海外にサーバーを置くオンラインカジノの関係者(決済業者、利用客)が、立て続けに逮捕されました。サーバーを海外に置く場合、日本刑法が適用されるかについては様々な議論が行われてきましたが、今回の逮捕を受け、オンラインカジノの違法性が注目されています。
平成28年2月15日、千葉県警が、さいたま市の男性2名を、オンラインカジノの決済業者としての機能を果たしていたところ、常習賭博罪の疑いで逮捕。
逮捕ケース②
平成28年3月10日、京都府警が、さいたま県の男性ら3名を、オンラインカジノを利用して賭博を行っていたとして、単純賭博罪の疑いで逮捕。
これまで、サーバーが日本国内ではなく海外にあり、日本国内には店舗の存在しない、いわゆる無店舗型のオンラインカジノは日本国内の刑法が適用されないのではないかという考えで営業を続けるオンラインカジノが多かったのですが、今回の2つの逮捕ケースで警察の考え方が示されたのではないでしょうか。
今回の逮捕により、「オンラインカジノのサーバーがどこの国に所在しているか」ではなく「どこの国に対してサービスを提供しているか」を重視して摘発を行う姿勢が明確になったといえます。
本記事では、オンラインカジノと賭博罪について解説します。
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このページの目次
海外オンラインカジノの2事例が賭博罪で逮捕
常習賭博罪容疑で逮捕されたケース①(平成28年2月、千葉県警)
平成28年2月15日、千葉県警が、海外のオンラインカジノに賭け金を振り込むための決済サービスを運営することによって、不特定多数の客に対して賭博をさせていた容疑で、さいたま市の男性2名を、常習賭博罪の容疑で逮捕しました。
逮捕された2名の男性は、3年間の決済サービス運営で、約1600人の利用客、約23億円の賭け金を扱い、10億円以上の利益を上げていたと報道されています。
逮捕された2名の男性は、「賭け金の清算という決済サービスを提供していただけであって賭博行為を行っていたわけではない」、「あくまでも自身は決済代行である」旨を主張し、賭博罪の容疑を否認しているとのことです。
単純賭博罪容疑で逮捕されたケース②(平成28年3月、京都府警)
平成28年3月10日、京都府警が、海外にサーバーを置くオンラインカジノを、インターネットを通じて利用したことについて、埼玉県内在住の男性ら3名を、単純賭博罪の容疑で逮捕しました。
利用されたサイトは、イギリスにサーバーを置く登録制のオンラインカジノ「スマートライブカジノ」というサイトで、クレジットカードや決済代行を使って賭け金を決裁することができるもので、次の理由で、拠点は海外であっても日本向けの違法オンラインカジノであると評価されているようです。
- ☛ 日本語のやり取りで利用可能
- ☛ 日本人女性がディーラー
- ☛ 日本語のチャットが準備されている
- ☛ 賭博の開催時間が日本時間の夕方から深夜
逮捕直後、「海外サイトなら大丈夫だと思った。」と語っているようですが、容疑自体は認めていると報道されています。
今後、裁判所でオンラインカジノの日本での違法性が判断されることとなり、注目されます。
日本刑法では賭博が禁止されているが、海外では適法な国も
日本の刑法では、次のように賭博罪の定めを置き、競馬、宝くじ、競輪、パチンコといった法律で許可されたもの以外のギャンブルを禁止しています。
刑法第185条(賭博)
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。刑法第186条(常習賭博及び賭博場開張等図利)
1 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
すなわち、賭博を行うことと、賭博を行う場を提供する行為を処罰することとしています。
ただ、日本国外では日本の刑法が適用されない結果、ラスベガス、マカオといったギャンブルが合法化されている国に旅行をしてカジノを楽しむことは、日本人であっても合法なのです。
ここに、サーバーは海外にあり、サービスの利用は日本国内で行うという、オンラインカジノが抜け道として登場します。特に、クレジットカードや電子決済システムの利便性が向上し、賭け金の決済が非常に迅速かつ容易になったことが、オンラインカジノのブームに拍車を掛けました。
賭博罪で違法となるオンラインカジノ
店舗型のオンラインカジノは明らかに違法
たとえ海外にサーバーを置いていたとしても、そのオンラインカジノに対して国内からアクセスし、オンラインカジノを行う行為、行わせる行為は、賭博罪として違法であると判断される可能性が高いこととなりました。
この点、実店舗を設置し、ネットカフェ形式でオンラインカジノにアクセスをさせて賭博させる行為については、日本の刑法に反するため違法であるとの裁判例が既に出ています。海外にサーバーを置いているオンラインカジノであったとしても、店舗が国内にあり、国内で利益が出ている以上、日本の刑法が適用されて賭博罪となることは、過去の裁判例からも明らかです。
賭博の実行行為が国内にあるかどうか
刑法に違反する犯罪行為のことを、法律上「実行行為」と呼びます。この実行行為が国内で行われなければ、国外犯の処罰規定のない賭博罪で処罰することはできません。
これまで、賭博罪は必要的共犯、つまり、共犯者も同時にでなければ処罰されない犯罪であるといわれ、オンラインカジノの運営業者のサーバーが国外にある以上、運営業者が処罰されず、したがって利用者も処罰されないという主張がされることがありました。
しかしながら、単純賭博罪、常習賭博罪が必要的共犯であることを否定した裁判事例もあり、また、サーバーを海外においていたとしても日本国内でのサービスを前提としたオンラインカジノは、運営業者側の実行行為も日本国内にあると判断される可能性が高まりました。
オンラインカジノアフィリエイトへの影響
ケース①では、オンラインカジノそれ自体を提供する業者や、オンラインカジノへの接続場所を提供していたネットカジノ実店舗ではなく、決済代行を行って利益を得ていた業者が逮捕されたという点が注目されています。
決済行為を行うことが、オンラインカジノにおける賭博行為と「実質的に一体である。」と評価されて賭博行為の一端を担っていたという判断となるのであれば、その先には、今度はアフィリエイトの形式によってネットカジノの広告代行を行っている業者への摘発など、類似関連する周辺業務にまで摘発の手が進む可能性も考えられます。
当然ながら、オンラインカジノを運営していた業者にも捜査の手が及ぶ可能性があります。
まとめ
海外にサーバーを置くオンラインカジノは、その収益性の高さから、アフィリエイトなどを使った拡散、広告が盛んに行われ、日本国内で進むカジノ合法化の計画をも利用することによって、合法であると宣伝されることが増えていました。
特に、オンラインカジノのアフィリエイトは、その収益性の高さから「カジノ必勝法」「絶対儲かる」等の危険な広告が出回っていること、暴力団等の反社会的勢力のマネーロンダリングの温床となること、容易にオンラインカジノにアクセスできることによって賭博依存症が広がることなど、社会的にも問題視されています。
今回の逮捕事例2ケースは、初めて警察がオンラインカジノの違法性に対しての見解を明らかにしたもので、今後の裁判所での判断が注目されます。
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