【書式付き!】業務委託契約の作成で気をつけるポイント


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業務委託契約書を開業初期に目にすることが多いのではないでしょうか。業務委託契約書は、独立し、起業を志すときには、一番最初に重要視しなければならない契約書であるといえます。

独立する際には、マンパワーを十分に揃えるだけの経済的な余力がないことがほとんどであることから、スポット的に必要なサービスや、人を雇用してまで行う程ではない作業などは、業務委託契約を締結して外注することとなります。

しかしながら、業務委託契約書を、相手方に提示され、説明されるがままに署名してしまっているケースが多いかもしれませんが、きちんとした業務委託契約書を作成しておくことで、「お金を払ってもらえない」とか「お金をきちんと支払っているのに納得行いく業務をやってもらえない」といったトラブルを未然に防ぐことができます。

では、どのような流れで作成していき、どんなことに注意すればいいのか、業務委託契約書の書式を示しながら、そのポイントを解説していきます。

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業務委託契約書とは?

「業務委託契約書」とは、外部の業者に対して、業務の一部を委託(アウトソーシング)する際に締結するべき契約書をいいます。

法律上の用語でいえば「請負」「委任」「準委任」といったものにあたりますが、「業務委託」自体が法律に定められているわけではありません。
したがって、契約書の名前が「業務委託契約書」であったとしても、その内容によって、法律的にどのような規定が適用される契約であるかは、個別の契約書ごとに判断していかなければなりません。

業務委託契約書作成の流れ

業務委託契約書を作成、締結する際の一般的な流れは、以下の通りです。
自社が、業務を委託する側(委託側)であるのか、業務を受託する側(受託側)であるのか、また、両社の力関係などによって、作成の流れは変わってきますので、できる限り有利な条件になるような交渉を考えましょう。

契約の内容について委託先と交渉する

まずは当事者間で契約の内容について交渉します。契約内容について決めておかなければならないポイントは次のとおりです。

1.業務委託契約によって行うべき業務の内容
  委託側と受託側で認識のズレが生じやすい部分なので、明確化しましょう。

2.業務委託に対して支払う報酬の金額、または、算定方法

3.契約期間

4.受託者の報告義務
  どのような事態になったときに、どのような方法で報告するかを具体的に定めておくと、
  より効果的です。

5.業務委託の終了に関する事項
  製品の納入の仕方、製品に瑕疵があった場合にどのように対応するかを具体的に定めておく
  と、より効果的です。

6.業務委託契約中に付随して発生する権利の処理
  所有権の移転、著作権、特許権、商標権等の知的財産権について、委託側、受託側のいずれに
  属するのかを定めておくと、紛争が回避できます。

7.受託者が業務を第三者に任せる(再委託)できるかどうか。
  再委託できると定めた場合には、その際に再委託された第三者がどのような義務を負うか、
  許可がいるかどうかも定めておくとよいでしょう。

8.契約を解約できる事由、解約できるとした場合、その方法
  継続的な契約について、民法上解約できるのは、債務不履行があった場合のみですが、
  それ以外に解約したい場合には、契約に定める必要があります。

業務委託契約書面の作成

業務委託契約書に定めておくべき上記の内容について合意がまとまったら、その内容をもとに契約書の作成作業に入ります。
このとき、「どちらが契約書を作りますか?」という話になるかと思いますが、結論からいうと有利な契約にするためには、できる限りこちら側で作成することが賢明です。

相手方にて契約書面の確認と修正

作成した契約書の内容に問題がないか、相手方に確認してもらいます。
もし、この段階で相手方に修正を求められた場合には、修正を求められた部分について、もう一度相手方と話し合い、契約書の内容を確定させます。

作成した業務委託書を製本

契約書は2通作成し、2通ともに両当事者が署名(または記名)押印をし、割印を押した上で、収入印紙を貼ります。

契約書は1通でも大丈夫ですが、トラブルが起きた時のために当事者双方が持っていた方が内容がすぐに確認でき、争いが少なくなりますので賢明です。2通作っておくことで「勝手に加筆修正される」というリスクを回避することもできます。また、印紙代を節約する方法として、一方が原本を保管し、もう一方がコピーを保管するという方法もあります。

契約書には、割印、契印を忘れず押すようにしましょう。

割印 : 契約書を2通作成して当事者双方が保管する場合に、その2通の内容が同じものであることを確認するために、2通の契約書にまたがって押す印のことです。
契印 : 契約書が2ページ以上になるときに、その文書が一連一体のものであることを示すために、各ページのつなぎ目に押す印のことです。

業務委託契約書にはいくらの収入印紙を貼る?

