝突事件です。
被疑者は中国漁船の船長です
陸山会事件
国会議員の資金管理団体の陸山会をめぐり、政治資金規正法違反の容疑で強制起訴された事件です。
被疑者は小沢一郎元民主党代表です。裁判の結果、無罪となりました。
まとめ
東電旧経営陣の強制起訴のニュースに寄せて、今回は、「強制起訴」について解説しました。
犯罪の被害者になってしまったけれども、検察が「不起訴処分」との判断を下して納得がいかないときなどにも、参考にしてみてください。
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