離婚しないまま別居をし、その後に別のパートナーを見つけて交際したとしても、離婚をしないまま放置していると、その後に高額な慰謝料請求を認めた裁判事例もありますので要注意です。これは婚姻中は、別居しているとはいっても不貞行為とみなされるからです。
一方で、別居期間が8年間もあって、婚姻関係が破綻していたに等しいと認められて離婚が成立したケースもあります。
では、婚姻中の別居に際しては、どんな所に気をつければいいか、別居前、別居後のチェックポイントを解説していきます。
今回は、夫側の相談者の目線から、妻と別居する際に気を付けるべきポイントという立場で解説していますが、これは妻側の相談者の場合でも同様です。
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離婚・慰謝料のことは、離婚問題の実績が豊富な当事務所にお任せください。離婚の解決は、柔軟かつ多種多様ですが、豊富な解決事例を基に、あなたに適した有利な解決を勝ち取ります。
離婚による慰謝料は、相場として50万円~300万円と言われておりますが、明確な基準がなく、個別の事案に応じて、増額・減額事由となる要素を、証拠と共に収集していかなければなりません。
このページの目次
ここだけは気をつけよう!
相手の同意なく別居を断行してはならない
夫婦には同居する義務があると民法には規定されています。したがって、これに反すると同居義務違反として、別居を強行に推し進めた方に責任があるという判断がされやすくなります。。
また、夫婦には協力・扶助義務があります。したがって、これを怠ると離婚理由の一つである「悪意の遺棄」があったと評価されるリスクが高くなります。
もし、今まであなたが妻を養っていたのならば、別居後であっても婚姻費用という最低限の仕送りをしなければなりません。
離婚原因の証拠をつかめ!
「ただ離婚したくなったから別居をしよう」というのでは、裁判所もとりあってくれませんし、ましてや味方にはなってくれません。
離婚するには、それなりの理由が必要です。不倫されたとか、暴力をふるわれたなどの理由があるのであれば、しっかりと証拠を収集しておくべきです。
お互いの財産を把握せよ!
離婚時には、夫婦生活で築き上げた財産を分配しなくてはなりません(これを「財産分与」といいます)。
妻は家庭を守るという仕事をしてきたわけで、これによって仕事のキャリアを捨てたという場合もありますから、たとえあなたの給料でマンションを買ったとしても財産分与の対象になります。
ですので、結婚後にどれだけの資産を築きあげてきたかをチェックし、「半分はとられるんだな」というぐらいの覚悟をしておきましょう。
そこで、厄介なのが給与を妻に任せていた場合です。給与はそこそこ貰っているのに、妻には「貯蓄がない」と言われることがあります。どこかにへそくりを隠している場合もありますが、こうなってしまうと公平な財産分与ができません。
財産の把握は、別居する以前にしっかりと準備しておくべき問題ですので、早いうちに、貯金をすべて妻に任せるようなことにせず、自分でもしっかり把握した上、できるのであればあなたが財産を把握して妻に対して婚姻費用を支払うという方法にシフトしたほうがよいでしょう。
親権は同居の親に認められやすい
あなたが子供の親権をとりたいという場合には、別居する際に子供を置いて出ていくのであれば、親権をとれないという覚悟をすべきでしょう。
とはいえ、最終的には親権は、子供の利益になるように判断されるというのが裁判所の考え方ですから、子供の意思に反してまで連れ去るというのはオススメできません。
婚姻費用は支払い続けるべき
婚姻費用の相場は、家庭裁判所が公開している「婚姻費用算定表」によって決まることが一般的ですから、これを参考にすべきです。
「婚姻費用算定表」では、自分の年収、相手の年収、子供の数と年齢をあてはめると、どれくらいの婚姻費用が裁判所の相場かがわかるようになっています。
例)年収1000〜1100万円で、妻が専業主婦、14歳未満の子供1人の場合:婚姻費用は18万円〜20万円
別れても、置いてきた子供のために
