1990年代に流行った「エンコウ」「援助交際」とは、当時も現代もファッション感覚でとらえがちですが、いわゆる売春行為、立派な犯罪です。
過ぎ去ったブームのようにも思われますが、現代もなくなったわけではありません。
むしろ、最近は、LINEやFACEBOOKなどのSNSや出会い系サイトの掲示板などで、援助交際が行われやすい環境が整っている、といっても過言ではありません。出会い系規制法ができ、出会い系サイトが大手を振っては活動しなくなりましたが、SNSが形を変えて出会い系の役割を果たしています。
最近でも、芸人の狩野英孝さんが、高校生に対する淫行をしたという疑惑が、芸能ニュースで話題となりました。
援助交際は立派な犯罪です。女子高生や女子中学生が補導されるのはもちろんのことですが、援助した側に、犯罪が成立するのです。
今回は、家族や恋人が援助交際で逮捕されたらどうなるのか、成立しうる犯罪やその後の手続きなどについて、刑事弁護に強い弁護士が解説します。
万が一、援助交際を行ってしまったという場合、逮捕、起訴などといった処分になる前のスピーディな対応が必要です。性犯罪の刑事弁護人の経験が豊富な弁護士にお任せください。
刑事事件はスピーディな対応が重要です!
もし、あなたの家族、友人、親族が、刑事事件で逮捕、勾留などの身柄拘束を受けた場合には、刑事事件の得意な弁護士にすぐ相談をしましょう。刑事弁護を開始するタイミングが早ければ早いほど、身柄拘束が短期で終了し、示談成立、起訴猶予などの、有利な結果を獲得できる確率が上がります。
日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。
このページの目次
援助交際は犯罪行為です!
援助交際では、援助を受ける少女にではなく、援助する側に犯罪が成立することはご存じでしょうか。
援助交際が犯罪であるということを軽視して、甘い気持ちや、その場の快楽をもとめて犯罪を行ってしまう人が後を絶ちません。
「援助交際」に当たるのは、「18歳未満」の少女を買春した場合です。
また、実際に買春をしていない場合であっても、掲示板などに書き込みをするだけで犯罪が成立します。掲示板への書込みも、出会い系規正法違反であり、立派な犯罪です。
書き込みの具体例としては、例えば、出会い系サイトの掲示板で、18歳未満の少年少女に肉体関係の相手として交際を希望する書き込みや、お金の支払を前提とした交際を求める書き込みなどです。
実際に少年少女と肉体関係を持てば重く処罰されますが、実際に肉体関係を持っていない場合であっても、犯罪にはなってしまうわけです。
つまり、援助交際を求めるような書き込みをしただけで、処罰の対象となってしまうので注意が必要です。
援助交際に関わる行為は、様々な法律で禁止されている犯罪行為です。そこで実際にどのような法律に違反することになり、処罰の対象になるのか、弁護士がくわしく解説していきます。
援助交際で成立する犯罪の種類
援助交際に関係する法律は、主に以下の法律が考えられます。
以下の法律はいずれも、援助交際や、その関係する行為に対して、刑事罰を与えるというルールを定めています。
出会い系サイト規制法
まず、援助交際をおこなおうとすると、出会い系サイト規制法に違反して逮捕されるおそれがあります。
「出会い系サイト規制法」に反する可能性のある行為というのは、ナンパや交際相手を紹介するような、いわゆる出会い系サイトに書き込みをしたという行為です。
実際に性交為を行ったかどうかは関係なく、書き込みをする行為自体が禁止されています。
具体的に禁止されているのは、出会い系サイトの掲示板に、18歳未満の児童に対して、交際を求める書き込みをする行為です。
ちなみに、この「児童」とは少年少女を指し、性別は男女問いません。
したがって、出会い系サイトの掲示板に18歳未満の児童を性交の相手として交際を求めたり、お金を支払うからと言って、児童に交際を求める内容を書き込んだ場合は、処罰の対象となります。具体的には、「100万円以下の罰金刑」が定められています。
刑事罰があるため、逮捕されたり、最悪の場合には、起訴(略式起訴)されたりといった危険があります。
児童売春・児童ポルノ処罰法
児童買春・児童ポルノ処罰法により、18歳未満の児童に金銭を支払う代わりに、性行為を行う行為や、児童ポルノを提供したり、提供目的で所持・製造をする行為、近年では児童ポルノを所持する行為も禁止されています。
なお、児童売春・児童ポルノ処罰法の正式名称は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」といいます。
児童買春とは、次のように定義されています。
- ☛ 金銭等の対価となるものを提供して、18歳未満の児童と性交や性交類似行為を行ったり、児童の性器などを触ったり、児童に自己の性器などを触らせる行為のこと。
- ☛ 児童は18歳未満であれば、男性でも該当。
- ☛ 児童買春をした者には、5年以下の懲役または300万円以下の罰金刑が定められている。