業務委託契約書には4000円の収入印紙が必要です。貼るのは2通のうち1通のみで大丈夫です。なぜならもう一通は相手方が用意すべきだからです。

請負の場合には、金額によって印紙代が変わります。委任の場合には非課税文書となります。業務委託基本契約書という、継続的契約の基本となる契約書の場合には4000円の印紙代となります。

業務委託契約書の作り方

次に、業務委託契約書について、その内容をどのようにしたらよいか、条文ごとに解説していきます。
業務委託契約書の書式(雛形)をご用意しましたので、こちらのものを参考にしながら作成してみてください。

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ごく一般的な内容であり、個別のケースに応じて、適宜修正が必要となりますので、ご注意ください。

契約書名の記載

最初に契約書名を書きまます。「業務委託契約書」と書いておけば十分ですが、その契約書で定める業務の内容をわかりやすくし、「〇〇における業務委託契約書」と書いておくと、取引先の把握や、保管データの検索、業務引き継ぎなどの際に内容がわかりやすくなり、非常に便利です。

契約の当事者の記載

次に契約の当事者の正確な名称(住所、会社名、役職名、氏名)を書いて、その当事者間で契約を締結したという事実を記載します。
ここまでの部分が、前文にあたります。

委託業務の内容

受託者が行う委託業務の内容をできるだけ細かく書いていきます。
どのような業務を内容とするかについて、事前に予想できる範囲で細かく記載しておいた方が、あとで「このような業務は約束になかった」、「この業務もやってもらうはずだった」といった紛争を防ぐことができます。

たとえば、受託者が、すでに委託業務のすべてを終了したと考えて報酬を請求したとしても、その際には「どのような業務を委託されたかという合意内容」と、「その委託業務をすべて終了したこと」を立証することが必要であり、そのためには、委託業務の内容が契約書において具体的に明記されていなければ、報酬の請求が困難となるケースすらあります。

細かな業務が多く存在してすべてを列挙できない場合には「本件業務に付随する一切の業務」としたり、契約の締結後にあらたに委託する業務が増えることが想定される場合には「両当事者が別途合意した業務」と記載するといった工夫も考えられます。

委託業務の遂行方法

受託者が善管注意義務を負うことを記載します。
業務委託契約が、法律上の「請負」「委任」にあたる場合には、民法で善管注意義務を負うことが明らかですが、念のため、注意として記載しておくと受託者の仕事が丁寧になるでしょう。

善管注意義務というのが、どの程度の厳しい義務となるのかは、受託者の能力、知識、経験、社会的地位などによって変わってきます。

業務委託に伴う費用

委託者から受託者に支払う業務委託料などの名目の費用について、その額、または、算出方法、支払日、支払方法などの詳細を記載します。

契約期間、契約終了時の更新の有無

まずは、契約開始日と契約終了日、契約期間を記載します。
もし契約終了のあとで契約を更新するつもりであれば、どのような場合に契約を更新できるか、そして、更新後の契約の条件を記載します。

再委託の制限

話し合いで「受託者はその業務を第三者に任せてはいけない」となった場合には再委託を制限する旨の条項を設けましょう。
再委託を想定している場合には、再委託に事前の許可が必要かどうか、そして、再委託された第三者の負うべき義務についても記載します。

知的財産権の帰属

業務遂行の過程で、特許権、著作権、商標権などの知的財産権が発生するような場合、これを委託側、受託側のいずれに帰属させるかを記載します。

受託者の報告義務

契約期間がある程度の期間となると、その途中で、委託者が受託者に対して、業務の進捗状況を報告させたいということが出てくるでしょう。
したがって、委託者は受託者に現在の業務の状況を報告する義務を負うことを記載しておきます。

通知義務

業務遂行にあたり共有すべき重要な情報を相手方に通知する義務を記載しておきます。

秘密保持義務(NDA)

委託者が、自身の業務の一部を受託者に委託(アウトソーシング)する場合など、委託者の機密情報を開示しなければ業務を委託できないことが多いといえます。
したがって、機密を開示した委託者が思わぬ損失を受けないように、受託者が業務上知り得た秘密を第三者に漏らさない義務を負うことを記載します。

