請負か?委任か?システム開発・IT企業必見!


システム開発

業務委託契約書を締結して、委任契約(準委任契約)でシステム開発を行っていたと考えていたところ、納品後にユーザーから、請負契約であって、バグがあるから料金を支払うことはできないと言われたという相談について、解説していきます。

システム開発以外でも、誰かに業務の一部を頼むときには、その頼み方によって責任が変わってくるということですので、他業種の方も注意が必要です。

業務委託契約の性質については内容によってさまざまであり、契約書のタイトルをどのようにしたとしても、法律的には「委任」「準委任」「請負」その他の非典型契約などさまざまな性質に解釈されます。

業務委託契約書の書き方、注意すべきポイントについてはこちらの記事を参考にしてください。

(参考)【書式付き!】業務委託契約の作成で気をつけるポイント

企業法務は顧問弁護士におまかせ!

顧問弁護士は、企業に日常的に起こる法律相談、契約書のチェック、労働者とのトラブルなどについて、経営者の味方となって戦うパートナーです。

適切な月額料金で、他の事務所より顧問弁護士を活用する方法について、企業法務の豊富な知識・経験を有する弁護士が、丁寧に解説します。

相談内容:システム開発契約は準委任契約か?請負契約か?

ご相談者
当社では「業務委託契約書」という題名の契約書を締結して、ユーザーからシステム開発を受託していました。

依頼されたシステムが完成したので納品をしたところ、後日バグが見つかったとのことで、修復しない限り費用を支払うことはできないとのことでした。

当社としては、依頼された内容のシステムを作って納品したのですから、費用を支払ってほしいと考えているのですが、弁護士さんに依頼したら請求することができるのでしょうか。

弁護士の回答

弁護士
業務委託契約の性質はさまざまで、その内容によって「準委任」「請負」のいずれかと法律上評価されることが多いでしょう。

請負と評価された場合には、仕事を完成させることが報酬支払の条件となります(この際、「検収」の合格が「完成」の条件となっていることが一般的でしょう)。

したがって、「完成」していない場合には報酬を請求することができませんから、バグがある場合でも「完成」といえるかが問題となるケースです。
また、「完成」していると判断された場合であっても、請負の場合には瑕疵修補義務がありますので、この責任を負うかどうかが問題になります。

請負契約と準委任契約の違い

契約内容が法律的にどのような性質を持つかは、契約書のタイトルによって決まるわけではなく、内容や、事前事後の交渉状況、実際の契約実施状況などを考慮して実質的に判断します。

ちなみに「業務委託」というのは法律に定められた言葉ではありませんので、「業務委託」がどのような法的性質を持つかによって、責任の程度が変わってくるということになります。

請負契約とは?

請負契約とは、請負人が仕事を完成し、注文者がそれに対して報酬を支払うことを内容とする契約です。
依頼された仕事を完成することに注目して締結する契約で、その性質として、請負人は仕事を完成しなければならず、完成した後でないと報酬を請求できません。

また解約が制限され、瑕疵担保責任を負うなど、請負の方が準委任よりも一般的には厳しいとされております。

逆にいうと、欠陥のない完璧なものが納品されれば、途中の仕事の過程は問わないということとなります。

請負(民法632条)
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる

準委任契約とは?

委任契約とは、委任者が受任者に対して、一定の事務を委託することを内容とする契約です。この委任契約の中で、法律行為以外の事務を委託する委任契約を、準委任契約といいます。システムを開発する行為は法律行為ではありませんので、準委任契約となります。

準委任契約の場合、仕事の完成ではなく事務を処理することに注目して締結する契約ですので、その性質として善管注意義務(委任の趣旨にもとづいてきちんと事務を処理する義務)を負いますが、仕事を完成させることは必須ではありません。

善管注意義務は、受任した者の職業、能力、経験、役割、業務の内容などによってどの程度厳しいものかを判断しますので、完成しなくてもよいからといって手抜きでよいわけではありません。

委任(民法643条
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

細かな違いは、次の表のとおりです。

請負 委任
報酬の請求 仕事の完成後 事務の処理後
中途解約 注文者は損害賠償の上いつでも可能 両当事者は損害賠償の上いつでも可能
再委託 可能 原則として不可能
義務 完成義務・瑕疵担保責任 善管注意義務
印紙税 収入印紙が必要(課税文書) 収入印紙は不要(非課税文書)

非典型契約とは?

業務委託契約の内容によっては、請負、委任のどちらかに明確に分けることができず、契約内容によって双方の性質をあわせもった契約という評価がされることもあります。この場合、そのような契約内容は民法に定められていません(これを「非典型契約」といいます)。

請負による納品物にバグがあった場合は?

どうやってバグを見つけるか

請負の報酬の支払は、仕事の完成をした後であり、完成した品の引渡しと同時というように定められています。

この際の引渡しのときに、「検収」という作業が行われることが契約で定められていることが多いです。これは、注文者が、請負人の完成させた品について、契約どおりのものであるかどうかを検査し、合格の場合に引き取るという手続きです。

この場合、無用なトラブルが生じないように、検査に合格する基準を詳細に決めておいたり、わざと検査を行わないような不誠実な対応をされた場合にどのようにするか(一定期間の経過をもって合格したものとすることが一般的です)などといった点にも配慮して契約をするとトラブルが少ないでしょう。

バグがあっても完成したといえるのか

では、検査の結果バグが判明した場合には、完成したものとして瑕疵担保責任(バグをなおさなければならない責任)を負うのか、それとも、未完成のものとして報酬を請求することすらできないのか、のいずれかが問題となります。

この問題については、裁判例は以下のようにいって、完成はしていると判断して報酬請求をすることはでき、あとは瑕疵修補の問題であると判断するようです。


請負人が仕事を完成させたか否かについては、仕事が当初の請負契約で予定していた最後の高低まで終えているか否かを基準として判断すべきであり、注文者は、請負人が仕事の最後の工程まで終え目的物を引き渡したときには、単に仕事の目的物に瑕疵があるというだけの理由で請負代金の支払を拒むことはできない

バグを修補しなければならない義務とは

完成したと判断されて報酬を請求できるとしても、バグの修補は行わなければなりません。

修補の義務が生じる「瑕疵」とは、「通常有すべき品質を欠いているもの」と一般的には言われており、どの程度のバグであれば瑕疵にあたるのかを慎重に判断するべきでしょう。

その際には、業界の慣習や、製品の性質、欠陥の程度などを参考にしましょう。

瑕疵担保責任の時効は、原則として引渡から1年とされていますが、この期間は契約によって変更することができます。

まとめ

今回はIT企業のシステム開発委託契約のご相談について、その性質を考えてきましたが、このことはどの業界にもあてはまるものです。

業務の一部を他社に業務委託している方は、その性質をよく考えてみてください。

企業法務は顧問弁護士におまかせ!

顧問弁護士は、企業に日常的に起こる法律相談、契約書のチェック、労働者とのトラブルなどについて、経営者の味方となって戦うパートナーです。

適切な月額料金で、他の事務所より顧問弁護士を活用する方法について、企業法務の豊富な知識・経験を有する弁護士が、丁寧に解説します。


関連記事を見る

関連記事がありません。