これに対して、児童ポルノとは、次のように定義されています。
- ☛ 18歳未満の児童のわいせつなデータ画像・写真などのことを指す。
- ☛ これらの画像を所持しているだけで処罰の対象になる。
- ☛ 実際の援助交際で問題となるのは、児童との性交の様子を録画するなどの行為。
- ☛ 児童ポルノを他人に提供しなくても、児童に猥褻な姿をさせて写真にとるなどの行為自体も処罰の対象となる。
- ☛ 刑罰として、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が定められている。
- ☛ 児童ポルノに当たる画像などを掲示板に張り付けた場合、児童ポルノの陳列罪となり、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または両方科される「併科」の定めがある。
強姦罪(刑法)
次に、刑事罰をさだめるもっとも一般的な法律である「刑法」にも、援助交際を行った際に、刑事罰の対象となるようなルールがさだめられています。
援助交際をおこなった際に、性交した相手の児童の年齢が13歳未満だった場合、刑法に違反します。
この場合、たとえ児童との間に性交渉の合意があったとしても、強姦罪となります。
性交渉をした相手が、13歳未満の場合には、たとえ少年少女との間で合意があったとしても、強姦罪が成立します。
また、児童が13歳以上の少年少女の場合であっても、暴行・脅迫を用いて性交した場合には、強姦罪が成立します。
なお、強姦罪の刑罰は、3年以上の有期懲役と、とても重いものです。
強姦罪によって刑事罰が下されるということとなると、逮捕、起訴される可能性が非常に高いといえます。
強制わいせつ罪(刑法)
援助交際をおこなった少年少女に対し、暴行・脅迫を用いて、相手に抱きつく、性器を触ったりするなどの行為を行うと、強制わいせつ罪が成立することがあります。
援助交際の相手が、13歳未満の少年少女の場合には、暴行・脅迫がなくても成立する可能性があります。
なお、強制わいせつ罪の刑罰は、6か月以上10年以下の懲役と、こちらも重いが定められています。
犯罪が成立しないケースは?
援助交際を行っても犯罪が成立しない場合とは、援助交際の相手となった少年少女が18歳未満であることを知らなかった場合や、相手から「自分は18歳以上だ」「もう成人している。」と言われた場合です。
法律の専門用語で言いますと、「故意」があったかどうかが問題になります。
つまり「知らなかった。」というわけです。しかし、「知らなかった。」という言い訳が、いつでも許されるわけではありません。
むしろ、援助交際を行ってしまえば、基本的には「知らなかった。」という言い訳だけで無罪になる方が難しいといえるのではないでしょうか。
故意が認められるケース
援助交際の場合、単に少年少女からの「私は18歳以上です。」という言葉を信じたのだ、というだけでは故意がない、とはいえないことがあります。
少年少女がどのように発言していたとしても、制服を着ていたり、外見からも言動からも明らかに幼いなど、外見上18歳未満といえないような場合では、故意が認められる可能性があります。
「勘」で未成年であることに気が付き、それでも援助交際を行った場合には、やはり故意が認められるでしょう。
援助交際自体ゆるされることではありませんが、何となく気付いたのであれば、なおさら、それ以上の援助交際はストップすべきであるということです。
故意が認められないケース
他方、少年少女が持っていた学生証や免許証で18歳以上であることを確認したが、実は偽造されたものだったようなケースでは、故意が認められない可能性が高いでしょう。
援助交際で逮捕された場合の刑事手続き
あなた自身やご家族が、万が一援助交際で逮捕されてしまった場合、その後の刑事手続きの流れを理解しておきましょう。
援助交際をおこなってしまったという事実は消えませんが、できる限り早く釈放してもらうためには、スピーディな刑事弁護が必須です。
援助交際で逮捕
援助交際で逮捕されるパターンとしては、主に「準現行犯逮捕」と「通常逮捕」という場合が考えられます。
援助交際によくある準現行犯逮捕のケースは、例えば、児童とホテルから出てきたところを警察により逮捕されるような場合です。
では、どのような場合に援助交際によくある通常逮捕が行われるのでしょうか。
援助交際が発覚して、逮捕されてしまうケースには、次のようなものがあります。
- ☛ 補導された児童のSNSでのやり取りの履歴を調べている中で、援助交際の相手が明らかになり、芋づる式にあなたが援助交際を行っていたことが判明した
- ☛ 掲示板に掲載した児童ポルノ画像から捜査が始まり、援助交際を行っていたことが発覚した
援助交際を行っていたことが発覚してしまった場合、突然、逮捕状を持った警察官が自宅にやってきて警察署に連行されたり、自宅を捜索され、携帯やパソコンなどが押収されることもあります。
