保釈手続きの流れ|早期の釈放を勝ち取るために知っておきたいこと


保釈

保釈という言葉を聞いたことがあるでしょう。

一定額の保釈保証金の納付を条件として勾留の執行を停止する制度で、早期の釈放を実現するためには欠かせない制度です。公判請求後の被告人が対象となります。

身体拘束を受けている被告人やその家族にとって、一日でも早く社会復帰をして、仕事や学校へのダメージを少なくしたいと考えたとき、スピーディな刑事弁護活動とともに、なんとしても保釈を勝ち取りたいところでしょう。

また、早期に保釈を実現することによって、犯罪の種類によっては、自身で被害回復、謝罪、示談といった有利な情状証拠を収集することも可能となります。

本来、逮捕、勾留といった身柄拘束は、一定の要件を備えた場合にのみ可能となる措置ですが、日本の刑事司法では逮捕、勾留が原則的な取扱となっています。犯罪が軽微である、証拠隠滅の可能性がない等、身柄拘束の必要がないと考えられるケースでは、積極的に保釈を申請していくとよいでしょう。

今回は、保釈の手続きと流れについて、早期釈放を勝ち取る方法を解説していきます。

刑事事件はスピーディな対応が重要です!

もし、あなたの家族、友人、親族が、刑事事件で逮捕、勾留などの身柄拘束を受けた場合には、刑事事件の得意な弁護士にすぐ相談をしましょう。刑事弁護を開始するタイミングが早ければ早いほど、身柄拘束が短期で終了し、示談成立、起訴猶予などの、有利な結果を獲得できる確率が上がります。

日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。

保釈手続きの流れ

保釈の申請

保釈の申請は、起訴の後にだけできます。起訴された後であれば、公判が始まる前であっても、判決が確定するまでの間であればいつでも請求することができます。

裁判官の審査

弁護人が申請した保釈に対して、保釈するかどうかを裁判官が審査します。裁判官がどのような考え方で保釈を判断するかは、後で解説します。

この際、保釈をすべきかどうか、そして、保釈金はどの程度が適切であるかについて、裁判官は検察官に対して意見を求めます。検察官の意見がすぐにもらえるかどうかで、審査のスピードが遅くなることがあります(土日は全く行われず、平日であっても翌日となることが一般的です)。

また、弁護人も裁判官と面談をすることができますから、保釈の申請をした上で裁判官への面談を求め、その場で、保釈をすべきであること、そして、保釈金としていくら支払うことができるかについて意見を裁判官に伝えます。

保釈決定

弁護人、検察官の意見をもとに、保釈すべきかどうか、そして、保釈金の金額について、裁判官が決定します。

保釈申請が却下された場合には、これに対して異議申立てを行うことができますし、判決が出るまでの間は、何度でも保釈の申請をすることができます。

特に、裁判が長期化する場合には、何度も裁判期日を行うことによって、証人尋問、被告人本人の尋問といった証拠は明らかになっていきますから、徐々に証拠隠滅の危険性も薄まっていき、保釈は認められやすくなってくると考えられますから、一度であきらめるべきではないでしょう。とはいえ、却下されてすぐに保釈申請してもあまり意味はなく、新しい資料が入手できたとか、裁判がある程度進行したといった新しい事情を付け加えて再申請をする必要があります。

保釈金納付

決定された保釈金を、裁判所に対して、原則として現金で納付します。保釈金の納付自体は、保釈を請求した人以外の者でも行うことができます。

保釈金は最低でも100万円以上必要となるケースが多いですが、これをすべて現金で用意する必要があります。よくATMからの現金引き出しを一定額までに制限している方が多いため、すぐに用意できるように、保釈請求をする際にはまとまった現金を手元に持っておくようにしてください。

釈放の指示

保釈金の納付を裁判所が確認すると、裁判所は検察に連絡をし、さらに、留置されている警察署に指示がされ、被告人を釈放します。

釈放

おおむね、保釈金の納付から釈放まで、半日程度であることが一般的です。

裁判・判決

保釈をされたからといって、無罪となったわけでもなく、自由にどこへいってもよいわけではありません。

裁判には必ず出頭することを約束して保釈されていますので、必ず裁判に出頭しなければならず、出頭をしないと保釈を取り消され、保釈金を没収されるおそれがありますので注意が必要です。

保釈金の還付

裁判が終了するまで逃亡などをしなければ、裁判が終了した時点で保釈金が返還されます。だいたい保釈金の返還には、裁判の終了から1~2週間前後かかります。

裁判で無罪になった場合だけでなく、有罪となった場合にも保釈金の返還はされます。

保釈金の金額の相場は?

