元プロ野球選手の清原和博容疑者が覚せい剤所持で逮捕され、世間をビックリさせました。今回は覚せい剤の所持や使用などに関する刑罰や、覚せい剤で逮捕された場合の対応について解説します。
覚せい剤事件は、薬物の中でも入手が容易であり、一度覚せい剤にはまったら抜け出すことが困難で、再犯率も非常に高いことから、刑事弁護の中でも、相談を受けることが非常に多い事件の一つです。
そのため、事件の類型化を進めることができ、量刑の相場には、他の事件との公平性も求められることから、覚せい剤事件の場合には、ある程度の刑の相場を予想することが可能です。そのため、「初犯であれば懲役1年6月、執行猶予3年」のように言われています。
ただし、これはあくまでも典型的なケースの場合であって、個別の事件に応じて、悪質性が高いと評価される個別事情が存在する場合などもありますので、一概には言えません。
今回は、覚せい剤で逮捕、起訴された場合の手続きの流れと、刑事責任について解説します。
刑事事件はスピーディな対応が重要です!
もし、あなたの家族、友人、親族が、刑事事件で逮捕、勾留などの身柄拘束を受けた場合には、刑事事件の得意な弁護士にすぐ相談をしましょう。刑事弁護を開始するタイミングが早ければ早いほど、身柄拘束が短期で終了し、示談成立、起訴猶予などの、有利な結果を獲得できる確率が上がります。
日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。
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覚せい剤取締法違反とは
覚せい剤取締法では、覚せい剤の所持、使用、譲渡、譲受、輸出入を禁止しており、これに違反すると刑罰が科せられます。
また、営利目的で覚せい剤を取り扱うことは違法性が大きいと考えられており、さらに重い刑罰が科せられます。
覚せい剤だと知らずに所持していた場合は犯罪が成立しません。
例えば、白い粉を「小麦粉である。」という認識で所持していた場合には、仮にそれが実は覚せい剤であったとしても、覚せい剤取締法違反の罪は成立しないこととされています。
ただし、「麻薬である。」との認識のもとに所持していた場合や、「覚せい剤を含む違法薬物である。」との認識のもとに所持していた場合には、「覚せい剤である。」という確定的な認識がなくても犯罪が成立することになります。
覚せい剤を所持、使用した場合の刑期、罰金について
営利目的の場合
1年以上の懲役となり、最長で20年です。情状によって、500万円以下の罰金刑となる可能性があります。
営利目的ではない場合
10年以下の懲役となります。初犯であれば、懲役1年6か月程度で執行猶予が3年というのが量刑相場ですが、薬物事件の前科がある場合は執行猶予がつくことはほとんどありません。
2回目、3回目の場合は、懲役2年前後の実刑となるケースが一般的です。
ただし、2回目以降の場合であっても、以前の犯行が10年以上前であるなど、前科の犯行からかなりの期間が経過している場合をはじめ、特別に刑の執行を猶予すべき事情がある場合には、執行猶予がつく可能性もあります。
覚せい剤を輸入、輸出した場合の刑期、罰金について
輸入、輸出を行った場合は、1年以上20年以下の懲役、営利目的の場合は無期若しくは3年以上20年以下の懲役又は情状により無期若しくは3年以上20年以下の懲役及び1000万円以下の罰金と定められています。
覚せい剤取締法違反で逮捕された後の流れ
逮捕
覚せい剤取締法違反の疑いがある場合、即座に逮捕されるのが通常です。これは、覚せい剤を使用している可能性があると、逃亡、証拠を隠滅するなどといった危険性が極めて高いと考えられているからです。
通常、「所持」の容疑でまず現行犯逮捕されるケースが多いです。その後、尿検査を行い、陽性反応が出ると、「使用」の容疑が加わることとなります。
尿検査に対して陽性反応が出るのは、おおむね、2週間以内に覚せい剤を使用した場合であり、最後の使用から2週間を経過すると、陽性反応は出ない場合が多いといわれています。
1回だけの使用であったとしても、陽性反応が出てしまったり、覚せい剤を隠し持っていることが職務質問や家宅捜索の結果発覚してしまえば、即座に逮捕されるケースが多いです。
検察官送致
逮捕の期間中、警察において最大で48時間身柄が拘束され後、検察庁に身柄が送られます。検察官は24時間以内に「拘束し続ける必要があるかどうか」を検討し、拘束の必要があれば、裁判所に「勾留請求」をします。
勾留決定
勾留請求をされると、裁判所に連れていかれます。ここで、勾留質問という手続きを受けます。
勾留質問において話を聞いた裁判官が「拘束し続ける必要がある」と判断した場合に勾留決定をします。勾留期間中には検察官の取調べを受けます。
