交通事故で生じた後遺症で一番多いのが「むち打ち」です。
むち打ちとは、正式名称を「外傷性頚部症候群」といいますが、交通事故に遭うことによって首がムチのようにしなり打つことで痛みが発生するために「むち打ち」と呼ばれるようになりました。
日本でも、衝突事故が増加するにつれてむち打ちの人が急増し、交通事故に遭わなければなかったような恒常的な痛みに悩まされている人が非常に多い症状です。
むち打ちに該当した場合の慰謝料の相場はいくらでしょうか。少しでもむち打ちの慰謝料を増額するために行っておくべきルールをまとめていきます。
交通事故・慰謝料請求に強い弁護士へ相談
交通事故のトラブルは、弁護士に相談することによって、早期に、慰謝料の増額を期待することができます。
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むち打ちの認定等級によって、慰謝料が増額される
むち打ちの後遺障害等級は?
むち打ちが後遺障害と認められるケースとして、後遺障害等級の表のうち、14級と12級のいずれかに該当するかを検討することとなります。
等級が2つ違うだけでも慰謝料の相場は格段に違います。
後遺障害等級の詳しい情報については、こちらの記事を参考にしてください。
後遺障害等級14級9号の慰謝料相場
むち打ちの場合、後遺障害等級14級のうち9号に該当する可能性があります。
この場合、受け取れる慰謝料の相場は、自賠責保険の基準、裁判基準で大きな差があり、弁護士に依頼して請求することによって、裁判基準で慰謝料を請求することができます。自賠責基準は法律によってその上限が決まっており、裁判基準は「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」という本(その色から「赤い本」といわれています)によって決まっています。
詳しくは、以下の通りで、実に3.5倍もの慰謝料増額が見込めるのです。
裁判基準の慰謝料 = 110万円
後遺障害等級12級13号の慰謝料
むち打ちの場合、後遺障害等級12級のうち13号に該当する可能性もあります。
等級が上がると、受け取れる慰謝料の額があがるのは当然ですが、自賠責基準から裁判基準への増額幅も格段に大きくなり、弁護士に依頼する必要性がますます増加します。
詳しくは以下のとおりで、200万円以上の増額が見込めることとなります。
裁判基準の慰謝料 = 290万円
したがって、症状が重症であるという場合には、12級の等級認定を得るための工夫を事故直後から行い、等級認定の審査で適切に対応していく必要があります。
この記事の最後で、後遺障害12級の認定を得るための方法を解説していきます。
この際、画像診断やスパーリングテスト、ジャクソンテストなどの各種テストの結果などを後遺障害診断書に適切に反映してもらい、有利な医師所見を記載してもらった上で等級申請をしていきましょう。ただ「痛い」と訴えるだけではなく、客観的な証拠(医証)が重要であると判断されています。
むち打ちがトラブルの火種となる理由
当事務所でも、弁護士に交通事故の相談をされる被害者の多くが、むち打ち症状を抱えており、むち打ちを原因として保険会社とトラブルになっています。
なぜむち打ちがここまでトラブルを招きやすいのか、その理由は以下の2点でしょう。
他覚症状・自覚症状がない
むち打ちの場合、交通事故の直後に検査をしてもすぐに症状が客観的に判明することが少ないケースも多く、交通事故直後の興奮状態であることも重なって、何も問題がなかったとして帰ってしまうケースがあります。
このような場合に、後日、首が痛み出し、やはりむち打ちだったのではないか、治療をしなくてはと考えても、交通事故の発生から期間が空いてしまっているため、そのむち打ちと交通事故とが「原因と結果の関係」(「因果関係」といいます)にあるのかどうかが争いになるのです。
ひどい場合には、交通事故の直後はなにも症状がなかったのに、数日から数週間して首の痛み、手のしびれ、吐き気、めまいといった症状に襲われることもあります。
症状が治らない
むち打ちの場合、痛みを緩和することはできますが、完全に治すことは難しく、そのため、多くの人は、保険会社が6か月程度で治療費を打ち切るという連絡をしてくるのに応じて治療をあきらめてしまうケースが多いです。
それでも首の痛みは長く残り、むち打ちの痛みでますます「加害者が許せない!」という、交通事故に対する被害感情が高まることになります。
有名だけれど、詳しい知識がない
「むち打ち」というのは、症状の俗称であり、その診断名はさまざまです。
自動車保有台数が増え、衝突事故が激増する中「むち打ち」という言葉は一般的になりましたが、首、肩、背中、腰などの中心部の痛みだけでなく、しびれやめまい、吐き気といった症状を引き起こす可能性があることをご存じでしょうか。
