「自炊」(書籍スキャン)代行業者に差止命令が確定!最高裁が自炊を違法と判断


自炊違法

自炊とは、紙の本をタブレットやPC上で読める電子書籍化するために、自分でスキャナーなどの読取機械を使ってスキャンを行う作業をいいます。

自炊を代行したり、自炊に必要な高額な機材をレンタルしたり、場所を提供したりといった、様々な自炊サービスが出現しましたが、この度、最高裁は、自炊の代行業者に対して、自炊代行の複製差止に対する上告を棄却する決定をし、判決が確定しました。

自炊の違法性について、解説していきます。

IT問題に強い弁護士に法律相談!

IT技術の進歩に伴い、法律は徐々に整備されつつありますが、まだ新しい分野について法律が十分な状態ではありません。

ITに関係する事業、技術、行為が適法であるかを知りたいIT企業、ネット上の誹謗中傷等のトラブルにお困りの方は、ITに詳しい弁護士へ法律相談ください。ITを熟知した弁護士が、徹底的にリーガルサポートします。

個人で自炊(電子書籍化)することは合法

個人で、自分の購入した書籍を裁断したり、スキャンしたりする行為については、著作権法違反とはなりません。したがって、個人での自炊は合法です。

正確には、書籍をスキャンすることは著作権法上の「複製」に該当し、著作権侵害行為にあたるのですが、自分が楽しむ範囲で複製する行為は、著作権法の適用除外規定に該当し、複製であっても著作権法違反とはなりません。

この適用除外について、著作権法では次のように定められています(「私的使用のための複製」)。

著作権法30条
著作権の目的となっている著作物(著作物)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

したがって、自分で購入した書籍を、自分で読む目的で、裁断し、スキャンし、iPadなどのタブレットに取り込む行為は、違法とはなりません。

個人利用として合法な自炊の範囲は?

著作権法では、私的な使用のための複製として合法な範囲を、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」と限定しています。

したがって、家族で共有して読む目的で自炊する行為は、この規定により合法とされますが、企業内で資料として活用したり、社内サーバーで共有したり、個人事業主が発表用の資料として活用したりといった目的で自炊をする場合には、著作権法違反の違法な複製行為となります。

たとえ友人であったとしても、他人への譲渡を目的とした複製は、著作権侵害とされる可能性が非常に高いでしょう。「その他これに準ずる限られた範囲内」とは、家族に準ずる範囲ですから、ごく少人数かつ閉鎖的なグループを指すと考えてください。

自炊を補助するサービスはどこまでが違法なのか

自炊を補助するサービスの中には、書籍を自炊した上でデータを販売する業者、書籍を送ると自炊をすべて代行してくれる業者、自炊のための高額な機材をレンタルしてくれる業者、自炊の場所と機材を提供してくれる業者など、様々なサービスが出現しました。

次のような業者は、明らかに違法とされるでしょう。

☞ 書籍を業者が購入して裁断・スキャンし、そのデータを販売する

これに加えて、今回の判決で、書籍を個人が購入して裁断・自炊を依頼した場合であっても、業者が自炊行為を行う場合には私的複製にあたらず著作権法違反であるとの判断がされました。

自炊代行業者は「依頼者である個人の手足に過ぎない」といういわゆる「手足論」を主張しましたが、裁判所はこれを否定した形となります。

自炊後の書籍をオークションで売却する行為

自炊が定着すると、今度は自炊後の紙の書籍は不要となってきます。この際、既に裁断済みでバラバラの書籍という場合もありますが、オークションで格安販売する行為が行われています。

このような自炊後の書籍をオークションで売却する行為については、禁ずる法律がないことから合法となるものと考えられます。ただし、当然ながら自炊自体が著作権法に違反していないか慎重に判断する必要があります。

自炊代行業者に対する禁止命令事件

今回の自炊代行業者に対する禁止命令の事件の概要は、各報道によれば次の通りです。

☞ 原告は、東野圭吾氏、浅田次郎氏らの7名の作家
☞ 原告らは著作権侵害を主張して東京の2つの自炊代行業者を提訴
☞ 第1審・控訴審で原告の主張が認められ、複製差止命令と、賠償額70万円

自炊代行業者はこの裁判で、「依頼者である個人のいわゆる手足として自炊したに過ぎない」として「手足論」を主張しましたが、これが否定され、業者が自炊したものと評価され、私的複製にあたらず著作権法違反であるとされました。

まとめ

IT化が進むについて、自炊の違法性とは別に書籍を電子化したいという要望は増えています。自炊の違法性は、今回の最高裁の上告棄却によって一定程度認められたものの、電子書籍化の要請に違法な自炊以外で応える方法が必要でしょう。

著作権法に違反しない適切な方法での電子書籍化の進行が望まれます。

IT問題に強い弁護士に法律相談!

IT技術の進歩に伴い、法律は徐々に整備されつつありますが、まだ新しい分野について法律が十分な状態ではありません。

ITに関係する事業、技術、行為が適法であるかを知りたいIT企業、ネット上の誹謗中傷等のトラブルにお困りの方は、ITに詳しい弁護士へ法律相談ください。ITを熟知した弁護士が、徹底的にリーガルサポートします。


関連記事を見る