弁護士が教える!暴行罪・傷害罪の弁護と、示談交渉のポイント


暴行傷害

傷害罪、暴行罪といった罪は、次のように、どんな人の日常にもひそんでいる犯罪です。

☞ 同僚と愚痴を言い合っていたら、馬鹿にされてついカッとなって殴ってしまった。
☞ タクシー運転手の態度が気に入らず、後ろから椅子をけってしまった。
☞ 酔っていたとき隣の客がうるさくて注意したらつかみ合いになった。

こんな誰にでもちょっとしたあやまちで犯してしまいそうな犯罪でも、前科がついてしまえば人生を棒に振ってしまうことにもなりかねません。

刑事事件はスピーディな対応が重要です!

もし、あなたの家族、友人、親族が、刑事事件で逮捕、勾留などの身柄拘束を受けた場合には、刑事事件の得意な弁護士にすぐ相談をしましょう。刑事弁護を開始するタイミングが早ければ早いほど、身柄拘束が短期で終了し、示談成立、起訴猶予などの、有利な結果を獲得できる確率が上がります。

日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。

傷害罪とは?

傷害罪の法定刑
15年以下の懲役、または、50万円以下の罰金

傷害罪とは、他人の身体に対して傷害を負わせた者を処罰するための犯罪のことをいいます。

たとえば、ナイフで人を刺してケガを負わせる場合にこれにあたります。

法律にいう「傷害」とは、「人の生理的機能を害すること」と理解されていることから、典型的なケースであるケガを負わせる行為だけでなく、病気にさせたり、精神的な損害をあたえたりすることでも傷害罪として処罰されます。

また、一定程度以上の重症である必要があり、「全治7日以上」などと一般的には言われています。

殴る、蹴るといった暴行行為によってケガを負わせる場合が典型的だが、無形の方法、たとえば嫌がらせの電話をしつこくかける、すぐ近くで大きな声で叫ぶといった方法でも傷害罪として処罰されます。

暴行罪とは?

暴行罪の法定刑
2年以下の懲役、または、20万円以下の罰金、拘留、科料

暴行罪は、被害者に対して暴行を加えた者を処罰するための犯罪のことをいいます。

殴る、蹴るなどの接触をともなう行為が典型的ですが、すぐ近くでゴルフクラブをふりまわあす、被害者の足元を狙って石を投げるといった、接触をともなわない場合でも危険な行為は暴行罪で処罰される可能性があります。

暴行罪・傷害罪の刑事弁護の流れ

無罪の主張をする場合

傷害の結果が生じていない、暴行行為、傷害行為を行っていないといった場合には、無罪の主張をすることとなります。

この場合、診断書、被害直後の被害届といった客観的証拠が十分揃っているか、これらに虚偽の記載がないかを検討し、不起訴処分、無罪判決を勝ち取ることを目指します。

また、被害者の側が殴ってきたから殴ったという場合など、正当防衛を主張する場合も無罪になります。

無罪を主張する場合には、目撃者の確保も重要となり、早急な調査が必要です。

示談をして情状弁護をする場合

暴行行為、傷害行為や、傷害の結果に争いがない場合には、刑罰を軽くするため、暴行行為、傷害行為の態様についてその程度を争うことが考えられます。被疑者と被害者との間の証言に一致しない点がある場合には、客観的な証拠に照らして被疑者の供述が信頼できるものであることを、警察、検察、裁判所に対して主張していきます。

これに加えて、被害者との示談交渉をできるだけ早く行い、示談を成立させます。示談が成立すれば、(同種の前科などの不利な事情がない限り)不起訴処分となる可能性が高いといえます。

暴行罪、傷害罪の示談を認めていて、少しでも刑を軽くしたい場合には、最も有効な手段となります。

ただ、その原因が女性関係、金銭関係など、感情的に示談しにくい場合には示談が困難となる場合もあります。

事実関係が記憶にない場合

最後に、犯行当時にお酒に酔っていたといった理由で覚えていないという場合など、弁護士でも事実関係を正確に理解できない場合がありますが、その場合には、警察、検察から把握している事実関係を聞き出したり、それを伝えて被疑者に思い出してもらったりします。

暴行罪・傷害罪の刑罰を左右するポイント

暴行罪、傷害罪の刑罰を左右するポイントは、次の通りです。

1.暴行・傷害行為を行うにいたった原因、理由と、その前後の経緯
2.暴行、傷害行為を受けた被害者の落ち度
3.正当防衛などの事情の有無
4.暴行、傷害行為の手段、方法、凶器を使用していたかどうか
5.暴行、傷害行為を受けた部位、程度
6.ケガの状況、程度
7.被害感情、処罰石
8.示談の有無、示談成立の経緯、内容
9.加害者側の資力

平成26年犯罪白書によれば、暴行罪の不起訴率は65%、傷害罪の不起訴率は54%ですので、不起訴を獲得できる可能性の高い犯罪といえるでしょう。この際、やはり適切な示談を行うのが一番の道です。

暴行罪・傷害罪の示談のポイント

暴行罪・傷害罪の示談金の相場は?