むち打ちの治療には、整形外科、柔道整復師などさまざまな専門家が関与しますが、被害者の側に適切な知識があるケースがほとんどないことも、むち打ちが大きなトラブルの火種になるひとつの理由です。
後遺症非該当とされることが多い
むち打ちとなって非常に痛みを感じて生活が辛くなっているにもかかわらず、客観的な証拠がまったく用意されていなかったことなどを理由に後遺障害等級の認定が獲得できないケースも多いです。
また、裁判例などの一般的な相場では、「6か月程度の期間で治療が終了する」「生活への支障は5年程度で終了する」という考えをもとに治療費、逸失利益を計算していることが多く、被害感情の強さとくらべて全く理解できないということが、トラブルの原因となります。
後遺障害12級の認定を得るための方法
後遺障害12級のうち、むち打ちが該当する可能性があるのは、13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」という項目です。
こちらの後遺障害等級認定に関する記事で、後遺障害12級のほかの症状を見てもらうとわかるとおり、「一手の小指を失ったもの」とか、「一耳の耳殻の大部分を欠損したもの」など、後遺障害12級はかなり重い症状を規定していますから、これに匹敵するほど重度のむちうちであることを、しっかりと主張していかなければ12級の認定を獲得することは難しいといえます。
受傷時から一貫した症状であること
まず、交通事故直後の受傷時の状態から、治療経過、検査の結果などを参考に、連続性、一貫性が認められる症状であることが必要とされています。
たとえば、痛みを主張しはじめたと思ったら治療は全くしておらず、数か月後に突然医者にいって後遺障害認定の申請をする場合など、わざと誇張してむち打ちであると主張することは不利にはたらきます。
事故態様が症状と一貫して説明できること
むち打ちの症状が発生しやすい事故態様であることが必要です。相当程度の速度でぶつかった衝突事故であれば、むち打ちを発症することが多いといえるでしょう。
逆に、ゆっくりと衝突した場合や、車両の損傷がほとんどない場合には、そのような事故でむち打ちとなることは考え難いことから、後遺障害等級の認定が獲得できないことがあります。
通院実績があること
交通事故時の受傷直後から、定期的に医師の治療を受けていることが、むち打ちの症状を証明する証拠として重要です。
柔道整復師など、痛みを緩和する療法も重要ですが、あくまでも治療のための意思の受診が重要とされていますから、事故直後は連日、その後も1週間に1回程度は定期的に通院をし、間隔をあけないことが重要です。
少なくとも交通事故直後の治療費は保険会社から問題なく支払ってもらえることがほとんどですから、痛みを感じたらあまり通院間隔を空けず、医師の指示に従って定期的に通院することがオススメです。
相当程度の重篤性と常時性があること
12級はかなり重い症状をまとめた等級となりますから、認定を受けるためには重篤な症状が、常時存在していることが必要です。
「たまに痛む場合がある」といった愁訴で12級を獲得するのは困難です。
画像所見による他覚症状があること
レントゲン、CT、MRIの画像所見によって、神経症状を医学的に立証可能であることが重要です。
特にMRIの画像で神経根の付近に圧迫があることが認められて、それと整合性のある神経症状が発生している場合、12級の獲得が見込めると考えられます。
MRIなどの詳しい精密検査を、医師の側からお勧めしてくれることがない場合も多いです。これは、MRIを備えた病院が少ないことにも原因があります。
むち打ちの被害を受けて後遺障害認定を獲得して慰謝料請求をしたい場合には、医師の意見を求めてMRIを依頼し、主治医の病院にMRIの準備がない場合には紹介状を書いてもらってMRIのある病院で撮影してもらいましょう。
神経に関する検査結果
神経に関する医師のテスト結果も重要視されます。むち打ちの後遺障害認定申請でよく使われるテストには、以下のようなものがあります。
☞ スパーリングテスト
☞ 腱反射・病的反射テスト
☞ 筋萎縮検査
☞ 徒手筋力検査(MMT)
☞ 関節可動域測定
☞ 知覚テスト
まとめ
今回は、交通事故の後遺症の中でももっとも相談の多いむち打ちに関する慰謝料の増額方法を解説しました。
他覚症状がなかなかあらわれづらく、痛みはあるのに人にはわかってもらえず、慰謝料にも反映されづらい「むち打ち」ですが、適切な準備をコツコツ積み重ねていけば、慰謝料の増額も期待できます。
まずは初診時、事故直後の対応が非常に重要ですから、冷静に、また、痛みがなかったとしても、検査結果を積み重ねておくことが重要です。
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