相続で,さまざまな理由で孫にも遺産を相続させたいと考えている方は多いと思います。
遺産相続の際に,遺産を相続できる順番には法律上の定めがあり,この定めによれば,孫が法律上相続ができるのは,その親である子どもが相続の時点で亡くなっていた場合に限られます。
しかしながら,孫に遺産を相続させるためには,さまざまな方法があります。
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このページの目次
孫には法定相続分がない
法律上,相続ができる人を相続人,法律で定められた相続人の相続割合を「相続分」といいます。
この相続人の相続分には,法律上の順番があり,配偶者に加えて(配偶者は常に相続人となります),以下の順序によって相続することとなっています。
1.被相続人の子ども(相続時に死亡している場合には孫)
2.被相続人の親
3.品相続人の兄弟姉妹
したがって,通常であれば,孫は直接の相続人とはならず,孫に対して遺産を残すことはできません。
孫に遺産を相続させることができる場合1;【代襲相続】
相続人である子どもが相続の時点で既に亡くなっている場合に,その子どもである孫が相続することができます。
このように,本来相続するはずであった人が,あなたよりも先に亡くなっていた場合に,その子どもが代わりに相続をすることを「代襲相続」といい,この場合には孫が相続人となることが可能です。
その他,相続人に欠格事由があったときや,相続人の廃除があったときにも,代襲相続が起こり,孫が相続人となることができるケースがあります。
代襲相続による方法のメリット
特別な手続きや準備が全く不要
代襲相続の場合には,孫に対して遺産を相続させるために,特別な手続きや準備は全く不要となります。
代襲相続による方法のデメリット
法定相続分での遺産分割になる
代襲相続の場合には,亡くなった子どもの子ども(孫)に対して,代わりに相続をさせるというだけですので,「どのような比率で遺産を残すか」を,自由に決定することができず,原則として法定相続分に従った遺産分割となります。
特定の孫に対して遺産を相続させることができない
例えば,ある特定の孫に対して遺産を相続させようとしても,その孫の親である子どもが亡くなっていない場合には,代襲相続による方法は利用できません。亡くなっていない子どもの子ども(孫)に対しては,代襲相続の方法によって遺産を相続させることはできません。
孫に遺産を相続させることができる場合2:【養子縁組】
孫には直接の相続ができないため,相続人とはなりませんが,孫と養子縁組をすることで,孫はあなたの孫であると同時にあなたの子どもであるとみなされるため孫に対する直接の相続を行うことができます。
養子縁組は,家庭裁判所に対して「養子縁組許可申立書」を提出し,許可が下りたあと10日以内に,市区町村役場に対して「養子縁組届」を提出することによって成立します。
孫が15歳以上であれば本人の意思のみで養子縁組を結ぶことができますし,15歳未満の場合には,両親などの法定代理人が,本人に代理して承諾をすることとなります。
養子縁組による方法のメリット
特定の孫に遺産相続させることができる
あなたが特定の孫にだけ遺産を相続させたいと考えたとき,その孫だけと養子縁組を結ぶことによって,その他の孫には遺産を相続させず,特定の孫にだけ遺産を相続させることが可能となります。
養子縁組による方法のデメリット
心理的な抵抗がある
今まで「おじいちゃん(おばあちゃん)」だった人が,戸籍上のみとはいえ「お父さん(お母さん)」になるということに,子どもが心理的な抵抗を示す可能性があります。養子縁組の便宜のためとはいえ,友達と違う自分の家庭の事情に戸惑いを感じるかもしれません。
相続分に従った相続となる
孫を養子縁組した場合には,孫を子どもとみなして,相続分に従った遺産相続をすることとなります。相続分を変更するためには,遺言などの方法が別途必要となります。
相続トラブルの火種となりやすい
節税などの目的からすべての孫を養子縁組するという場合でない限り,ある特定の孫にだけ相続分を増やす結果となりがちのため,遺産を相続できなかった孫や,その親である子どもからの反発を招きやすく,相続トラブルの火種となりやすいというデメリットがあります。
孫に遺産を相続させることができる場合3:【遺言書】
「どの財産を孫に相続させるか」「どのような比率で相続をさせるか」「どの孫に何を相続させるか」といった点について,意思を尊重して遺産を相続させることができるというメリットが遺言書にはあります。
遺言書による方法のメリット
特定の孫に対して相続の比率を変更することができる
「特定の孫に対してだけ相続をさせたい」「特定の孫に対してだけ多くの遺産を相続させたい」といったあなたの自由な意思を,遺留分を侵害しない限りにおいて尊重することができます。一番自由度の高い方法であるといえます。
付言や,他の遺産とのバランスで相続トラブルを起こしにくい
遺言による方法の場合,他の孫には別の遺産を与えて全体としてバランスをとったり,そのような遺言を残した理由を付言として語ることによって,相続トラブルの原因とならないように配慮をすることが可能です。
遺言書による方法のデメリット
法的要件を満たさず遺言が無効となる可能性がある
法律に従った形式で書かなければ遺言書が無効になってしまうなど,書き方によっては相続人間のトラブルの種になります。
遺言署には,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言がありますが,後から無効となりづらい公正証書遺言によることをオススメしています。
遺言書についてはこちらの記事を参考にしてください。
(参考)遺言の作成ポイントが5分でわかる!遺言書の作り方
孫への相続でトラブルとならないためには?
孫へ遺産を相続させた際にトラブルをなるべく防止したければ,孫以外に相続人となる可能性のある人たちに対して,事前に,孫に相続する旨,どの財産を相続させるか,そして,なぜ孫に相続させる必要があるのかという理由について,説明しておくのがよいでしょう。
自分の全く知らないところで遺言書が作成されているなどして,孫に遺産が相続されたことによって自分の取り分が減っていたことが後で判明した場合,気分の良いものではなく,トラブルの原因となりかねません。
まとめ
今回は,孫へ遺産を相続したい場合の3つの方法について解説しましたが,これ以外にも,生前贈与をするという方法もあります。
事前に準備しておけば,相続税対策となったり,相続トラブルを未然に防止したりすることが可能となり,円満な相続が可能となります。
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