暴行罪・傷害罪の法律相談を受けると、「傷害罪の示談金の相場はいくらくらいでしょうか?」「いくら出せば示談が成立するのでしょうか?」という質問をお受けすることがよくあります。

しかしながら、示談は、被害者との合意、話し合いで決めるものですから、相場、基準があるわけではありません。

私の取扱ったケースでも示談金のケースはさまざまで、ケガの状況が重かった場合でも、被疑者と被害者との間に人間関係があったことなどの理由で特に示談金が不要となって例もあれば、軽いケガであったけれども被害者の感情をなだめるために50万円程度の示談金を用意しなければならなかったケースもあり、個別の事情に応じてさまざまです。

軽度のケガであれば数万から20万円程度というのが率直な印象ですが、被害者のケガの程度、感情や被疑者の社会的地位、資力に応じてケースバイケースです。

暴行罪・傷害罪の場合、罰金刑があり、初犯だと罰金の場合もありますのでこれが罰金額の相場、上限がひとつの参考になるかもしれません。示談ができずに罰金になった場合の罰金額よりも大幅に高額な示談金を支払うということは、一般的に考えれば合理性に乏しいと考えるべきでしょう(ただ、被疑者が、高額な示談金であっても前科がつかなければそれでよいという場合もありえます。)。

民事の損害賠償請求についても清算する

刑事の示談金と共に、民事においては損害賠償請求が考えられます。
これは、ケガをさせられたことによって、財産的損害(たとえば、治療のための治療費、交通費、入院費や、逸失利益、休業損害など)、精神的損害(入通院慰謝料、後遺症慰謝料など)を被害者が負った場合に、これを民事裁判で請求することができるということです。

これに加えて、被疑者が被害者の住所を知っているという場合には、恐怖感から引っ越すための引っ越し費用を出してほしいと請求されることもあります。

このような損害賠償請求について、刑事事件の示談と一緒に交渉し、示談金の支払によって民事の損害賠償請求もしないという約束をして、一度に清算するとよいでしょう。

被害者の請求が法外な場合には安易に示談しない

被害者の請求が法外な示談金であったとしても、一旦示談を成立させてしまえば示談金の支払義務が発生し、一旦成立させた示談にしたがって示談金を支払うことをしないと、有利な事情にならないどころか、心証が悪化するおそれすらあります。

被害者の請求が法外になる理由は、感情的なものであることが多く、交渉の仕方次第では落としどころが見えるかもしれません。また、示談が成立しなかった場合でも、その理由が被害者の法外な請求にあるのであれば、そのように検察、裁判所に主張し、決して反省しておらず示談をしようとしなかったわけではないことを、適切な証拠と共に伝えていく必要があります。

示談をするタイミングに注意

刑事弁護において、示談がいつの時点までに成立しないと無効となるという期限があるわけではありませんが、一般的にいって、早ければ早いほどよいといことになりますから、速やかに示談の準備をする必要があるでしょう。

示談はその時期が早ければ早いほど、以下のような効果があります。

逮捕前の示談

暴行罪、傷害罪を起こしたけれども、逮捕前、特に、警察にまだ発覚する前に示談してしまうことが、一番利益が大きいといえます。全く事件化する前の示談ですから、警察との間の交渉対応などの余計な手間もかかりません。

この場合、示談の中で、警察に対して被害届を出したり、告訴・告発をしないよう約束してもらうことが考えられます。

ただし、偶発的な暴行事件など、被害者の特定ができず被害者の連絡先を知らない場合には、この方法で示談することは難しくなります。

逮捕後、身柄拘束中の示談

暴行罪、傷害罪を起こし、逮捕されてしまった場合、その身柄拘束は、逮捕段階で72時間、勾留段階で最大20日間継続します。

これだけの期間社会に出られないと、仕事を失う危険性もありますので、早急な対応を行いましょう。

この期間中の示談は、被害者の処罰感情、被害感情を下げることを意味すると共に、証拠隠滅(被害者を脅して嘘の証言をさせるなど)の危険性がなくなることを意味しますので、身柄拘束から解放されるために非常に重要な材料となります。

起訴後の示談

なかなか示談が成立せずに起訴されてしまったとしても、あきらめてはいけません。

起訴後であったとしても、示談が成立すれば、執行猶予付きの判決など、有利な解決を行うことができます。

まとめ

暴行罪、傷害罪は、酒の席でのあやまちの場合など、日常的に誰しもが犯してしまう可能性のあるものです。

十分注意して行動するのは当たり前ですが、万が一暴行罪、傷害罪の責任を追及された場合には、この記事を参考に対応してください。

刑事事件はスピーディな対応が重要です!

もし、あなたの家族、友人、親族が、刑事事件で逮捕、勾留などの身柄拘束を受けた場合には、刑事事件の得意な弁護士にすぐ相談をしましょう。刑事弁護を開始するタイミングが早ければ早いほど、身柄拘束が短期で終了し、示談成立、起訴猶予などの、有利な結果を獲得できる確率が上がります。

日本の刑事司法では、起訴された場合の有罪率は99.9%と言われており、捜査、起訴と進んだ場合には、手遅れとなりかねません。前科が付き、その後の人生を崩壊させないために、早期の刑事弁護が重要です。


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