セクハラといわれて懲戒解雇されたら?


セクハラ

セクハラをしたことを理由に懲戒解雇を言い渡されてしまったけれども、実際には懲戒解雇となるほどのセクハラ行為をしていなかったという相談内容について、解説していきます。

懲戒解雇は、会社から従業員に与えられる罰である懲戒の種類の中でも、一番重いものですから、そのセクハラ行為の程度によって懲戒解雇が認められるかどうかが変わってきます。

女性の活躍に対する意識が高まるにつれ、セクハラを理由にクビになるケースも増えています。

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相談内容:セクハラをしたとして懲戒解雇になりそう

ご相談者
セクハラをしたことを理由に、会社の社長から突然呼び出され、その場で「懲戒解雇であるから、明日から会社に来なくてもよいです。」といわれました。

確かに、部下の女性に対して何度か食事に誘ったことはありますが、社長に言われたような「胸を触った」とか「しつこく交際を迫った」といった事実は一切ありません。

懲戒解雇となってしまうと、次の就職を探すのも難しいと聞きますから、このままでは困ります。

私のケースは、部下の女性が内心では嫌だったとしても、食事に何度か誘った際も軽く流されただけで強く拒否されたことはありませんし、ましてや、懲戒解雇の理由に、「胸を触った」などの実際には行っていない行為が考慮されていると思うと納得がいきません。

実際は、部下の女性が私のことをしつこいと思ったことから、嘘の事実を社長に伝えている可能性もあり、私の方でも自分の言い分をしっかり伝えたいです。

弁護士からの回答内容

弁護士
懲戒解雇は、懲戒処分の種類の中でも一番重い処分であって、相当悪質な理由がなければ認められないものです。刑法でいえば「死刑」に近いものであって、懲戒解雇という処分が一度下されてしまえば、その後の就職も非常に難しくなりますから、しっかりと言い分を聞いてもらい、撤回してもらうべきでしょう。

懲戒解雇がこのように重い処分であることから、通常は、懲戒解雇の前にあなたに事情聴取をし、言い分を聞くのが一般的ですし、これをせずに懲戒解雇としてしまうと、無効となる可能性が高まります。

特に、セクハラのように、事実があったのかどうかが難しい問題の場合、会社の側がしっかりと事情聴取をして真実がどうであったかを検討しなければならないのは当然です。

まずは、どのような行為を行い、また、会社からどのような行為を行ったと言われており、その中でどの行為は行っていないのか、あなたのセクハラ行為の程度を、懲戒解雇とする程度のものかどうかを検討していきましょう。

セクハラとは?

セクハラとは「セクシャルハラスメント」の略語であり、一般的には「相手方の意に反する性的言動」と定義されています。セクハラは、職場内で行われることが通常ですが、会社の飲み会や二次会、出張先などで行われたとしても、業務に関係するものであればこれもまたセクハラとなります。

厚生労働省は、セクハラ防止についての指針を公表していますが、ここでは、セクハラは、「対価型」と「環境型」にわかれるとされています。

対価型セクハラの例

☞ 性的関係、交際、からだを触る行為などを要求し
☞ これを拒否した場合に、解雇、労働条件の低下などの不利益を与えること

環境型セクハラの例

☞ 女性社員の見えるところにアダルトビデオを置く
☞ 女性社員にだけちゃん付けをする、お茶くみをさせる
☞ 過剰な下ネタを繰り返す

セクハラは懲戒解雇になるのか?

セクハラに対する罰を判断するために考慮する事情

セクハラを理由とする懲戒解雇の効力を判断するにあたって、考慮される事情は以下のとおりです。

☞ セクハラ行為の内容、程度
☞ (接触を伴うセクハラの場合)触った部位、触り方、触った時間
☞ セクハラを行った者の職場での地位、権限
☞ セクハラを行った者の過去の処分歴(特にセクハラの処分歴)
☞ セクハラを行った者の反省の態度
☞ 被害者の被害感情
☞ 会社がセクハラ防止に努めていたかどうか

特に、管理職によるセクハラは、その地位を利用して反撃できないような行為といわれることが多く、悪質性が高いと判断される可能性があります。

セクハラの程度によって、懲戒解雇の有効性が決まる

セクハラと一口にいってもその程度は様々であり、セクハラ行為の違法性の程度、悪質性の程度が、懲戒解雇の有効性を判断するにあたって最も重要となってきます。

セクハラ行為は、その程度によって、以下の3つに分けられるといわれています。

1.刑法違反となるセクハラ
2.民法(不法行為)違反となるセクハラ
3.均等法違反となるセクハラ

したがって、この類型にしたがって懲戒解雇をされてしまうのかどうかを解説していきます。

刑法違反となるセクハラ

たとえば、相手の意思に反して肉体関係を強要したり、服の中に手を入れて触ったりするなどの場合には、強姦や強制わいせつなどの刑法違反となります。この場合には、警察に逮捕され、刑罰を受ける可能性すらあります。

刑法違反となるセクハラ行為の場合には、違法性、悪質性の程度が相当高度ですから、懲戒解雇とされてもやむを得ないでしょう。

民法(不法行為)違反となるセクハラ

たとえば、相手の意思に反して服の上からからだを触るなど、刑法に違反するわけではないけれども、民法上の不法行為となり損害賠償を請求される可能性がある行為がこれにあたります。この場合、被害者から損害賠償請求をされるなど、慰謝料などを支払わなければならないおそれがあります。