晴れて離婚が成立したとしても、子供の行く末が気になるというのは、親として誰しも思うことです。
相手に非がある離婚であればなおさらのことです。
別居の際に貰える母子家庭のもらえる公的な手当すら申請しない人もいますので、夫の身としては非常に不安になることも多いでしょう。
これから別居をするということは、もはや親身にアドバイスをできる関係にはないかもしれませんが、役所の相談室や弁護士を通して以下の手当の存在を伝えることはできます。
児童手当
中学生以下の児童がいる保護者に対する行政からの手当です。月1万円程度の支給があります。
詳しくは、厚生労働省のホームページの次の表の説明をご覧ください。
児童扶養手当
離婚成立後、ひとり親家庭に対して、地方自治体から支給される手当です。
なお、別居の場合でも生活費の支払いが1年間以上滞っていた場合にも支給されます。
所得に応じて支給されるかどうかが決まります。児童が1人の場合、月に約4万円が支給されます。
生活保護
憲法で補償された最低限度の生活のために支給される制度です。詳しくは、地方自治体の役所に相談してみてください。
別居期間が5年以上でやっと「夫婦関係が破綻」と評価される可能性がある
別居をするという強い覚悟を持っていたとしても、やっと別居できたらからといって、すぐに次の交際相手を見つけて肉体関係を持つことはオススメできません。
別居中であったとしても、もし妻から「不貞行為」の証拠を見つけられてしまうと、高額な慰謝料請求をされる可能性が高いといえます。
婚姻関係が破綻していると評価された後の不貞行為であれば、責任がないと判断されることとなりますが、「破綻」と評価されるためのハードルは非常に高いといわれています。別居期間だけを理由として「破綻」であると主張するのは非常に難しいでしょう。裁判所は、一般的な間隔よりも「話し合えば仲良く戻れる」と考えているようですから。
別居したらまずやることは、羽を伸ばすことではなく離婚調停をはじめることです。婚姻費用が毎月発生しているわけですから、早いにこしたことはありません。すぐに弁護士に対応してもらいましょう。
なお、調停が長引いた場合も、別居期間が5年たてば裁判所により「夫婦関係の破綻」が認められる可能性がありますので、訴訟するタイミングは、弁護士のアドバイスに従いましょう。
ただし、あなた一方だけに離婚に向かう原因がある場合には、もっと長い期間の別居期間が必要となります。
なお、別居期間以外にも「夫婦関係の破綻」の際に考慮される要素は、以下の事情が考えられます。
☞ 夫婦間の性生活がない
☞ 喧嘩が絶えない
☞ 夫婦の一方に関係修復の意思がない
離婚後の養育費も予めチェックしておこう
離婚が成立したあとは、婚姻費用はかかりませんが、養育費がかかることとなります。
養育費の相場は、家庭裁判所が公開している「養育費用算定表」によって決定されるのが一般的ですので、「養育費用算定表」を参考にして相場を判断していきましょう。
自分の年収、相手の年収、子供の数と年齢を表に照らし合わせると、どれくらいの費用になるかがわかります。
(例)年収1000〜1100万円で、妻が専業主婦、14歳未満の子供1人の場合:婚姻費用は10万円〜12万円
まとめ
「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」といわれるように、「仲が悪くなったから別れよう」という話だけ裁判所もとりあってはくれません。
また、未婚者の別れ話とはわけが違い、相手は何らかの権利を主張したいから離婚を渋ることになります。それが離婚成立までの婚姻費用かもしれませんし、養育費のつりあげ、もしくは不貞行為の証拠を押さえての慰謝料請求かもしれません。
安易な別居はトラップばかりだと思っても過言ではないでしょう。
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離婚による慰謝料は、相場として50万円~300万円と言われておりますが、明確な基準がなく、個別の事案に応じて、増額・減額事由となる要素を、証拠と共に収集していかなければなりません。