保釈の手続きのとおり、保釈金の金額は、検察、弁護人の意見を聞いて、最終的に裁判官が決めるものですが、一般的にはかなり高額になります。100万円以上となるケースがほとんどでしょう。

これは、保釈制度というのは、そのお金をいわば「人質」にして有罪か無罪かが決まっていない人を社会復帰させる制度であるため、「あのお金を失うくらいなら逃げないでおこう」という心理的な強制ができる程度に高額の保釈金でないと、保釈制度の意味がなくなってしまうからなのです。

したがって、犯罪の内容が重いものであって重い刑罰が予想される場合や、被告人が裕福である場合などには、保釈制度を確かなものにするため、保釈金の金額が高額化する可能性が高いです。

だいたい150万円~200万円くらいのケースが多いと思われますが、以下の事情によって増額・減額が検討されます。

☞ 犯罪の性質
☞ 情状
☞ 証拠の証明の程度
☞ 被告人の性格
☞ 被告人の資産
☞ 出頭を保障するのに十分な金額であるかどうか

保証金の準備が困難な場合には、日本保釈支援協会など、保証金の貸付を行っている団体もありますので、検討してみてください(一定の利子がかかる場合があります)。

(参考)日本保釈支援協会

保釈請求は誰がするのか?

保釈請求権者は? ~本人でも可能

保釈の請求は、勾留されている被告人本人、その弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族もしくは兄弟姉妹が行うことができます。

家族や、被告人本人でも行うことができるため、金銭的な余裕がない場合には弁護人に依頼せずにご自身で進めることも検討してみましょう。

保釈請求できない人

結婚していない内縁関係にある方は、保釈の請求をすることができません。

また、どれほど密接な人間関係をもっていたとしても、友人、同僚、恋人、婚約者などの場合には、保釈請求をすることができませんので、弁護人に依頼する必要があります。

保釈を弁護士に依頼するメリット

通常、保釈制度は手続き的な複雑さがあり、しっかりとした刑事弁護の知識と経験がなければ見通しを判断することが難しいです。

また、弁護人としての意見があったほうが家族で行うよりも有利に判断される可能性が高いことから、実際には弁護士に依頼することがほとんどではないでしょうか。

保釈の得意な弁護士は?

昨今では弁護士による依頼人の金銭の横領事件があったり、刑事弁護専門で保釈制度利用の経験のある弁護士に依頼するとよいでしょう。

保釈には高額の保釈金が必要なため、貧困によって弁護士に依頼できない人を対象とした国選弁護人では、保釈を担当したことがないという場合もあり「刑事弁護の経験値」=「保釈の経験値」ではありませんから、注意が必要です。

保釈の判断の仕方

3種類の保釈

保釈には、大きく分けて三種類の保釈があり、それぞれ保釈を認められる要件が違います。

1. 必要的保釈
2. 職権保釈
3. 不当に長い拘禁と勾留の取消し

それぞれ、必要的保釈は保釈不許可事由がないときに、職権保釈は裁判所が適当と認めるときに、勾留の取消しは勾留が不当に長いときに認められることとなっています。

以下で、詳しく解説していきます。

必要的保釈

主に一定の重要な犯罪以外の罪を犯した被告人に対して、逃亡と証拠隠滅の可能性が少ないことを条件として保釈を認める場合です。

裁判官を保釈すべきという方向に導くための説得のため、身元引受人を立て、責任をもって監督する旨の書面を作成し、保釈申請書と同時に提出することによって証明
交渉していくことが一般的です。身元引受人は、被告人と関係性が深く、被告人が絶対にその指示を破らない人である必要があり、保釈金を用意してくれた人がなるのが一番有利であると考えられます。

刑事訴訟法の条文では、以下のように定められています。

刑事訴訟法89条
保釈の請求があったときには、下記の場合を除いては、これを許さなければならない。

一. 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪を犯したものであるとき。

二. 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁固に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。

三. 被告人が常習として長期3年以上の懲役または禁固に当たる罪を犯したものであるとき。

四. 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由のあるとき。

五. 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。

六. 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

職権保釈

必要的保釈については保釈の不許可事由がある場合であっても、職権保釈が許される場合がありますので、保釈不許可事由がある場合にはこちらを狙っていくこととなります。

刑事訴訟法の条文では、以下のように定められています。

刑事訴訟法90条
裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

不当に長い拘禁と勾留の取消し

刑事訴訟法の条文では、以下のように定められています。

刑事訴訟法91条
勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、第88条に規定する者の請求により、又は職権で決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。

まとめ

以上の通り、今回は保釈の手続きの流れについて解説していきました。

刑事弁護に強い弁護士に依頼すればスピーディに進む手続きではあるものの、短時間の間に非常に多くの手続きが進む、かなりシビアな手続きであるといえますから、計画的にスケジュールを組んで行う必要があります。

刑事事件はスピーディな対応が重要です!

もし、あなたの家族、友人、親族が、刑事事件で逮捕、勾留などの身柄拘束を受けた場合には、刑事事件の得意な弁護士にすぐ相談をしましょう。刑事弁護を開始するタイミングが早ければ早いほど、身柄拘束が短期で終了し、示談成立、起訴猶予などの、有利な結果を獲得できる確率が上がります。

日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。


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