覚せい剤取締法違反で逮捕されると、ほとんどの場合が勾留されるケースであるといえます。
勾留延長
勾留されてから10日間経っても、検察官が「身柄を拘束し続ける必要がある」と考えると、裁判官に勾留期間の延長を請求。裁判官も「勾留期間を延長する必要がある」と判断すると、最大で更に10日間身柄を拘束されます。つまり最大で20日の勾留期間(勾留前の逮捕による身柄拘束とあわせると23日間)となります。
なお、覚せい剤取締法違反での逮捕者の半数以上が10日以上の勾留を受けています。
起訴
勾留請求をされた日から10日経ったとき(勾留延長の場合は期間満了時)に、検察官が起訴するか不起訴をするかを判断します。
覚せい剤の使用が、尿検査の結果(陽性反応)で客観的に明らかな場合には、不起訴になる場合は少ないといえます。これに対して、譲渡、譲受の容疑の場合、「受け取ったものの中味が覚せい剤であるとは全く知らなかった」という言い分が認められて不起訴となるケースもよくあります。
起訴をされなければ、前科として記録されないため、まずは不起訴を獲得することを目標とすることになります。
公判
起訴された場合には、裁判手続きを受けます。有罪判決になれば刑を科されます。
執行猶予がついた場合には、定められた期間、犯罪行為を行わずに過ごせば、刑の執行は免除されます。ただし、執行猶予期間中に別の犯罪行為を行ってしまえば、執行猶予は取り消され、その分の刑期も合計した刑の執行を受けることとなります。特に、交通事故などは犯罪行為を行っているという意図がなくても犯罪行為となってしまう可能性もあるため、十分に注意が必要です。
覚せい剤事件で保釈になる場合とは
身柄が無事釈放される方法として、①不起訴を勝ち取ること、②保釈を勝ち取ること、③執行猶予を勝ち取ること、という3つの方法があります。
ここでは、保釈について解説します。
まず、起訴前の捜査段階では保釈は認められません。あくまでも、保釈は起訴後に請求をすることができるものです。
具体的には、検察官が起訴した後、弁護士などが裁判官に対して保釈を請求します。
保釈請求ができるのは、勾留されている被告人、その弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹になります。
保釈請求時のポイント
以下の事情が認められる場合には、保釈請求をして保釈を勝ち取ることができる可能性が高いといえます。
覚せい剤事件は、被害者がいるわけではなく、証拠も尿検査などの検査結果によって客観的に明らかですから、積極的に保釈請求を行っていくべきでしょう。ただし、円滑に保釈を受けるためには、暴力団などの組織犯罪ではないことを十分に立証していく必要があります。
☛ 裁判になった場合、相場として執行猶予が認められる事情がある
☛ 証拠隠滅の危険性がない
☛ 家族のサポート(監督するなど)がある
☛ 社会復帰への努力や定職につける見込みがある
☛ 身元引受人の存在が保釈の条件である
保釈の流れ
保釈請求の1~2日後、裁判官は保釈について検察官の意見を聞きます。
その1~2日後、裁判官は被告人と面接し、保釈を許可するかどうか検討し、結果はその日のうちに出します。保釈が許可された場合は、保釈金を裁判所へ納付し、検察官の釈放手続きを経て、1~2時間で施設から出ることができます。
保釈金の相場
営業目的以外の覚せい剤所持・利用の場合、150万程度で、裁判が終わると返還されます。なお保釈金が用立て出来ない場合は、日本保釈支援協会などで立て替えてもらうことが出来ます。
薬物犯罪では保釈は重要
保釈後は、裁判所に呼ばれて出頭する以外の日常生活を自由にすごすことができます。
この時間を公判の準備にあてることができます。例えば、親の監督下で生活できるように引っ越したり、再犯防止の支援団体のサポートを受けたりすることができます。
こういった覚せい剤との縁を断ち切る積極的な行動は、執行猶予を得る上で重要なポイントとなります。
まとめ
覚せい剤や大麻の利用での逮捕では、鑑定に時間がかかることから、身柄拘束期間が長くなりやすい傾向にあります。
また常習性、依存性の高い犯罪ですから、保釈には本人の深い反省はもとより、家族などのサポート体制が重要になってきます。
覚せい剤事件において①不起訴、②保釈、③執行猶予といった有利な結果を勝ち取るために、この記事を参考にしてみてください。
刑事事件はスピーディな対応が重要です!
刑事弁護は、できる限り早期に依頼することによって、有利な解決を獲得する可能性が高まります。
家族が逮捕され、お悩みの方は、早急に弁護士までご連絡ください。
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