秘密保持義務の条項は、受託者が一方的に義務を負うことと定められている場合が多いですが、受託者が委託者に業務上の秘密を明かす必要がある場合も考えられるので、委託者にも秘密保持義務を負わせる内容のものもあります。

秘密保持義務について、更に細かく定めておきたいような重要な取引の場合には、別途、秘密保持契約書(NDA)を締結して万全を期すことも考えるべきです。

損害賠償義務

委託者と受託者が、それぞれ契約に違反して相手に損害を与えた場合に、損害賠償の義務を負うことを記載します。

遅延損害金を支払う義務

委託者が業務委託料の支払いを遅れた場合に、合意によって定めた利率での遅延損害金を支払う義務を記載しておきます。
ただし、利息制限法を超える利率を定めた場合には、その超過部分については無効となります。

契約の解除

委託者と受託者が契約に違反した場合や、信頼関係を破壊する行為があった場合に双方が契約を解除できる旨を記載します。

ある程度の期間継続する契約であって、契約の一方的な解除が相手方に損害を与えるといった場合には、契約解除の一定期間前に、事前に通知することを義務付けることもあります。

契約終了後の処理

契約終了後に、受託者がどのような処理をすべきかについて記載します。
たとえば、契約期間が終了したときに、制作中の製品がある場合に、その納品処理について記載しておくことが考えられます。

また、引継ぎや、預かっていた機密資料の取扱いなどについて定める例もあります。

裁判管轄

もし、裁判になった場合にどこの裁判所で訴訟を行うかを記載します。

協議

契約書に書いていない事項について争いとなった場合、もしくは、契約書の文言の解釈が争いとなった場合に、まずは話し合いで円満に解決することを記載します。

有利な業務委託契約を結ぶために

契約書を作成するのはトラブルを未然に防ぐためにあります。
さらにいえば、契約書を作る本当の目的は、契約内容などを証拠に残しておくことによって、万が一紛争となったときに自身に有利な武器となるような材料を用意することにあります。

委託する側に有利な業務委託契約書を作成するポイント

☛ 秘密保持義務や報告義務は必ず明記しておく
☛ 業務の過程で発生した知的財産について権利を自身に帰属させるよう主張する

受託する側に有利な業務委託契約書を作成するポイント

☛ 本来業務範囲外であるものまで義務を負うことがないようにする
☛ 委託業務は細かく明確に記載する
☛ 業務遂行に伴う費用は委託者側に負担させる
☛ 業務委託料の支払いが滞らないよう、遅延損害金に関する条項を明記

業務委託契約書のトラブル事例

業務委託契約は、法律にそのものの定義がないため、契約の内容は当事者の合意によって自由に決めることができ、ケースごとに柔軟な定めができるため使い勝手が良いという利点があります。
しかしながら、契約内容の法律的な理解が浅いことから、一方に不利であることに気付かずまま締結してしまうケースや、他の法律に抵触しているケースなど、トラブルがおこりやすいのも事実です。

そこで、業務委託契約で問題になりやすいケースを見ていきます。

偽装請負問題

受託者が委託企業に出向いて委託業務を行っている場合に、その業務指示を委託側の企業が行うといった場合、実質的には派遣という状態となり、違法(偽装請負)となる可能性があります。

二重派遣問題

派遣契約は、派遣元の会社の社員である派遣労働者を、派遣先の指揮命令のもとに働かせるものですが、派遣されている社員を別のところに派遣すると二重派遣となり違法となります。

下請法

親事業者の一方的な都合により、受領拒否や、下請代金の支払い遅延、下請代金の減額、不当返品、買いたたき、購入強制、報復行為を行うと、違法(下請法違反)となります。

独占禁止法

販売委託契約において、仕入れの対価を払っているにもかかわらず、委託側が売価を決め、それを一方的に受容させると、違法(独占禁止法違反)となります。

まとめ

業務委託契約を結ぶことで、トラブルが未然に防げるだけでなく、委託業務の細かい定義ができます。したがって、業務委託契約を作成するために契約条件を話し合う過程で、委託者と受託者の協力関係が密になり、より良い仕事ができるようになります。
また、委託者、受託者それぞれの立場からの有利な条項を出し合うことによって、雛形をそのまま使うのではなく、より良い契約書ができるでしょう。

当事者同士で話しあった後は、自社のビジネスモデルをきちんと理解した専門家もしくは弁護士に一度診てもらうことをお勧めします。

自分も気持ちよく委託し、受託者も気持ちよく受託できる関係がプロジェクトの成功に一番大事です。

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