援助交際で逮捕されてしまうと、留置場に入れられ、最長72時間の逮捕期間が続くのです。
しかも、この間は、弁護士以外は、面会は認められません。家族であっても面会をすることはできないのです。
援助交際で勾留
援助交際で逮捕されると、48時間以内に検察庁に送致され、検察官の取調べを受けることになります。
その上で、検察官が釈放すべきかを検討します。
検察官も裁判官も釈放すべきでないと判断した場合は、10日間の勾留が決定します。
しかも、事案によっては更に10日延長され、長期の間、留置場で生活しなければならないのです。
援助交際の場合、援助交際の相手となった児童に対して危害を加えたり、証拠隠滅をしたりするおそれがあると考えられてしまい、釈放が困難となるケースがあります。
勾留中であっても、弁護士が早期釈放を主張してこれ以上、身柄を拘束するのは不当だ、と不服申し立てを行う方法があります。この申立てが認められた場合には、勾留期間が満了する前に釈放されることもあります。
援助交際で起訴
次に、検察官は、援助交際が刑事罰に該当するかどうか、つまり、裁判にかけるかどうか、起訴するかどうかについて判断します。
ここで、検察官の判断で不起訴処分とされると、釈放されて「前科」がつくことはありません。
不起訴処分を獲得するためには、児童が18歳未満であることについて故意がなかったなどと主張することが有効です。
起訴された場合には、「略式裁判」といって罰金を納めて終了するものと、法廷で刑事裁判にかけられるものとの、どちらかを受けることになります。
援助交際を犯してしまった犯人が刑事裁判を受ける場合は、通常であれば、逮捕から2~3か月以内に裁判の日時が決められ、裁判までの間は、警察の留置場か拘置所で過ごすことになります。
なお、起訴された際に初めて、「保釈」を申請することができます。保釈が認められますと、一旦家に帰り、基本的には、逮捕前と同様の生活を送ることができます。
援助交際で刑事裁判
裁判では、起訴された援助交際の犯罪事実を認めている場合では、1回の裁判で終了することが多く、2回目の裁判で判決が下されることがよくあります。
言い渡された判決に不服があるような場合には、「2週間以内」に控訴することができます。
なお、控訴せずに2週間が過ぎると判決は確定します。
裁判で有罪判決が下され確定すると、たとえ「執行猶予」が付き、刑務所に行かなくてすんだ場合でも前科がつきます。
同様に、略式裁判で罰金になった場合でも前科はつきます。もっとも、裁判で「無罪」になれば前科はつきません。
無罪判決を獲得する可能性は極めて低いのが実情です。無実の援助交際事件で逮捕された場合には、無実の証拠を集め、説得的な主張を行うことが不可欠です。
援助交際で示談するとき注意
援助交際も、他の犯罪と同様に、示談をおこなうことが、有利な情状として考慮されます。
そのため、援助交際の相手と示談ができれば、釈放されたり、不起訴、執行猶予となったりといった、有利な解決を勝ち取ることが可能です。
しかし、他の犯罪とは異なり注意しなければならないのは、「援助交際」の場合には犯罪の特性上、示談金がまるで、買春の対価の支払いのように思われてしまうのではないか、という不安があります。
たしかに、援助交際を行ってしまったという後ろめたい気持ちから、不安をもつお気持ちはよく分かります。
しかし、援助交際の相手は、18歳未満の少年少女です。
本人が示談金の直接の受取人になるケースはむしろ少ないといえます。未成年の場合、親権者、すなわち、親が示談交渉の窓口となるからです。その示談金が家庭内でどのように使われるかは、少年少女側に任せればよい、という考えで、示談を進めるのがよいでしょう。
まとめ
援助交際で逮捕された場合に、行っておくべき刑事弁護について、弁護士が解説してまいりました。
そもそも援助した側に犯罪が成立するのに、なぜ援助された少年少女側を処罰する法律がないのか、と不可解に思われた方もいらっしゃるでしょう。
しかし、少年少女を保護するためにも、間違っても援助交際を犯してはいけません。万が一援助交際をしてしまった場合には、早めに弁護士へご相談ください。
援助交際は、行為の態様や相手の年齢によって、成立する犯罪が変わる可能性もありますし、それによって刑罰も大きく変わることはお分かりいただけたと思います。
援助交際で逮捕された場合や、逮捕されるのではないか、と不安な場合には、できるだけ早く、弁護士に相談し、早期解決を目指すのがいいでしょう。
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もし、あなたの家族、友人、親族が、刑事事件で逮捕、勾留などの身柄拘束を受けた場合には、刑事事件の得意な弁護士にすぐ相談をしましょう。刑事弁護を開始するタイミングが早ければ早いほど、身柄拘束が短期で終了し、示談成立、起訴猶予などの、有利な結果を獲得できる確率が上がります。
日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。