障害者差別解消法とは?【平成28年4月施行】


障害者差別禁止法

障害者も障害者でない人も、お互いがお互いを認め合いながら、共に協力して暮らせる社会を作るために制定された法律が「障害者差別解消法」です。

平成25年に制定され、平成28年4月1日より施行が開始されます。

今回は、施行間近の障害者差別解消法の概要を解説します。

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障害者差別解消法とは?

正式名称を「傷害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」といいます。

日本ではいまだ、障害者の社会参加には多くの障害、ハードルがあり、少しずつでもこれらを解消し、障害者に関する世界の基本理念に追いつかなければなりません。

平成18年12月に国連で作られた障害者権利条約を日本が批准したことを受け、この条約の理念を法律化し、日本国内に浸透させる必要があり制定された法律です。すでにこの条約の批准のため、障害者基本法改正、障害者総合支援法の成立、障害者虐待防止法の制定といった動きが進んでいます。

障害者に対する差別の解消を内容とし、障害者基本法の基本的な理念にのっとって、政府による基本指針の策定、行政機関と事業者がなすべき差別解消措置、支援措置、不当な差別の禁止と合理的な配慮の提供について定められています。

障害者差別禁止の基本理念

障害者差別を禁止すべきであるという基本理念は、すでに障害者基本法にも次のように定められています。

障害者基本法4条
1.障害を理由とする差別等の権利侵害行為の禁止
何人も障害者に対して、障害を理由として差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。

2.社会的障壁の除去を怠ることによる権利侵害の防止
社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。

3.国による啓発・知識の普及を図るための取り組み
国は、第1項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。

今回平成28年4月1日より施行となる障害者差別解消法は、この基本理念を具体化して、取り組むべき必要な措置について定めたものです。

障害者の差別を解消するための措置

差別的取り扱いの禁止

障害者差別解消法では、国・地方公共団体・民間事業者に対して、障害者に対して、その障害を理由として障害のない者との差別的な取り扱いを行うことによって、その障害者の権利及び利益を侵害してはならない法的義務を負わせることを定めています。

次のような対応は不当な差別として禁止されるおそれの高い行為ですから注意が必要です。

☞ 障害者に対しては対応できないとして受付対応を断る
☞ 障害者は入場できないとして施設の利用を断る
☞ 障害者は入学できないとして学校への入学を断る
☞ 盲導犬・介助者を連れての利用をすべて断る

これに対して、正当な理由のある差別、つまり、真にやむを得ないと評価できる差別については、合理的な区別として許されることとなりますが、この点は障害者基本法の基本理念にのっとって慎重な判断が必要となります。

合理的配慮の不提供の禁止

障害者差別解消法では、国・地方公共団体・民間事業者に対して、障害者が現に社会的障壁を感じておりこれの除去を必要としているとの意思表示を受けた場合には、これに対する対応の負担が過重である場合以外には、障害者の権利及び利益を侵害しないよう、この社会的障壁の除去を実施しなければならない義務があると定めています。

この社会的障壁を除去しなければならない義務については、国・地方公共団体に対しては、法的義務となっていますが、民間事業者に対しては、「私的自治」の観点から、現在のところ努力義務に留まると定められています。

政府が基本方針を作成

政府が、障害者差別解消に関する基本的な方針や、地方公共団体、民間事業者などが講ずべき措置に関する基本的な事項について、基本方針を定めるものとしています。

基本方針を作成する際には、障害者その他の関係者の意見を反映するために必要な措置を講ずると共に、障害者政策委員会の意見を聞かなければならないものとされています。

これに基づいて、行政機関の職員の対応要領、民間事業者のための対応指針などが定められることとなります。

作成された対応要領、対応指針については、こちらをご覧ください。

実効性の確保措置

障害者差別解消法は、差別解消のための措置義務の実効性を確保するため、主務大臣に対して、民間事業者に対する報告を求める権利を与え、これに加えて、助言・指導、勧告の権限を与えました。

民間事業者が虚偽の報告を行ったり、行政処分に違反したりした場合などの一定の場合には、科料の制裁を科すことができることとし、実効性の確保を目指します。

差別を解消するための支援措置

障害者差別解消法においては、差別を解消するための支援措置として、国、地方公共団体は、以下の4点を行うものと定められています。


1.紛争解決・相談のための体制の整備
2.地域における連携
3.国民に対する啓発活動
4.情報収集、整理及び提供

まとめ

障害者差別解消法は、平成28年4月1日に施行されますが、その後、3年経過後に必要な見直しを行うものと定められています。

過重な負担となる場合には、それ以上の配慮をする必要はないものと定められてはいるものの、可能な限り障害者に対する配慮が必要となりますから、障害者から障壁除去の申出がある前から、どのような配慮であれば可能であるか、具体的な検討を進めておくとよいでしょう。

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