暴行罪とは、人の身体に対する有形力の行使という行為(暴行行為)を処罰する犯罪類型です。
「人を殴った」というケースが典型的です。
このような場合、「人を殴ったこと」の証拠を入手することは、事後的には困難であることが多く、被害者供述、被疑者の自白によって捜査が進められる場合が多いため、えん罪を招きやすい犯罪類型です。
「叩いた。」「殴った。」というのは、人の感覚次第という場合もありますが、どの程度強く触れたのか、もしくは、触れていないのかは、録画などの客観的証拠でもない限り、再現は困難です。
大きなけがとなれば「傷害罪」となりますから、この場合は、事後的にケガの診断書をとるなどの方法によって、どの程度の強度であったかは、ある程度立証ができますが、「暴行罪」の場合にはこれも困難です。
暴行罪で証拠が乏しいという場合に、逮捕、起訴される可能性があるのか、そして、逮捕、起訴された場合に、その後の示談などの方針について解説していきます。
刑事事件はスピーディな対応が重要です!
もし、あなたの家族、友人、親族が、刑事事件で逮捕、勾留などの身柄拘束を受けた場合には、刑事事件の得意な弁護士にすぐ相談をしましょう。刑事弁護を開始するタイミングが早ければ早いほど、身柄拘束が短期で終了し、示談成立、起訴猶予などの、有利な結果を獲得できる確率が上がります。
日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。
このページの目次
ケガがなくても暴行罪となることに注意
暴行罪は、人に対して有形力を行使したことを処罰する犯罪です。
有形力を行使した結果、被害者が一定程度以上のケガを負えば傷害罪と認定されますが、ケガを負わなかった場合や、すぐに治る程度のケガであった場合には暴行罪となります。
例えば、被害者の損害があまり大きくなくても、暴行罪と認定される場合があります。
☛ 軽く叩いたが、医者にもいかない程度であった
したがって、あまりケガを負わせていないので大丈夫だ、と考えるのは危険です。
被害者に触れていなくても暴行罪となることに注意
人に対して有形力を行使したという典型的なケースは「人を殴った」というケースですが、実際に暴行罪として逮捕されるケースは、これだけに限りません。
例えば、被害者に指一本ふれていなくても、暴行罪と認定される場合があります。
☛ 狭い空間で密着した状況で、ゴルフクラブで素振りをしたが、実際には接触しなかった
したがって、被害者に触れたことはないとしても、暴行罪が成立する可能性があるため、否認をする際には注意が必要です。
暴行罪の物的証拠があるか?
暴行罪の物的証拠には、次のようなものがあります。
☛ 被害部位の写真
☛ 防犯カメラの映像
☛ 被害当時の録音
☛ 暴行に使用された凶器
ただ、すでに説明の通り、診断書に記載されるほどのケガが残らなかったとしても暴行罪は成立する可能性があります。また、暴行罪は突発的に起きることが多いため、録音・録画などが準備されていることはほとんどありません。
したがって、暴行罪の場合には、物的証拠の収集が困難であり、その結果、証拠が不十分であるとして、釈放、不起訴といった有利な結果を勝ち取れるケースがあります。
暴行罪の人的証拠があるか?
暴行罪の人的証拠には、次のようなものがあります。
☛ 被害状況を目撃した第三者の証言
物的証拠がなかったとしても、被害者の証言と整合する証言が複数あるのであれば、これらは相互に補完して信用するに足るものであるとして、人的証拠のみであっても暴行罪として有罪とされる可能性があります。
犯罪を立証するのは捜査機関側
以上の証拠によって、裁判所によって暴行罪で有罪であると判断できる程度に立証をする必要があります。
暴行罪を立証する責任は、捜査機関にあり、被疑者、被告人側で無罪であることを立証する必要があるわけではありません。
認めて示談するのか、否認するのか
当事者の認識が異なっている場合に、被疑者、被告人の立場として、認めて示談をするのか、否認して争うのは、いずれの方針がよいのでしょうか。
当事者の認識が異なる場合、暴行の程度が軽度であったり、証拠が不十分であったりといった場合には、逮捕、起訴とはならず、警察が任意同行によって事情聴取をし、その結果口頭の注意で終了というケースもあります。
ただ、次のように当事者の認識が食い違った結果、逮捕、起訴などといった手続きに進む場合には、今後の方針は慎重に検討すべきでしょう。
☛ 殴った記憶はおろか、触れようとしたこともない
このように、客観的に見ても明らかに暴行罪に該当しないときであっても、暴行罪の証拠が人的証拠しかない場合には、警察は、被害者の証言を、まずは第一次的な証拠として検討します。
その結果、被害者に虚偽の証言をする動機がとぼしく、証言に具体性、迫真性が備わっている場合には、これを信用に足るものと判断して、逮捕の手続きに進むおそれがあります。この場合には、暴行態様が異なるなどと反論して否認をするのであれば、警察からの厳しい追及に対応していかなければなりません。
ただ、被害者の証言のみで暴行罪の有罪とすることは困難でしょうから、その他の証拠がどの程度収集されているかによって、今後の方針を検討するのがよいでしょう。
次のような場合には、裁判で有罪となる可能性もありますので、早めに示談をして謝罪することが合理的な選択肢となることもあります。
☛ 被害者の証言と整合する目撃者の証言が存在する
被害者証言の信用性が高いと判断される場合、警察、検察の捜査は、被害者の証言にしたがって犯罪行為を認定しようとし、被疑者、被告人にとって誘導的なものとなるケースもあります。
まとめ
捜査機関は、有罪とする証拠を集めるために捜査を行っているのであって、被疑者、被告人の反論を証拠に残す作業をしてくれない場合がほとんどですから、犯罪行為に関する認識が食い違い、捜査機関の誘導によるえん罪が予想される場合には、早期の弁護士への依頼が必要でしょう。
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日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。