企業にとって、年度末は解雇シーズンといわれるほど、年度末の解雇は多いと言われています。
弁護士にとっても、2月から5月頃にかけては、解雇、雇止め、リストラなどの相談が非常に集中します。
今回は、今年度1年の成績が振るわなかったり、今年度大きな失敗をしたりして注意指導、懲戒処分を受けてしまった方へ、年度末解雇を避けるための解説をします。
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このページの目次
なぜ年度末が解雇シーズンなのか
年度末が解雇シーズンとなっている理由は、以下の2点でしょう。
☞ 新入社員が入社するため、解雇しても人員不足にならない
☞ 新年度のスタートに心機一転できる
☞ 契約期間の定めがある場合、ちょうど切れ目である
年度末によくある解雇相談
以下では、よくある年度末の解雇相談事例を、相談者からの声を集計した形でまとめました。
すべての相談について、弁護士からの回答は次のとおりです。
日本では、解雇が許される場合というのは制限的に考えられており、①合理的な理由、②客観的相当性、という2つの要件を満たさない限り、その解雇は違法無効です。
解雇が無効となれば、会社に戻ることができ、それまでの賃金を請求することができますし、会社が話し合いに応じれば、解決金をもらって退職をすることもできます。
契約期間がちょうど切れ目
今回、「今日から来なくても年度末までの給料は支払うから、退職してくれないか」といわれて退職勧奨を受け、「退職してくれないのであれば、解雇となる」と社長から通告されました。
これは不当解雇なのではないでしょうか。
期間の定めのある契約社員であったとしても、契約の更新が複数回になり、契約期間が長い場合や、契約の更新を約束されている場合には、期間の定めのない正社員の解雇と同様、合理的なものでなければなりません。
年度末の区切りだからという理由だけで解雇できるわけではありません。
新卒なのに今年度の清算といわれて解雇
年度末に呼び出され、「今年はミスが多く、注意も何度も行ったが直らない。今年度のことは今年度中に清算したい」といわれ、解雇を通告されました。
これは不当解雇なのではないでしょうか。
注意指導、改善の区切りが年度ごとにあるわけではありません。
確かに、会社の評価の区切りが年度ごとのことはありますが、これだけの理由で解雇できるわけではありません。ましてや、今年度に入社した新入社員の場合には、1年の成績だけを見て解雇するべきではなく、教育・注意を繰り返しながら、もうしばらく様子を見るべきでしょう。
来年度の設備投資のため、コストカットで解雇
年度末のある日、社長に突然呼び出され、新規事業を始めるために費用が必要なので、人件費を減らさなければならず、コストカットのために退職してほしいと言われ、解雇を通告されました。
これは不当解雇なのではないでしょうか。
人件費の節約を理由に、年度ごとの予算などの理由で、年度末に解雇をすることは、不当解雇の可能性が非常に高いです。
しかも、新しい事業を計画しているということは、資金的に余裕があり、人員の増強も必要なのではないでしょうか。
逆に、会社の経営が非常に悪化しており、業務を縮小し、人件費カットのために解雇が必要だという場合には受け入れざるを得ないケースもあります(「整理解雇」といいます)。
追い出し部屋の一掃で解雇
年度末でこの部門はなくなり、所属する社員は全員解雇となります。
これは不当解雇なのではないでしょうか。
「追い出し部屋問題」といわれる問題は、根強く残っています。
部署の閉鎖を年度末に行うことはよくあることでしょうが、正社員として採用している以上は、「追い出し部屋」限定で採用されたわけではなく、部署を閉鎖する場合には、解雇ではなく他部署への異動を検討するのが適切な対応です。
したがって、年度末を理由に「追い出し部屋」の社員を一斉解雇したいだけと考えられますので、違法無効な不当解雇であると考えられるでしょう。
年度末に不当解雇されそうなときは?
年度末を理由に不当解雇されそうなとき、まずは「自主退職」であるといわれないように、退職、解雇にはすべて異議、不服を伝えること、誘導には乗らないことが重要です。
一旦自主退職となってしまうと、後から覆すことは困難です。
その上で、解雇といわれた場合には、解雇の理由を書面で示してもらうようにし、できれば録音をするなどの証拠化をしておきましょう。その上で、労働問題に強い弁護士に相談をするべきです。
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