この場合には、上に述べた考慮要素(行為の回数、動機、程度、処分歴など)を考慮して、懲戒解雇されるのかどうかを判断していくこととなります。

ただ、この程度の場合には懲戒解雇をすると無効されている裁判例も多く存在しており、酒に酔って抱き着いたり、手を握ったりといった不適切な行為であっても、懲戒解雇までは無効となる可能性が高いともいえます。

このような場合には、より軽い懲戒処分(たとえば出勤停止、譴責、戒告など)という可能性もあります。

均等法違反のセクハラ

男女雇用機会均等法という法律でも、セクハラ行為は禁止されています。

こちらの法律で規定されているのは、訓示的な規定であり、刑事罰があったり損害賠償があったりするわけではありません。したがって、軽度なセクハラ行為はこのような法律で帰省されていることとなります。

たとえば、女性に対して差別的な扱いをする(コピー取り、お茶くみを延々とやらせる)、差別的な呼称で呼ぶ(ちゃん付けなど)などのセクハラ行為がこれにあたります。

このような場合には、初めてのセクハラ行為の場合には、まずは書面による注意・業務指導という対応が一般的でしょう。繰り返せば、譴責、戒告などの懲戒処分の対象となります。

また、これ以上のセクハラ行為の発生をおさえるために、その男女が相性が合わないのではないか?という場合もありえますから、セクハラの加害者側を配置転換によって別の部署に異動させるという対応もありえるでしょう。

ただし、昨年話題となった海遊館のセクハラ事件の裁判では、差別的な発言によるセクハラ行為が長期間にわたって継続的に行われたことを理由に、出勤停止などの重い懲戒処分を有効と判断していますから、単に言葉でのセクハラ行為しかないから軽い判断だと決めつけることもできません。

セクハラで懲戒解雇されそうな場合の対応

就業規則を確認する

まずは就業規則を確認して、懲戒解雇の根拠があるかどうかを確認してください。

懲戒解雇をするためには、以下の二つの要件が必要となります。

1.懲戒解雇の理由が、就業規則に記載されていること
2.懲戒解雇とすることが相当であること

セクハラをしたこと自体が懲戒解雇の理由として就業規則に記載されていなくても、「職場環境を悪化させたこと」「企業の秩序を乱したこと」といった一般的な懲戒理由に該当している可能性があります。

また、懲戒解雇は重い処分ですから、懲戒解雇をする際には手続きが決められている場合があります。この場合には、あなたのセクハラの懲戒解雇について、就業規則に決められた手続きがとられているか(たとえば、適切に言い分が聞いてもらえたかなど)をチェックしましょう。

特に懲戒解雇の場合には、裁判例でも、十分に言い分を聞くべき(「弁明の機会」といいます)とされています。

証拠の収集

セクハラが問題となる場合、その証拠がなかなか得られない、残っていないことが多いといえます。

特に、密室で行われた行為の場合、「自分はそんなセクハラ行為はしていないのに」と言っても、証拠はお互いの証言しかなく、どちらが信用してもらえるかは裁判所で争わない限り明らかにはなりません。

したがって、できる限りセクハラ行為を問題とされたらすぐに証拠の確保をするべきです。
会社がセクハラ行為の事実関係を間違って把握している場合や、被害者の言い分だけを全く疑わずに信じている場合などには証拠収集が特に重要となります。

たとえば、以下のようなものであっても、直接的ではありませんが証拠になりえます。

☞ 被害者との事前、事後のメール、LINEのやりとり
☞ セクハラ行為といわれる日時の直後に書いた自分の記憶のメモ
☞ 当日の写真、動画
☞ セクハラ行為の現場にいた他の社員の記憶を書いてもらったメモ

会社との交渉

集めた証拠をもとに、会社との交渉をしていきます。

まだ実際に懲戒解雇との処分がなされていないのであれば、その前に言い分を伝える機会があるのが通常ですから、その場で、証拠を提示した上で、自分の意見を伝えていきましょう。

セクハラ行為の事実関係に争いがある場合には、どの部分に争いがあるのか、なぜ被害者の発言が嘘だといえるのかという点は複雑な意見になることもありますので、事前に意見書として書面にまとめていくのがよいでしょう。

また、セクハラによる懲戒解雇となることを脅しとして、あなたに対して退職勧奨をしてくる可能性もありますが、これはあくまでも任意の退職をうながす行為に過ぎず、退職を強要することは違法です。

実際に行ってしまったセクハラ行為がある場合でも、軽度のセクハラで懲戒解雇とすることは無効となる可能性が高いため、あなたの反省、謝罪の想いを書面にまとめて提出しておくとよいでしょう。

労働審判・裁判

以上の交渉によって懲戒解雇の撤回がなされない場合には、裁判所における法的手続きによって争うこととなります。
具体的には、労働審判、裁判の2つの方法があります。労働問題に強い弁護士に相談をするとよいでしょう。

まとめ

今回は、相談形式で、「セクハラをしたといわれて懲戒解雇されそう」という事案について解説しました。

参考にしていただけたら幸いです。

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